ゴルフ界最高のスタジアムは改善を重ね、そして大きくなる?
フロリダ州ポンテベドラビーチ -- そこは現在、「ゴルフ界最高のスタジアム」と呼ばれ、その事実に間違いはない。元々は沼地だったポンテベルダビーチにTPCソーグラスが作られて数十年が経過し、ディーン・ビーマンが構想し、ピート・ダイによって作り出されたそのコースは、選手権と世界クラスのコースによるスポーツ界最高の組み合わせへと進化した。
ザ・プレイヤーズ選手権は今年で40年目を迎え、TPCソーグラスのスタジアムコースは31年目を迎えたわけだが、この2つは実に長い時間をともにしてきた。かつてPGAツアーのコミッショナーを務めたビーマンは、この大会が将来的にツアーの最も格式あるイベントになることを確信し、最初の8年間はフロリダ州とジョージア州のコースを転々としていた同大会をこの地でスタートさせた。それは、世界クラスのコースの安定性を買ってのことだった。そして、ビーマンはダイが設計をしたことも知っていた。
1982年にTPCソーグラスがオープンして以降、選手権とゴルフコースはとても親密に成長してきた。このとき、コミッショナーと設計者は優勝者のジェリー・ペートによって18番ホールの池に落とされ、ペートもそれに続いている。それ以来2人の関係性は深くなり、ダイが反発的なグリーンや過酷なハザードを作ったことで批判された際、ビーマンもダイを採用したことについて何人もの選手から批判を浴びることとなった。
ビーマンはその声を聞き、それを受け入れた。そしてダイはその問題に対処するために呼び戻された。ダイは渋々コースに手を加え難易度を和らげると、年が経つとともに不満の声も収拾していった。
ビーマンはかつて「コースに対する不満は気にしたことがない」と話した。「最初の年は少し難しかっただろう。だが、優れたコースのカギは、年を追うごとに良くなり、とても良く進化することなのだ」とも述べている。
「ピートが我々に与えてくれたコースは、あらゆるクラスの選手を決して排除しない。全てはショット次第なのだ。全てのタイプに適応する」
その評価の確かさは、歴代優勝者のスタイルの違いからはっきりしている。82年のペートに始まり、83年のハル・サットン、84年のフレッド・カップルズらは何れも群を抜いたロングストレートヒッターという組み合わせだった。85年のカルビン・ピートはショートヒッターであり、ストレートヒッター。86年のジョン・マハフィも同じくストレートで比較的ショートヒッターだった。87年と88年はスコットランドのサンディ・ライル、そしてマーク・マッカンバーとロングヒッターが優勝している。
89年はショートヒッターのトム・カイトが大会を制し、90年はロングヒッターのジョディー・マッド、91年はショートのスティーブ・エルキントン、92年はロングのデービス・ラブIIIが勝ち、99年はロングのデービッド・デュバル、2010年はショートのティム・クラークが王者となった。
このことは、これまでスタジアムコースを4、5回改修し、2008年に世界ゴルフ殿堂入りを果たしたダイには通用しない。良い選手はよりチャレンジすべきとの深い信念を持っているダイはコースを優しくすることに嫌々従いはしたものの、ビーマンとともに、世界最高の選手たち試練を与えつつファンに忘れられない素晴らしい経験をさせようという目標は失っていない。
もし1980年あたりからタイムトラベルした人間が、今週のザ・プレイヤーズ選手権を見たとしても、その人は自分が死んでゴルフファンの天国に召されたとは思わないだろう。その人は82年にコースがオープンしたときの、観客の目を遮るもののない景色を含めた元々の特徴や恩恵を思い起こすだろう。そして、16番から18番までのハイボルテージなショーに感動を覚えるに違いない。
ファンが17番の丘の斜面でどのグループの誰がピンに最も近く寄せるかという予想をツイートすることについてはどうか。その人は先ずツイッターの衝撃に心を奪われるかもしれないが、そのうち自身の考えを打ち込むことになるだろう。プロスポーツイベントにおいて活きた対話や交流を耐えるのは、どの時代もファンにとっても難しいことなのだ。
80年代の堅いパンやゴムのようなホットドッグを食べていたファンにとって、11番と12番ティーの間にあるインドシナ(タイ及び東南アジア料理)、メトロ・ダイナー(低カロリーかつグルテンなしのオプションが選べるアメリカ伝統料理)、そしてペレの山火事(ピザを名物料理とするイタリアン?アメリカン)といった3つのレストランを逃すことはできまい。クラブ1791という屋内の空調が効いたラウンジは、カクテルの前の「パブリック・ウェルカム」のサインで我々の訪問者をまごつかせることだろう。そしてその人は「このグルテンは何だ?どうしてこれがただなんだ」と尋ねるのではないか。
ただといえば、2012年の「ザ・プレイヤーズ選手権」は2万602枚の無料チケットが発行され、現役や予備の軍人、軍退役者とその家族に配られた。これは今年も行われ、ファンのためだけでなく、自由を守る人々へ感謝を伝えるものとなる。
TPCソーグラスのスタジアムコースでのイベント詳細等はPGATOUR.COMで確認できる。
そして、もう少しピート・ダイについて知っておくべきことがある。彼は87歳になって半年近く経つが、少しもその歩調を緩めていない。まだまだ第一線で活躍し、フロリダのオーシャンリッジのコース改修や、夏に始まるオハイオ州コロンバスのコースの修繕など、忙しく働いている。
ダイは、現在抱えている仕事を終えたら、「TPCソーグラスに戻り、もう少し作業をしたい」と、先の仕事にも意欲を見せている。
彼が何を考えているかはともかく、それはコースを易しくすることでないのは確かだ。彼は現在の選手のドライバーやアイアンの飛距離が伸びたことにより、実質的に距離が短くなったと考えているスタジアムコースにあるパー4の4ホールを長く、そして難易度を上げるに違いない。
ダイは5番(471ヤード)、7番(442ヤード)、14番(481ヤード)、18番(462ヤード)を長くすることについて話をしている。
「あれらは長くするほうが良い。なぜなら、現在のプロたちはかなりの距離を飛ばすから、ああいったロングのパー4はもはや難しくなくなっている。それを実行できるなら、単純なものになる。まだ土地はあるし、可能性はある」。
ダイは、これらのホールを520ヤードぐらいにすべきであると考えており、それは全体でおよそ240ヤードの延伸を意味するため、この考えには実際的に余地が必要となる。
「それについてフィンチェム氏と話した」と言うダイ。「彼はためらっていたが、いつかは実行するだろう。選手にセカンドショットで3番や4番アイアンを使わせるために、コースの改修はすべきだ」。
結局のところ、現状を維持するばかりではゴルフ界最高のスタジアムとはなり得ないのである。