“復活”から2週間 タイガーの仕上がりと前評判は
1995年から毎年「マスターズ」でプレーをしているタイガー・ウッズにとって、今回が18回目の参戦となる。1995年(41位タイ)と1996年(予選落ち)はアマチュアとしてのプレーだったが、プロに転向して初めて挑戦した1997年は初日のフロントナインで「40」を叩き出遅れてしまう。 しかしバックナインではなんと6アンダー「30」として初日は2アンダースタート。その後スコアを伸ばしていったタイガーは大会記録となる通算18アンダーで2位に12打差という圧勝を果たしていた。タイガーはその1997年に加えて 2001年、2002年、2005年と過去4回勝利を収めてグリーンジャケットに袖を通している。
タイガーは2009年11月に発覚したスキャンダルから4ヶ月のプレー自粛、その後は首や左膝、左アキレス健など故障も続き低迷が続いた。2010年8月には過去7勝と得意としていた「WGCブリヂストンインビテーショナル」では4日間で通算18オーバー、優勝者とは30ストロークも離れてしまうという屈辱の結果を残し、翌週の「全米プロゴルフ選手権」からは、新しいスイングコーチ、ショーン・フォーリーに指導を仰いだ。 しかし直ぐに結果を出す事ができずパッティングやアプローチ、バンカーショットも以前のような鋭さは消え失せてしまい、タイガーの世界ランクは急降下をたどった。
ターニングポイントは昨年秋オーストラリアで開催された「オーストラリアオープン」と、団体戦の「プレジデンツカップ」だった。そして2週間前に行われた「アーノルド・パーマーインビテーショナル」でPGAツアー競技2年半振りに優勝を挙げる事に成功した。なんといっても光るのは、ティショットの安定度だ。今シーズンは飛距離とフェアウェイキープ率を合わせた「トータルドライビング」というティショットのデータで、ここまでツアーナンバーワンになっている(飛距離298.1ヤード/18位)(フェアウェイキープ67.94%/18位)。
ショーン・フォーリーコーチとスイング改造を続けているタイガーは「飛距離だけではなくボールコントロールがしっかりできるようになってきた」と語っていた。高さのコントロール、そして右から左、左から右と自由自在にボールを操るようになっている。また、年明けに中東アブダビで行われた欧州ツアーの大会ではショートアイアンでボールが飛びすぎてしまうというミスを連発して優勝を逃がしてしまったが、2週間前の「アーノルド~」で優勝したときは、「9番アイアンやピッチングウエッジの最大飛距離がやっと分かってきた」と説明をしていた。
現在タイガーのキャディを務めるのはジョー・ラカバ。ラカバは長年フレッド・カプルスのバッグを担いでいた。1992年にカプルスが「マスターズ」を制覇したときもラカバがキャディを務めていた。2月の「AT&T ペブルビーチプロアマ」ではパッティングに苦しんでいたタイガーだが、フロリダで行われたここ2試合では以前よりもグリーン上で一緒にラインを読むというケースが増えているように感じる。ちなみにタイガーは「今年のオーガスタは8番と16番のグリーンが新しくなったのでこれまでの(このグリーンの)コースメモはもう使えないね・・・」と話していた。
この「マスターズ」に焦点を合わせてピークを迎えたい、と以前から話していたタイガーは、現在調子が良いということもあり火曜日に行われた公式記者会見でも笑顔いっぱいで記者の質問に返答した。大会への意気込みやパー5の攻め方、パッティングの大切さを説明。そして1995年初出場の時にアーノルド・パーマーとジャック・ニクラスと一緒に練習ラウンドをしたときの話を嬉しそうに語った。
「ジャックからはパッティングのライン取り、狙いを教わりました。アーニーには“スキンズゲームをやろう!”と言われたんだけど、僕は“お金持っていないんですよ・・・”と話したところ、“心配するな、ベストを尽くしてプレーしたらいい”と言われたんです」。
月曜日は早朝からマーク・オメーラと練習ラウンドをこなしたタイガーは、火曜日にフレッド・カプルスとショーン・オヘアーと練習を続けた。 タイガーは大会初日、現地時間午前10時35分にティオフ。初日、2日目の同伴競技者は47歳のミゲル・アンヘル・ヒメネス(スペイン)とベ・サンムン(韓国)に決まった。ラスベガスや英国のブックメーカーはタイガーを優勝候補ナンバーワンの5倍と発表。ロリー・マキロイは2番手で6倍、そして11倍のフィル・ミケルソン、リー・ウェストウッドとルーク・ドナルドが15倍と続いている。
アンディー和田
(ゴルフチャンネル解説者)