2022/04/12GDOEYE

中島啓太の歩みとオーガスタとの出会い「悔しい思いが収穫」

◇メジャー第1戦◇マスターズ 最終日(10日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7510yd(パー72) ピンと背筋を伸ばし、あごを引いて歩く様子は昔から変わらないそうだ。だから涙でどれだけ目を腫らしても、中島啓太からは精悍さが漂う。凛とした立ち姿は、夢のオーガスタでも同じだった。 その名前が全国区になったのは7年前、兵庫県で行われた2015年「日本アマチュア選手権」。快進撃を遂げたのは、あどけなさが残る中学3年生だった。「正直言って、大会の規模の大きさも知らなかったんです。(予選になる)関東アマで落ちたのに、(日本アマの)100回記念の“敗者復活戦”にエントリーしたら通ることができ...
2022/04/16GDOEYE

“直ドラ”だけじゃない 渋野日向子の1Wショットの安定ぶりがすさまじい

◇米国女子◇ロッテ選手権 3日目(15日)◇ホアカレイCC (ハワイ州)◇6603yd(パー72) 青い空に描かれた放物線が最高到達点に届くかという時、さっと身をかがめてティペグを拾う。その光景だけで、ボールがおおよそフェアウェイで弾むことを渋野日向子のファンは知っている。強風を浴びても、ハワイで放つ1Wショットは抜群の安定感。3日目までのフェアウェイキープ率は83.33%(35/42)を誇る。 初日にトライした“直ドラ”は2日目以降、1ラウンドで2回ずつ披露した。3日目は出だし1番と後半11番(いずれもパー5)のフェアウェイから。11番はバーディにつながり、「日に日に直ドラの精度が良くなっ...
2022/04/19GDOEYE

“コロナ禍”のプレーヤーズ委員長・青木瀬令奈「先輩を見ながら少しずつ学んで」

「最初は何をやれば良いか分からなかった」-。2020年、新型コロナの影響で大会の中止が相次ぎ、2021年と1シーズンに統合される異例の1期目を乗り越え、今季で就任2シーズン目を迎えた青木瀬令奈。29歳はどんな思いで向き合っているのか。これまでとこれからを聞いた。 ◆あっという間の一年 女子ツアーには選手会がなく、その代わりの役割を担うのが「プレーヤーズ委員会」だ。青木は委員長として10人前後のメンバーで構成された委員会をまとめる。 ツアーの“舵取り役”ともいえる委員長就任のきっかけは、前任の有村智恵から声をかけられたことだった。「2019年の夏ごろにお声がけいただきました。プレーヤーズ委員長...
2022/06/07GDOEYE

“スポットスポンサー”12社 馬場咲希の全米挑戦を後押ししたアマ規則改訂

◇海外女子メジャー◇全米女子オープン presented by プロメディカ 最終日(5日)◇パインニードルズ・ロッジ&GC(ノースカロライナ州)◇6638yd(パー71) 「もう借金をして行かないといけないのかなっていうくらいでした」―。全米女子オープンで日本人アマチュアとして8年ぶりに予選を通過した馬場咲希(日本ウェルネス高2年)の父・哲也さんは振り返る。口調は冗談めかしていても、本当にそうなっていた可能性があったかもしれない。 17歳の誕生日だった4月25日に日本の最終予選会を突破してつかんだ切符。将来の米ツアー参戦を目指す馬場にとってこれ以上ない経験になることは分かっていても、出場には...
2022/04/27GDOEYE

絶対距離感を養う 渋野日向子のパッティング練習法

◇米国女子◇パロスバーデス選手権 presented by バンク・オブ・アメリカ 事前情報(26日)◇パロスバーデスGC (カリフォルニア州)◇6450yd(パー71) 渋野日向子は米ツアーの会場でも練習グリーンで長い時間を過ごす。今年に入って始めたのが、パッティングでの絶対的な距離感を養う練習。5本のティペグを使用して行う、ノルマを達成するまで帰れないドリルだ。 カップまでの距離は5m。カップから手前側(渋野サイド)に約50cm間隔で4本のティペグをグリーン上に突き刺す。残り1本があるのは渋野から見てカップの向こう側だ。 カップインを狙うのではなく、ティペグ5本とカップでできる5つの間隔...
2022/04/26GDOEYE

男子並みパワー、クラブ変更、ウェアラブル端末…畑岡奈紗の進化の日々

◇米国女子◇DIOインプラントLAオープン 最終日(24日)◇ウィルシャーCC (カリフォルニア州)◇6447yd(パー71) 世界アマチュアランキング1位、今年の「マスターズ」に出場した中島啓太(日体大)は日々のトレーニングで、120kgのウェート設定でデッドリフト、スクワットを行うという。指導する栖原弘和トレーナーによれば、重量はナショナルチームでトップ。そしてこうも続ける。「畑岡奈紗は約110kgです」――。 2017年の米ツアー参戦から6年目。畑岡はゴルフコースの外でもストイックに体を鍛えてきた。腰を落ち着けてトレーニングに励むことへの難しさは、米国での転戦生活と日本国内での日常とは比...
2022/04/07GDOEYE

“特等席”には止めない 前年王者・松山英樹は今年も逆境からティオフ

◇メジャー第1戦◇マスターズ 事前情報(6日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7510yd(パー72) オーガスタナショナルGCのクラブハウス前には、歴代優勝者だけが期間中に駐車できる“チャンピオンズパーキング”がある。PGAツアーの他大会と同じように、勝者をたたえたスペースが確保されているが、松山英樹は今年この“特等席”を使用していない。 その様子は現地のテレビ放送で「彼はやはり謙虚だ」と驚きを持って伝えられていた。ただ松山にとって、彼のチームにとってそれはごく自然なことかもしれない。クラブハウス前からドライビングレンジまでは少々距離があり、カートでの送迎がある。ドライビングレン...
2022/02/15GDOEYE

彼らは邪道か 「フェニックスオープン」に来場する数十万人の生態系

◇米国男子◇WMフェニックスオープン 最終日(13日)◇TPCスコッツデール(アリゾナ州)◇7261yd(パー71) 東の空が白むころ、彼らは我先にと息を切らして走る、走る。目指す先は砂漠のゴルフ場にそびえるスタジアム。16番(パー3)に設置された巨大観覧席のシートを確保せんと、ゲートから1㎞にも及ぼうかという通路を駆け抜ける。会場がオープンする午前7時の光景だ。 2万人以上を飲み込むスタンドは最も高いところで3階建て。事前購入が必要なスカイボックスとは違い、特別なチケットは求められないエリアは早い者勝ちで席が埋まる。日中の混雑時は階段下で空席を待つ列ができ、並ぶ人々は他のホールでのプレーはろ...
2022/02/05GDOEYE

「ほぼ引退してました」 今田竜二を“復帰”に導いたZOZOとサウジの縁

◇米国男子◇AT&Tペブルビーチプロアマ 2日目(4日)◇ペブルビーチGL(6972yd、パー72)、スパイグラスヒルGC(7041yd、パー72)、モントレーペニンシュラCC(6957yd、パー71) 日本で行われた昨秋の「ZOZOチャンピオンシップ」で、マイクを握るつもりだった今田竜二の手にはゴルフクラブがあった。コロナ禍の国際間移動に制限が伴い、直前になって欠場者が続出したため、テレビの解説業で来日する予定が選手としてプレーすることに。45歳にとって2015年「バーバゾル選手権」以来、実に6年ぶりのPGAツアー出場だった。 結果は予選落ちのない4日間で77位。1人の棄権者をのぞく最下位だ...
2022/02/10GDOEYE

似てる?似てない? スリクソン契約のケプカと松山英樹のクラブ選び

◇米国男子◇WMフェニックスオープン 事前情報(9日)◇TPCスコッツデール(アリゾナ州)◇7261yd(パー71) 住友ゴム工業のダンロップは昨年11月、ビッグネームを契約選手に迎えた。ブルックス・ケプカはパワー、テクニック、メンタルどれをとっても超一流のアスリート。同じく同社と用具使用契約を結ぶ松山英樹を中心に、米国でプロをサポートするツアーレップの宮野敏一氏の言葉からは2人のメジャーチャンピオンの相違点が浮かび上がってきた。 クラブ選びに関して、そもそも2人は持ち球が異なる。1Wショットでドローボールを基本にする松山に対し、ケプカは鋭いフェードが武器。「松山選手は捕まるクラブを好みますが...
2022/09/26GDOEYE

ゴルフ練習後に週5レッスンを3年間 笹生優花が語学に堪能な理由

◇米国女子◇ウォルマート NW アーカンソー選手権 最終日(25日)◇ピナクルCC(アーカンソー州)◇6438yd(パー71) 無駄のない言葉を選んで、インタビューには簡潔に答える。笹生優花は寡黙な選手なのかと思っていたら、カメラが撮影をやめた瞬間「あー、何が言いたいのか忘れちゃった!」と無邪気に笑った。コミュニケーションで苦労した経験があるからこそ、言葉の選択には慎重になる。 昨年「全米女子オープン」で優勝して注目を集め、今週は優勝争いに絡んで現地メディアやLPGAからも取材された。英語と日本語でインタビューに応じる姿に、LPGAの広報担当者も感心しきりだった。 日本人の父とフィリピン人の母...
2020/08/03GDOEYE

ささきしょうこが“日本一の草大会”にプロ初参戦 アマ時代は伊澤とプレーも

賞金王から小学生のアマチュアまで、男・女・プロ・アマを問わず同じティからプレーする1日競技「JOYXオープン」は、“日本一の草大会”の異名を持つ。2日(日)にJOYXゴルフ倶楽部上月コース(兵庫県)で行われた2020年大会には、中学3年以来、9年ぶりという女子プロのささきしょうこも参戦した。 プロとして出場すると「距離もあるし、大たたきできない」と、プライドと責任感が両肩に乗ってくる。ミスを恐れなかった中学生時代の方が飛ばしていたのも、改めて気づいた事実。コース総距離は7000ydを超え、「直ドラでも届かないホールがいくつかあって、いつもより飛ばそうとして振っちゃうから、アプローチやパッティン...
2020/09/25GDOEYE

関西インスタ女子とジャックバニー ノリと情熱で進む道

日曜夜に、京都駅前で2人の関西女子と待ち合わせた。「トッコは、本当の私とはちょっと違う人なんです」と微笑むSさんは、トッコという名前でインスタグラムのフォロワー数7600人(2020年9月)を抱える女子ゴルファー。「アラフィフなので、普段は短いスカートをはいたりできません」というものの、過去にはアメブロ(Amebaブログ)のファッションランキングで1、2位を争ったこともあり、そのセンスには自信がある。 「承認欲求のかたまり」を自認するだけあって、「ちょっとフォロワーが増え始めたら、調子に乗った(笑)」と、3年半前にゴルフとインスタを始めて以降どっぷりハマり「常にゴルフウェアにときめいている」の...
2020/06/02GDOEYE

若手のびのび キャディはヒィヒィ アフターコロナのゴルフツアー

世界に先駆けて5月14日に再開した韓国女子ツアーは、一週間のオープンウィークを挟んで、先週末に2戦目を終えた。再開後のツアーはどんな雰囲気で、どんな課題があるのだろうか?この2試合、キム・ヘリムに帯同した“ピヨさん”こと、橋本道七三(みちひさ)キャディに事情を聞いた。 厳重な警戒態勢 当然、防疫体制は厳重だ。コースに入れるのは、選手、キャディ、協会関係者、メディア、それにスコアラーとして各組に帯同するボランティアだけ。選手の家族やトレーナー、コーチ、メーカースタッフ、もちろんギャラリーも入場できない。車のナンバーは事前登録が必要で、コース入場時には毎日、問診票の提出と体温チェックが義務付けら...
2021/04/15GDOEYE

日本人の限界を突破 松山英樹メジャー初制覇の価値

日本人男子初のメジャー制覇を「マスターズ」で成し遂げた松山英樹が、日々どれだけの努力を重ねてきたか。一記者である自分が目撃した姿は、そのほんの一端にしか過ぎないことを知っている。それでも、日が沈むまで練習場で打ち込む姿や、何本ものクラブを試行錯誤する姿、どんな一打も疎かにしない試合での真剣さがすぐ脳裏に浮かぶ。そんな作業を、初めて訪れたオーガスタから10年以上、いや、さかのぼれば子どものころからずっと続けて、ついにここまでたどり着いた。 コロンブスの卵ではないけれど、「マスターズ」制覇なんて夢のような話だと思っていた。コースの難しさだけではなく、グリーンジャケットを着たオーガスタナショナルのメ...
2021/04/12GDOEYE

胸にしまい込んだ苦闘 松山英樹の1344日

◇メジャー第3戦◇マスターズ 最終日(11日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7475yd(パー72) 18番グリーンでのスタンディングオベーション、夕闇の表彰式の空気は10年前に知っていた。初めて「マスターズ」に出場した2011年、松山英樹は出場アマチュアで最も優れたスコアで回り、アジア勢として初めてローアマチュアのタイトルを獲得。今よりひと回りも、ふた回りも細かった体つきで、隣でグリーンジャケットを着たシャール・シュワルツェル(南アフリカ)を横目で眺めていた。 あの日、始まった松山とオーガスタのストーリー。「ここでまた、4日間プレーしたい」。その一心で駆け抜けてきたキャリアに、...
2021/04/08GDOEYE

観戦チケットは検査キット付き コロナ禍「マスターズ」の“水際対策”

◇メジャー第3戦◇マスターズ 事前(7日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7475yd(パー72) 「マスターズ」のチケットを手配できるかもしれない――そんな話を聞かされたのは開幕まで1カ月もない頃だった。コロナ禍で11月に時期を移した前回大会に続き、現地での取材を許されているメディアはごくわずか。米女子ツアーの仕事で渡米することは決まっていたが、帰国して“自主隔離”のマスターズウィークも覚悟していた。 うれしいニュースの一方、心配事もあった。前年末には取材申請が締め切られ、その時点で部屋が残っているホテルは壊滅状態というのがマスターズ取材の常。普段なら1泊50ドルほどのモーテルを...
2021/12/27GDOEYE

古江彩佳、堀琴音らを輩出 滝川第二高ゴルフ部の「人間力」

2020-2021年シーズンの女子ツアーは古江彩佳が6勝を挙げて賞金ランキング2位。長期低迷に苦しんだ堀琴音が21年7月「ニッポンハムレディスクラシック」で初優勝を遂げるなどし、兵庫の滝川第二高ゴルフ部出身の活躍が目立った。 1989年に創部され、2001年から指導する角谷真吾監督(55歳)は「自主性も大事ですが、グリーン10ydぐらい手前のところにわざと落として、パーオンできなかったところからパーを取るとか、練習に“お題”を出したりします。それと今は大会を視野に入れてマッチプレーをしています。『こいつに負けたくない』とメンタル面を鍛えるためです」と説明する。 現在の部員は3学年で40人。古江...
2021/12/22GDOEYE

「日本一ゆるい」 渋野日向子を生んだ作陽高ゴルフ部の作法

日本海沿岸と瀬戸内海側のほぼ中間地点。岡山県の湯郷温泉の近くに海外メジャー1勝、国内ツアー6勝の渋野日向子の強さの原点がある。 作陽高ゴルフ部は藤本麻子、東浩子らベテラン勢、近年では渋野、石川怜奈といった女子ゴルファーを輩出。今年11月のプロテストでも合格した21人中、4人(尾関彩美悠、丹萌乃、須江唯加、成澤祐美)が同部の出身だ。男子でも幡地隆寛、久常涼らを育成した。 ゴルフ部が練習拠点とする緑ヶ丘ゴルフ練習場を経営する田淵潔監督(61歳)は指導方針について「自由です。たぶん日本で一番ゆるいと思います。日本一ゆるい」と2004年から部員たちの成長を見守ってきた。 「練習は好きにさせます。練習...
2021/05/15GDOEYE

「絶海にいる孤独な漁師」 元・松山担当ツアーレップの回想

カリフォルニア州アーバインの自宅近くにあるスポーツバーで、藤本哲朗さんは思わず椅子からずり落ちた。壁面のテレビでは、米国男子ツアー「メモリアルトーナメント」最終日を映している。その年(2014年)から米ツアーにフル参戦した松山英樹が、初優勝を目指して首位のケビン・ナを1打差で追って迎えた最終18番。ティショット後に振り下ろした1Wは、シャフトが集音マイクを支える鉄の棒に当たって無残にも折れていた。 「スペアのドライバーがないのは知っていました。いろいろテストはしていたのですが、これという物がなくて、全て自分が持ち帰っていましたから…」 当時、スリクソンのツアーレップとして松山に帯同していた藤本...