「人生最高の6番アイアンのショットを」アクシェイ・バティアへの檄と姪の死
◇米国男子◇アーノルド・パーマー招待 byマスターカード 最終日(8日)◇ベイヒルクラブ&ロッジ(フロリダ州)◇7466yd(パー72)
1mに満たないパーパットを外した9番で、トップとの差は5打に開いた。「集中力が足りなかった。それから数ホールは怒りを含んでプレーした」。アクシェイ・バティアは自ら闘志に火をつけ、長尺パターで2.5mを沈めた10番から4連続バーディを奪った。
まさに怒涛の猛チャージで首位のダニエル・バーガーに詰め寄り、後半15番でアプローチミスによるボギーを喫しても勢いは衰えない。続く16番(パー5)、191ydを残した第2打を前に、キャディのジョー・グライナーから檄(げき)が飛んだ。「人生最高の6番アイアンのショットを打とう」。ピンそばに突き刺す一打に現地の実況席は「あと少しでアルバトロス!」の声。1mのイーグルパットを沈め、主導権を譲らなかった。
ライバルの17番(パー3)のボギーでついに首位で並び、最終18番はしっかりパーセーブ。バーガーに5mのパーパットを沈められ、プレーオフに突入してもバティアは強かった。1Wショットで再びフェアウェイを外さず、パーで決着をつけて雄たけびを上げた。
インド出身の両親からカリフォルニア州で生を授かり、少年時代にノースカロライナ州に引っ越した。故アーノルド・パーマーがウェイクフォレスト大に在学していた頃にプレーしていたという近所の市営ゴルフ場が記憶にある。「パスカルGCというところで、グリーンは雑草だらけだった。ミスター・パーマーと関係が持てたこと、彼の試合で勝てたことが本当に光栄だ」と“キング”の名を冠した昇格大会(シグニチャーイベント)でのタイトルを喜ぶ。
2024年「バレロテキサスオープン」以来となるツアー通算3勝目。これまでのタイトルはすべてプレーオフで勝ち取った。「なぜだか分からないけれどラッキーだ。ただ、プレーオフに入ると緊張しなくなる」と24歳は強心臓。
昨年12月、姪のミアさんが亡くなった。生まれつき体が弱く、「1歳までしか生きられないと言われていた」にもかかわらず闘病生活を5歳まで続けた。「彼女が僕たちの結婚式に来てくれたことが何よりもうれしかった。本当に大変な旅を経て」。式の当日、ミアさんは息を引き取ったという。緊迫した18番ホールで、バティアは湖にかかる虹を見た。「彼女のことを思い出したんだ。ことしは彼女が見守ってくれている。この勝利をささげたい」。ビッグタイトルには1勝以上の重みがあった。(フロリダ州オーランド/桂川洋一)