2016年の「全米オープン」を目指して予選会にエントリーしたゴルファーは9877人。本戦出場を決めた156人はことし、ペンシルベニア州の名門オークモントCCで世界一の称号を争います。日本勢は米ツアーで戦う松山英樹のほか、地区予選会を突破した日本ツアーの名手たち、実に“濃い”メンバーがそろいました。こちらのページではGDOニュース編集部が注目選手10人を独自の視点で紹介します。
松山英樹
昨年秋に米ツアーのプレーオフ最終戦に出場したことで、4年連続4回目の出場を早々に決めていた日本の若きエース。スターバックスのアイスラテ、グリーンティラテ等をこよなく愛するが、国内にいた頃は、コーヒーはほとんど飲まなかったとか。ラージ→グランデ→ベンティ(コーヒーのサイズね)の先にある「トレンタ」の呪文もいまでは使い慣れたもの。海外選手に負けない体格で、例によって傍若無人の豪傑のような雰囲気を醸し出すが、フロリダにある自宅ではゴルフウエアも自分で洗濯する。「縮むの、イヤだ」と、乾燥機は極力使わないという繊細さを持ち合わせている。メジャーでもすっかり優勝候補のひとり。いつまでも“常連”ではいられない。
池田勇太
5月下旬に行われた日本地区最終予選会をトップ通過して本戦出場を決めた昨季までの日本ツアー選手会長。3タックパンツを脱ぎ捨て、ファッショナブルなウエアに身を包んだ心機一転のシーズンは4月の「パナソニックオープン」で初勝利を飾った。なお、角刈りをやめて周囲を驚かせたのは、意外とサラサラだったその髪質である。独特の流れるようなスイングは、アドレスの時点でビックリするほどクラブのフェースを閉じている。それでいて上質のフェードボールを放つから、凡人には理解不能。全米オープンはペブルビーチGLで行われた2010年以来の出場。賞金王のタイトルに手が届いたら、そろそろ“本気”で海外挑戦してみては?と思う人は決して少なくないはず。
谷口徹
ギャップのある男はモテる。サングラスの奥にある、つぶらな瞳にハートを打ち抜かれている妙齢の女性は日本全国に多い。多いはずだ。たぶん。48歳にして1日36ホールの予選会を突破し、またもメジャーの舞台に立つベテラン。ラウンドを終えて、クラブハウス内に設けられたマッサージルーム(通称:風呂場)で日々繰り広げられる独演会は日本男子ツアーの陰の名物として知られている。ちなみに前回全米オープンに出場した2014年大会で、最終日に一緒に回ったマーカー役のミッチャムという選手(開催コースだったパインハーストのヘッドプロ)が、今年5月の「ウェルズファーゴ選手権」に地元招待選手として出場し、予選ラウンドで岩田寛と回ったことはあまり知られていない。
谷原秀人
かつて米ツアーに参戦した時期もあったが、全米オープンは初出場。日本での最終予選会を通過した。ラウンド中は表情があまり変わらず、いかつい両肩に首をすぼめて小股でコースを歩く。周囲にはドライな印象を与えるが実は「自分の理想のスイングができなかったらゴルフやめる」というほどである。2014年までの3シーズン、日本ツアーの平均パット部門で第1位に輝いた巧者。カップの奥の縁を目がけてガツーンと打つタイプではなく、ラインを大きく膨らませて読み、ジャストタッチで流し込む。だから「ショートする」ことを他選手ほど忌み嫌わない。今年はかつて谷口徹、片山晋呉らのバッグを担いだ石井恵可キャディのサポートを受けている。
宮里優作
谷原同様、日本の予選会を突破して初の全米オープン出場権を獲得。宮里3兄妹では、藍の全米女子オープンを含め、しんがりの挑戦となった。日本ツアーの選手会長となった今季は春先から米国、ニュージーランドなど多くの海外試合に出場しているが、なかなか好成績が出ていない。予選落ちして週末に家にいると、久々に会える子どもたちから、なんだか白い目で見られるのがプロゴルファーの苦々しい私生活だ。葉巻愛好家としては、国内ツアーで彼の右に出るものを探すことは難しい。ゴルフの世界で葉巻がトレードマークとなっているスペインのベテラン、ミゲル・アンヘル・ヒメネスのことを話していると、なぜか「(ヒメネス)さん付け」になる。
ヘンリック・ステンソン
北欧で最もメジャーに近い男。2013年には欧米の両ツアーで年間王者となったが、どうも「ああ、そういえばそうだったかしら」というくらいの出来事に留まっている。どちらかといえば、泥まみれになるのを避けるために公衆の面前でウエアを脱ぎ、池から脱出を試みた純白ボクサーブリーフショットの方が、万人の記憶ではより鮮明である。1Wが苦手、てゆーかイップスと言われており、練習日のドライビングレンジで1Wを振り回していると、他選手たちから熱視線を浴びせられる。それでも世界ランクで一ケタをキープしているのは、3Wのティショットがメチャクチャ飛んで、アイアンショットがメチャクチャ上手いから。ラウンド中に天に召されたシャフトは多数という、キレ芸の持ち主でもある。
アダム・スコット
春先のフロリダシリーズ2連勝により、長尺パター(アンカリング規制)論争に終止符を打った。一方ではかねての噂通り、リオデジャネイロ五輪の出場を早々に辞退し、オーストラリア国内では突如ヒール役に成り下がった超絶イケメン。昨年の「日本オープン」出場時には、カレーライスチェーン店「ココイチ」で食事したことが話題になったが、これは日本に連れてきたトレーナーが、過去に鈴鹿のレーシングのために来日した際に食べたことがきっかけだった。最近では「このスープは“3辛(さんから)”くらいあるかな」と、同店舗の辛さレベルが判断の基準になっているらしい。こちらは想像でもなんでもなく、ユニクロ関係者の話。
ダニー・ウィレット
ジョーダン・スピースの自滅のドサクサに紛れてグリーンジャケットを羽織った印象が強いが、マスターズの前から実力を高く評価する声は少なくなかった。パパは英国の牧師で、ママはスウェーデン人の数学教師。誰の影響かわからないが、ショットの行方を見る際、眉間にシワが寄りすぎていて、ちょっとコワい。彼の姿を生で見るチャンスがあるならば、試合前のドライビングレンジもおススメ。片手でハーフショットを繰り返したり、クロスハンドで打ち込んだりと、レッスン雑誌さながらの練習を試合会場で見ることができる。ちなみにエージェントは、過去にロリー・マキロイらを担当していたチャビー・チャンドラー。敏腕代理人は目をつけるのが早い。
フィル・ミケルソン
2013年に「全英オープン」を制して以降、迎える「全米オープン」は毎年キャリアグランドスラムがかかる試合になった。岩田寛と最終日最終組を回った2月「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」を含め、近年は勝負強さに陰りが見えるが、スーパースターであることには変わりない。恥ずかしがらずに「フィル!」と声援を送ってみれば、サムアップポーズを見せてくれるはず。ビジネスマンとしての話題にも事欠かず、2012年にラスベガスの友人の勧めで行った株取引が、ことし5月にインサイダー取引と指摘され、得た利益と利息(合わせて103万ドル)を返納してスッキリしてメジャーの舞台へ。全米オープンの優勝賞金のほうが金額は高いしね。
ブライソン・デシャンボー
37.5インチ。米ツアーの話題のルーキーを知るためにはこの数字を覚えることから始まる。3Iからウェッジまでアイアンのシャフト長と、ライ角(69度)が同じという「芸術家志望」の革命児。ボールは複数社のモデルを塩水に浮かべて比較検討してブリヂストンスポーツと契約。練習中はそのロボットのようなスイングをチェックするため、足元にパソコンを置いて打ち込む徹底ぶりだ。ウエアを提供するプーマは彼のトレードマークであるハンチング帽を、リッキー・ファウラーのフラットビルキャップと並べてツアー会場で販売している。昨年の「全米アマ」で優勝して得た今大会の出場権は、プロ転向したことで喪失したが、試合前週の予選会を通過して本戦出場を決めた“持ってる男”である。