2025年 メイバンク選手権

8打差逆転Vの舞台裏 「どの試合も優勝」の山下美夢有は自己ベストタイ65で駆け抜けた

2025年 メイバンク選手権 4日目 山下美夢有
「どの試合も優勝を」のモットーを貫いた山下美夢有(Thananuwat Srirasant/Getty Images)

◇米国女子◇メイバンク選手権 最終日(2日)◇クアラルンプールG&CC(マレーシア)◇6536yd(パー72)

山下美夢有は最終日に8打差を追いつき、プレーオフに持ち込んで米ツアー2勝目をもぎ取った。LPGAによると過去最大の逆転劇は10打差、今回は1980年以降で2番目の快挙だという。周囲の度肝を抜くミラクルはどのように成し遂げられたのか―。

2025年 メイバンク選手権 4日目 山下美夢有
前日までの“ズレ”を最終日になって修正した(Thananuwat Srirasant/Getty Images)

プレーオフ1ホール目。6mのバーディパットを残した山下は「向こうも距離はあるけど、いいラインについている。決めたい、決めないと」と腹をくくり、アドレスに入った。自分よりわずかに短いバーディパットを残したチェ・ヘジン(韓国)を前に、手前でわずかにスライスするラインを読み切ってカップに沈めた。雷雲接近による2度の中断を経て、リーダーボードを駆け上がった一日をガッツポーズで締めくくった。

首位と8打差の通算11アンダーで迎えた最終日、スタート前は「もうとりあえず伸ばせるだけ。バーディを取れるだけ取って」と自分のゴルフに集中する、その一心だった。持ち味のショット力も、前日まではピン筋に飛ぶほどの精度とはいかず、ラウンド後は打撃練習場で修正に時間を割いた。コーチである父・勝臣さんとの携帯電話を通した“リアルタイムチェック”は大会期間中に欠かさず「リズムだったり、テークバックの位置だったり。その辺のちょっとしたズレが少し出ていたので見直した」。その成果が実を結ぶことになる。

2025年 メイバンク選手権 4日目 山下美夢有
いつも通り、やることをやった

最終組の4組前から出ると1、2番の連続バーディで勢いに乗り、5番(パー5)もとって前半「33」と14アンダーで折り返す。後半も10番(パー5)で3m、11番(パー3)もピンそばにつける連続バーディで加速し、13番のバーディで17アンダー。後続を回る首位スタートのチェ・ヘジン(韓国)、世界ランキング1位のジーノ・ティティクル(タイ)、ツアー6勝のハンナ・グリーン(オーストラリア)らとの優勝戦線に完全に飛び込んだ。

リーダーボードを見ずにいた山下がグリーンと並ぶトップにいると把握したのは16番、7個目のバーディで18アンダーにした時だった。「でも、18アンダーでは(優勝は)絶対に無理だなっていう風にも思っていて。19アンダーまで持っていきたいという気持ちはあった」。優勝を意識し始めた時、17番で2打目を5mのチャンスにつけた直後、雷雲接近によるホーンが鳴って競技が中断された。

2025年 メイバンク選手権 4日目 山下美夢有
「どの試合も優勝を」がモットー(Jason Butler/Getty Images)

1時間1分間の待機中はクラブハウスに戻り、音楽を聴いて気持ちを整えた。再開後、17番のバーディパットは外した。最終18番は誰もがバーディをとる可能性が高いパー5。自身も必ずバーディを、と念じた正念場で3mのチャンスにつけたが、外して18アンダーのままフィニッシュした。それでも「65」はメジャー制覇を成し遂げた8月「AIG女子オープン(全英女子)」第2ラウンドと並ぶ米ツアー自己ベスト。当時と同じノーボギーの胸を張れるスコアだった。

クラブハウスリーダーとしてホールアウトした。「テレビを見ながら、どうなるか分からない展開にドキドキして。プレーオフってなってからうまく集中へ切り替えられた」。18番を使ったプレーオフでもティショット後、2度目のホーンが鳴って58分間の中断があり、再びクラブハウスに引き揚げて待機することになったが、気持ちを切らすことはなかった。

2025年 メイバンク選手権 4日目 山下美夢有
小さな山下がまた大きな勲章をつかんだ(Thananuwat Srirasant/Getty Images)

シーズン前は参戦1年目の米ツアーで2勝することなど想像もしていなかったという。しかし、今は「どの試合でも優勝を」という国内ツアー時代からの“基本姿勢”で臨めている。年間ポイントレースは1400.089ptあった1位ティティクルとの差を1027.089ptに縮めて3位、優勝すれば150ptが入るルーキー・オブ・ザ・イヤー争いはトップで、2位の竹田麗央との差を206ptに広げた。

次戦は米ツアーメンバーとして初めて臨む「TOTOジャパンクラシック」(6日開幕/滋賀・瀬田GC北コース)。1カ月ぶりに帰国してまずしたいことは…。「久しぶりに日本に帰れるのがうれしい。ホームシックまではいかないけど、4匹飼っている犬に会いたい」。山下はコース上では見せないような、やわらかい表情で頬を緩めた。(マレーシア・クアラルンプール/石井操)

<米女子ツアーの主な大逆転優勝>
・10打差/1964年「トールシティオープン」のミッキー・ライト、2001年「ザ・オフィスデポ hosted byエイミー・オルコット」のアニカ・ソレンスタム、2008年「マスターカードクラシック」のルイーズ・フライバーグ
・8打差/2024年「マイヤーLPGAクラシック」のリリア・ヴ、2025年「メイバンク選手権」の山下美夢有

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