デイリーラップアップ:WGCブリヂストンインビテーショナル2日目
自己ベストには届かなかったものの、彼はこの日の結果を素直に受け止めていた。「がっかりしたって? そんなことないよ」と、ウッズは述べた。
「『61』はとても良いスコア。だから落ち込んでなんていませんよ」と、笑いながら答えた。
WGCブリヂストンインビテーショナル2日目、ウッズは予選36ホールを終えて7打差のリードをつけると同時に、自己ベストのスコアを狙うことも出来た。
相性の良いファイヤーストーンCCで通算8勝目を狙うウッズは、1番でアプローチを3フィートに寄せてバーディスタートを切ると、2番(パー5)では20フィートの距離から放ったパットを直接ねじ込んでイーグルを奪った。その後も前半だけで2つのバーディを加え、小雨の中で始まった後半ではいきなり4連続バーディを決めた。
記録達成には最終5ホールで2アンダーが必要だったウッズは、15番と17番で10フィート以内のバーディパットを外してしまった。最終18番ではティショットを林に打ち込み、アプローチもピンに寄せ切れなかったものの、25フィートのパッティングを辛くも決めてパーをセーブした。
今日の自己評価をリクエストされたウッズは「嬉しい?どうですか?」と尋ねられた。「ここまで結果を伸ばせたのは嬉しいよ。(ラウンド中は)とにかく出来るだけリードを広げることだけを考えていました。今は7打差なので、2日目を終えてこの数字は悪くないね」と、付け加えた。
「61」という成績は、ウッズのキャリアベストだ。1999年のバイロンネルソン、2005年のビューイック・オープン、そして2000年のこの大会、ファイヤーストーンでそれぞれ記録した自己ベストに並んだ。2日目を終えた今大会は13アンダー「127」と絶好調だ。昨年の覇者キーガン・ブラッドリーと、今大会初出場のクリス・ウッド(イングランド)が2位タイでウッズの背中を追いかける。
2位タイの2人は、2日目を共に「68」でホールアウトした。最初の2ホールでリードを奪い、ウッズより先にラウンドを終えたブラッドリーは、結果的にウッズに首位を奪い返されたことについて、「(最初の)2ホールはバーディを奪えるホールですし、ウッズがそれを逃すとは思っていませんから」と、述べた。
「(ウッズが)あまりスコアを伸ばさないように願いたいね」と、付け加えキーガンには残念な結果となった。今季既に4勝を挙げているウッズは、予選2日目をわずか22パットでまとめた。「66」を記録した初日のパット数より、更に8パットも少なかったのだ。彼は14ホール中10ホールでフェアウェイをキープし、18ホール中16ホールでパーオンを果たした。
灰色の雲に覆われたこの日のラウンドで、ウッズに次ぐスコアは「66」だった。観衆の誰もが、次々とバーディを決めるウッズに気を奪われた。そして目指すは奇跡の数字「59」。米国ツアー史上、わずか5度しか成し遂げられたことのない記録だ。
「ギャラリーは盛り上がっていましたね」と、ウッズ。「(声援は)感じるというより、よく聞こえていました。確実に耳に届いていました。かなり熱かったですね」と、嬉しそうに語った。
ギャラリーの大歓声は選手を後押しするのか、と問われたウッズは、冗談交じりに答えた。「今日のように盛り上がる観客の前でのプレーは最高ですよ。特に(ただボールが)飛ぶだけの理由で歓声を上げるお客さんはいませんからね。僕らはプロゴルファーですから」。
彼の調子はどれほど良かったのだろう? 13番ではドライバーを大きく引っ掛け、ウッズのボールはフェアウェイ脇の木に当たった。しかし最高のキックでフェアウェイ真ん中まで跳ね返ってきたのだ。そこからアイアンショットで15フィートの位置に寄せ、ウッズはパットを沈めた。
14番でのウッズのドライバーは、コース脇の高い木々に覆れているカート道を越えた所まで飛んでしまった。低い弾道のショットを強いられたウッズは、スライスショットでグリーンのフリンジを捉えると、チップショットを10フィートの位置に付け、パーパットを決めた。
歓声は各ホールで沸き上がり、ギャラリーは歴史的瞬間を見逃さないように彼のプレーに見入っていた。
そして迎えた213ヤードの15番(パー3)では、虫に気を取られ仕切り直しをしたウッズは、アイアンでの1打をカップ手前10フィートにつけた。同組で回った松山英樹の後にバーディパットを放ったウッズだったが、惜しくもカップインとはならなかった。
あのアーノルド・パーマーが“モンスター”と名付けた667ヤードを誇る長い16番(パー5)でも、ウッズはパーとした。ウッズの放ったドライバーショットはフェアウェイ左手のファーストカットで止まった。100ヤードほどのレイアップを打ったウッズは、次のウェッジで飛ばし過ぎてしまったが、バックスピンのかかったボールは30フィートの距離まで戻った。小雨が降り続く中のバーディパットは2フィートほどショートしてしまい、この16番をパーとした。
ウッズがタップインでパーパットを沈めると、この長いホールに集まった多くの観衆からは温かい拍手が送られた。
それでもなお、ウッズは奇跡のスコア「59」に手の届く位置にいた。そして迎えた17番では、ドライバーをコース左側に寄せてしまった。ウッズは、7フィートのバーディパットを読み切れなかった。
ウッズは「15番と17番はバーディを奪えるチャンスだった」と、振り返った。
次第に雨脚が強くなってきた最終18番。2打目を直接決めなければ「59」には届かない状況の中、ゆるやかな左ドッグレッグのコースにも関わらず、ティショットを右に外してしまった。難しいライからの一打は、グリーン手前のスコアボード右側に止まり、グリーンを捉えることはできなかった。その後、チップショットでバックフリンジに乗せたウッズは、見事に25フィートのパーパットを沈めて18ホールを締めくくった。
沸き上がる歓声を横目に、ウッズは拳を高々と掲げた。
一方、全英オープンで6位と大健闘した21歳の松山は、今大会注目を集めた選手のひとりだ。
ウッズと同組で回ったことについて、「世界のトップのプレーを間近で見れて、素晴らしかったです」と松山は述べた。
米国ツアーで最後に奇跡のスコア「59」が達成されたのは、スチュアート・アップルビー(オーストラリア)が、2010年のグリーンブライアー最終日にマークした時だ。最初の記録達成は1977年のアル・ガイバーガーで、その後は、チップ・ベック、デビッド・ドュバル、ポール・ゴイドスと続いた。
ビル・ハースは、2日目を「68」の通算5アンダーとして、「70」で回ったヘンリック・ステンソン(スウェーデン)と共に4位タイにつけている。ジム・フューリック、ルーク・ドナルド(イングランド)、ジェイソン・ダフナー、バッバ・ワトソンが通算4アンダーで追走している。
今シーズンのウェイストマネジメント フェニックスオープンでミケルソンが達成したラウンドスコア「60」は、過去の米国ツアーで27回達成されている記録だ。
ここまで輝かしいキャリアを残してきたウッズにとって、スコア「59」はやり遂げたいリストの1つに入っているのだろうか。しかしウッズ自身は、あまり特別に思っていないようだ。
「(キャリアで)トップ10に入るラウンドかって?」と、質問を繰り返したウッズ。「それはどうかな」と、答えた。