【WORLD】ライダーカップメンバー選考にみる1打の重み
Golf World(2012年9月17日号) GW voices
今年2月の「ノーザントラストオープン」2日目、フィル・ミケルソンはリビエラCCの8番ホール(460ヤード)でカップまで110ヤードの地点からイーグルを奪った。この一打により、彼はライダーカップのアメリカ代表メンバーに入り、ハンター・メイハンが落選することになった。その5日前にはイアン・ポールター(イングランド)が「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」に出場し、最終日のパー4の10番で「7」と大叩き。ティショットは崖を超えたが、マーティン・カイマー(ドイツ)の欧州代表入りを助けることになった。
トーナメントは気まぐれなものだが、僅か一打、しかも随分前の大会のことであろうと、それが「ライダーカップ」の最終メンバー選考に大きな影響を与えているのも事実と言わざるをえない。フェアに選考するとしても、何年も前からヘンリー・コットンがこの原理原則に大きな信頼を寄せていることは確かで、最近ではテレビコマーシャルも「無駄なショットはない」と謳っている。
ミケルソンの例を振り返ると、彼はリビエラでビル・ハースとのプレーオフに敗れ、キーガン・ブラッドリーと共に2位タイで終了。もしその8番でイーグルを獲れず、バーディパットも外していたら(大会の残り3日間、8番ではパー2つと1ボギー)、最終的にミケルソンを含む5人が3位タイとなり、賞金も58万800ドルではなく、29万7660ドルとなっていただろう。ミケルソンはライダーカップのアメリカ代表選考を8位でフィニッシュ。メイハンよりも150.88ポイントを獲得し、独自のランキングで自動選出される最後の枠を勝ち取った。賞金1000ドルで1ポイントとなる計算の為、仮に順位が違っていたら差額28万3140ドル(283.12ポイント)で、ミケルソンはメイハンよりも僅かしか上回らない計算になっていた。
同様のことはカイマーのケースにも当てはまる。彼はポールターを世界ランキングで1ポイント差で上回り、ヨーロッパ代表に自動選出される最後の枠に入った。しかし、仮にポールターがペブルビーチの10番でダブルボギー(つまり6打)としていたら、ポールターは50位タイではなく40位タイでフィニッシュしていたことになり、自動的に代表入りを果たしていたのだ(ポールターは最終的にはキャプテンのホセ・マリア・オラサバルの推薦で代表入りを果たした)。
たった一打、そして1ホールの結果が違っていたら、チームの顔ぶれは違っていたのだろうか。落選した多くのアメリカ人選手は、代表入りに近い存在だった。仮にスティーブ・ストリッカーが「全米プロゴルフ選手権」で一打良いスコアを記録していれば、ミケルソンを上回り代表に選出されていた。「全米オープン」のラスト3ホール中2ホールでボギーを叩いたことは、ジム・フューリックから2度目のナショナルタイトル、そしてライダーカップ代表入りのチャンスをも奪い去った(仮に同大会でウェブ・シンプソンにプレーオフで敗れたとしても)。
仮に「全米プロゴルフ選手権」でボー・バン・ペルトが4打良ければ代表入り。マスターズで3打良ければメイハンも代表に選出されていた。12位タイでも7位タイでも、さほど大きな変化は無いように思えるが、実際にこういうことが起こりうる。
ポールターは「全米プロゴルフ選手権」を終えた時点で、代表入りに十分な成績を残したと手応えを感じていたという。「電話がかかってくるのを待つ身分は嫌だからね。過去にも同じように推薦という立場で選出されたから。ただ、そうは言っても連絡がくると嬉しいさ。自分が選ばれて当然だったから」。
しかしながら全米プロゴルフ選手権ではデビッド・リンがラスト3ホール中2ホールでバーディを記録し、ポールターを抜き単独2位でフィニッシュ。3位タイで終えたポールターは、カイマーをポイントで抜くには不十分だった。
仮にカイマーがメンバーから外れていたら、誰が代わりに選出されただろうか?パドレイグ・ハリントン?トーマス・ビヨーン?
そしてもしメイハンがアメリカ代表に選ばれていたら、ミケルソンがキャプテン推薦で代表に加わったことは間違いない。ならば、デービス・ラブIIIは誰を外すのか?フューリックか?ブラント・スネデカーか?
このようなメンバー変更が結果に影響を与えるかはわからない。だが2006年のケースを考えてみてもらいたい。ブレット・ウェトリッチは自動選出最後の枠を勝ち取りアメリカ代表に選ばれ、今年のヨーロッパ代表キャプテンであるオラサバルは推薦枠で出場。結果はウェトリッチが2敗したのに対し、オラサバルは無敗でヨーロッパ勢の勝利に貢献した。
最後に代表に加わった人間が3日間の戦いにどういう影響を与えたのか、考えてみるのも面白いのではないだろうか。
米国ゴルフダイジェスト社提携
Used by permission from the Golf DigestR and Golf WorldR. Copyrightc 2011 Golf Digest Publications. All rights reserved