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石川遼

2年ぶりの勝利に涙の石川遼 ウイニングボールの行方

声を震わせると、待ち焦がれた勝利の味が甦ってきた。石川遼が2010年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」以来、2年ぶりの復活勝利を同大会で飾った。通算11アンダーの単独首位で最終ラウンドに出ると、7バーディ、3ボギーの「68」で通算15アンダー。松村道央に1打差に迫られて迎えた18番(パー5)を2オン2パットのバーディで締めくくり、1973年のツアー制施行後、史上最年少となる21歳1か月24日で通算10勝目を飾った。

大好きな太平洋クラブ御殿場コースから、最終日の富士山は望めなかった。午前から空を覆った分厚い雲は、サンデーバックナインに差し掛かったところで雨粒を落とした。これまで9度の優勝シーンはすべて好天。だが、初めてレインウェア姿で手にした1勝の感触は格別だった。「苦しかった。2年はちょっと長かった。『本当に練習をしたらうまくなるんだろうか?』そう思ったときもありました」。一昨年大会を制してから、1年11ヶ月27日ぶり。海外試合を含め実に70戦、勝利から見放された(団体戦を除く)。2007年「マンシングウェアオープンKSBカップ」でアマチュア優勝を果たして以降、勝利がない期間が最も長く続いただけに、自分を疑う時期もあった。

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不振の正体。09年に米国男子ツアーに初挑戦し、海外での戦いを重ね、プレースタイルの“進化”を要求された。難易度の高いホールを攻略するため、ストレートボール一辺倒の攻め方から、様々な弾道を操り、時にはリスクを抑える質の高い守りの一打も求められた。

今年3月、米国男子ツアーで自己最高位となる2位に入った「プエルトリコオープン」を戦ったときのこと。石川はこう口にした。「アマチュアで勝ったときから、『アグレッシブに攻める』とか『積極的』って言われてきた。でも僕はそれに、違和感があったんです。あの頃は『だって自分にはそれしか、ピンを狙うことしかできない』って思っていたから」。技の引き出しを増やし、精度を高める。それが次の課題になった。

だが挑戦には苦悩が付きまとう。事実、未勝利に終わった昨季の平均飛距離290.78ヤード(全体9位)、フェアウェイキープ率43.13%(全体106位)はいずれも、プロ転向後のここ5年で最低だった。だが、先月の「キヤノンオープン」では、こう話した。「勝っていた時期にこだわることは無い。(今とは)全然違う人間。あの頃の自分はすごいなとは思うけれど、それ以上でも、それ以下でもない」。ガムシャラに、ピンだけを見ていた過去との“決別”。2年ぶりの優勝は、それが正しいことを証明する一歩となったはずだ。

ホールアウトしてから、サポートスタッフの笑顔を見て、思わず泣いた。「ウイニングパット入れる前は、あやしかったけれど、入れたときは『泣かなかったな』と大丈夫だった。でも関係者、この2年間アメリカでも一緒にいてくれた人たちの顔を見たら・・・。全然ムリでしたね」。一度は耐えたはずの涙腺は、いとも簡単に決壊した。

勝利を決めた直後、石川は18番グリーンを取り囲んだ大ギャラリーに向かって、ボールを投げ込んだ。だがこれは、キャディバッグから取り出されたスペアのもの。ではウイニングボールは一体どこへ?「今まで誰にも投げたことはないです。家に並べますけど、ずっと彼女にプレゼントしていたので。『最近、ボールくれないんだね』って、寂しい話題が続いていました」。21歳になった少年は、最後にちょっぴり、はにかんだ。(静岡県御殿場市/桂川洋一)

2012年 三井住友VISA太平洋マスターズ



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