2013年 全米オープン

【WORLD】メリオンGCの幽霊の隠れ家

2013/06/13 12:15

Golf World(2013年6月13日号)texted by Jeff Silverman

メリオンに眠る数々の歴史物を管理するジョン・ケイパーズIII(GD)

一見すると、これはゴルフの話だ。それはもちろんメリオンの話をするからだ。だがこれは、同時に幽霊の話でもある。なにしろ、メリオンには幽霊がウロウロしているのだから。フェアウェイ上に。スパイクマークの中に。2階にあるボビー・ジョーンズ・ルームの中に。ベン・ホーガンの額の脇に。

そして、あるクラブハウスの特別な隠れ場は、幽霊の世話のためだけに使われている。

それは、トロフィールームの反対側、1913年9月、今年の全米オープンの舞台が開業してから約1年が経とうという時の話。7人のゴルフの“始祖(グランドファーザー)”たちからクラブに贈られた、グランドファーザー・クロックの向かいだ。そこには階段があり、図書室まで続いているのだが、さらに小さな階段を上がると、おなじみの籐網のかごで飾られ、丹念に磨き上げられた分厚い松の扉がある。そして、その向かいのアーカイブ・ルームで魂は元気に育っている。

メリオンGCが、ゴルフ界に現存する聖地の1つだとすれば、ここは舎利殿に相当するだろう。信徒の幅広さを考えたら、アラジンの洞窟という方が、より相応しいかもしれないが。小物や宝石、書類や写真。これらすべては、献身的な護人であり、生けるメリオンの伝道者ジョン・ケイパーズIIIが、プライベートクラブが所有する最高の総合施設と主張する場所を彩っている。全ての工芸品は細かく分類され、書類は1つ1つ丁寧にファイルされている。それというのも、ケイパーズ曰く、過去を保存することは、知られている進行形の現在を、未来へつなげる橋渡しの意味を持っているのだ。

1981年にデービッド・グラハムがトロフィーを持ってアードモアから立ち去った後、永久にお蔵入りしてしまったように思われた、全米オープンへのつながりとアイデアについて考えてみよう。

その前に、はっきりさせておこう。私はこの物語の中では、中立なツアーガイドではない。過去2年にわたり、このアーカイブは私のお気に入りの1つとなった。いや、取り憑かれてしまった、と言った方がいいかもしれない。ここまでハマったのは、私がゴルフの歴史、ゴルフが生まれたコミュニティを愛しているからであり、一般的にどうやって保管してあるか、特にこのアーカイブの場合、歴史をコミュニティに特化している様に惚れたからだ。もちろん、ケイパーズの献身にも感化された。そして、それなしには、このクラブの新しい歴史を調べ、執筆するという行為が、私にとって古典的なホラーを書くことに成り下がってしまう。その代わり、私は1世紀以上に及ぶ真実、数字、リポート、そしてもちろん再び取り上げられ、日の目を見ることを待ち続けていた幽霊を発見した。

温度調整された壁には、メリオンをメリオンたらしめる物が保管され、それらは触ったり、読んだり、見たり、そして汗じみを気にしないのであれば、着たりすることができる。ジョーンズからの手紙? それは後ろの壁にある。ホーガン、ジャック・ニクラスアーノルド・パーマーからの手紙と並べられている。ロゴ入りのメガネ、皿、陶磁器、マッチ箱、ブレザー用のパッチ、キーチェーン、ディボット用の道具? それらは、1930年以来、メリオンで争われているナショナル・チャンピオンシップの出場者バッジと一緒に、棚に陳列されている。“ホワイト・フェイス”と呼ばれるバンカーを加えて完成したイースト・コースを描写する刺繍、メリオンの最高責任者を務めたバレンタイン父子が1921年から1989年に残した赤い革表紙の日記もある。時間が気になる?だったら、1981年の全米オープンで使用されたオフィシャル時計を見ればいい。まだ時を刻み続けている。

1981年にグラハムが優勝した時のパター。ベン・ホーガンが大会で使用したアイアンセット。クラブに所属した古きプロたちが作ったヒッコリーの芸術品? 2005年全米アマチュアの最終ラウンドで、エドアルド・モリナリが着ていたサイン入りシャツ(ケイパーズ曰く“これは洗濯すらしていない。あの日が涼しい日でよかったよ”)。これらは、建物の描写や、何百というゴルフ本、そして何千という新聞や雑誌の記事、大会記録、プログラム、数々のクラブ委員会からのリポート、クラブの行事の年報や、ナショナル・チャンピオンや地元キャディの写真など、ありとあらゆる物が収められたメタル製のファイル棚と並べられている(これらのうち90000点以上のスクラップや10000点以上の写真はデジタル化されている)。唯一見当たらないのは、1971年にリー・トレビノが持っていたゴムのヘビだろう。

「リーに聞いたんだ」と、大切なものが1つ欠けていることを渋々認めたケイパーズはため息をつきながら言った。「でも、リーも持っていないんだよ」。

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