「いま僕はココにいます」Vol.207再手術・リハビリ編
人は彼のことを“旅人ゴルファー”と呼ぶ。川村昌弘・33歳。2012年のプロデビューから活躍の場を海の向こうに求め、キャリアで足を運んだ国と地域の数は実に70に到達した。キャディバッグとバックパックで世界を飛び回る渡り鳥の経路を追っていこう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
プロゴルファーの川村昌弘です。
大変ご無沙汰しております。昨年10月の「アルフレッド・ダンヒルリンクス選手権」を最後にDPワールドツアー(欧州ツアー)から離れて、早いもので10カ月が経ちました。
同じ年のはじめに両手首を手術し、夏場から秋にかけて試合に出場しましたが、右手首の痛みが深刻になり再び離脱。しばらくコラムをお休みしていた間、たくさんの方から心配の声をいただきました。正直なところ、いますぐ復帰はできません。今回はここ数カ月間の近況をお知らせしたいと思います。決して暗い話題ではありませんよ!
実は今年の年明け、もう一度手術に踏み切りました。最初のオペで、ボルトで固定した右手首の痛みを緩和するため、炎症を引き起こしていた組織をクリーニング。今後の予防も兼ねて骨を削り、別の骨との間隔を広くして周囲の負担を減らすことにしました。
春先からはローカル大会でひっそりと実戦復帰。初戦にした4月の「岐阜オープン」のときは7番アイアンで150ydも飛ばせない状態でしたが、ゴルフは不思議なもの。適度に力が抜けたのか、2日間競技で「71」「69」で4アンダーとスコアはまとまるのです。
5月末に地元で「三重県オープン」でプレーした後は、久々に海外に渡りました。メジャー「全米オープン」と「全英オープン」の出場権を懸けた最終予選会にそれぞれ挑戦。世界一周航空券で東回りルートを選び、せっかくなのでワクワクするコースで回ってみたい!と、どちらも未体験の会場をチョイスしました。
どちらもホームページを読み込んで、全米予選はプライベートでは立ち入ることが難しそうなカリフォルニア州サクラメントのデルパソで、全英予選は通過経験のあるゴルフ場をあえて避けてイングランドのバーナム&ベローGCを回ってきました。
全米予選は通過ラインまであと3打というスコア。しかし、右手首にわずかに痛みを感じて「万が一、通ったら本戦はちょっとキツイぞ…」という不安がよぎりました。スコアメークの観点で言えば、パッティングさえ入るようになればどうにかなる、と思える状態。しかし、帰国後に出た「中部オープン」の期間中、スタート前の練習で、長期離脱に繋がった痛みの気配を手首に感じました。
この状態で毎週4日間、戦えるだろうか。直近のラウンドで「65」前後を出していたとはいえ、それはあくまで日本のコースに、今の自分の飛距離で合わせているだけ。ドライバーショットのキャリーはまだ260ydほど。本当にやりたいゴルフとは少し違う。この状態でトップツアーに戻るのはある意味で、妥協ではないかとすら感じました。
多くのトレーナーや関係者に相談した結果、手首にあるボルトを除去する考えに至りました。骨よりも硬い異物に体が反応することで痛みが出るのであれば、いっそ取り除いて自分本来の身体と向き合うべきではないかと。中部オープンの後もいくつか地方オープンに出た後、8月の下旬の手術で内視鏡で確認してもらい、ボルトを抜いただけでなく、炎症箇所と癒着している部分もきれいにしてもらいました。
「ボルトを入れて、骨を削って開き、結局ボルトを抜いた」という一連の流れは、振り出しに戻ったように見えるかもしれません。ただ、僕はそう思いません。ボルトで固定していた期間に骨の状態が変わり、再発の予防にもつながりました。そしてこの2年間で手首に負担をかけずにパワーを生み出すためのトレーニングや、身体操作にも取り組んできました。経験は決して無駄にならない。最短ルートを通ってきた自覚があり、今後どう変わっていくのかが楽しみです。
とりあえず、2026年はまたお休みに入ります。不安がないわけではありません。ツアーに本当に戻れるのだろうかと思う時もあります。それでも、手術前後の練習では「今が一番ゴルフがうまいかもしれない」と思える瞬間もあり、前進していると確信できます。試合からは離れても、旅はまた続けるつもり。次回を楽しみにしていただけたらうれしく思います。