「世界の終わりじゃない」 ジョン・ラームは首位タイからグリーンマイルで崩壊も気丈
◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 最終日(18日)◇クエイルホロークラブ(ノースカロライナ州)◇7626yd(パー71)
ジョン・ラーム(スペイン)の視界には3つ目のメジャータイトルがあった。2打目をグリーン左のセミラフに運んだ後半10番(パー5)から2連続バーディ。通算9アンダーにスコアを伸ばした時点で、スコッティ・シェフラーと首位で並んだ。
キャリアで優勝争いを何度も繰り返してきたからこそ、戦況は耳で把握した。「リーダーボードは自分で見たくなくても、ギャラリーが(状況を)歓声で教えてくれる。僕が12番でパットを打った時、スコッティが10番でバーディを決めたと分かった」。再びビハインドを負ったことを把握し、さらなるチャージが必要だと悟った。
風がわずかに穏やかになった終盤、キーポイントになったのは18ホールで難易度16番目と18番目のイージーホール。「タイトルが遠ざかっていく感覚があったとすれば、バーディを獲れなかった14番と15番(パー5)だ。明らかなミスがひどいフィニッシュにつながった」。それぞれ2m、3.5mのチャンスを決め切れないまま、終盤の難所に向かった。
クエイルホロークラブ名物の上がり3ホール、通称グリーンマイルで緊張の糸が切れた。左サイドのラフからの2打目をグリーン右バンカーに入れた16番でボギー。ティショットを奥の池に入れた17番(パー3)でダブルボギー。1Wショットを左のクリークに落とした18番もダボをたたいた。最終的に「73」で通算4アンダー。2021年「全米オープン」、23年「マスターズ」以来となるメジャータイトルに限りなく近づいた戦いは結局8位だった。
「今すぐに最後の3ホールを受け止めるのは難しい」。LIVゴルフ移籍初年度の昨季は個人戦で2勝。今季は7試合すべてでトップ10入りしながら未勝利でシーズン中盤戦に入った。屈辱的な敗戦を受け止める時、ラームは決まって元NBAのスーパースター、チャールズ・バークレーの言葉を思い出す。
「確かにきょうの僕の終わりはひどかった。でも乗り越えなくちゃいけない。これは世界の終わりじゃないから。僕の仕事は、自分の出来の悪い日が、本当に最悪なことにつながってしまう医師や救急隊員といった職ではないから、きっと乗り越えられる」
今は何より自宅に戻って愛する家族に会いたい。「子どもたちが眠るかどうかという時には家に帰れると思う。僕がきょう何をしたか、勝とうが負けようが家族は気にしない。それは良いことなんだ」と気丈に語った。(ノースカロライナ州シャーロット/桂川洋一)