PGAツアーが戻ったドラールでLIVゴルフに思うこと
◇米国男子◇キャデラック選手権 最終日(3日)◇トランプナショナルドラール ブルーモンスター(フロリダ州)◇7739yd(パー72)
PGAツアーが10年ぶりにマイアミ・トランプナショナルドラールに戻った。この地は1960年初頭から2016年までPGAツアーや世界ゴルフ選手権(WGC)の舞台として親しまれていたので、米ツアーファンには「やっと戻ってきた」という感覚だ。
空白の10年間、筆者は2022年のLIVゴルフ取材で一度だけドラールを訪れた。そのLIVに資金を拠出していたサウジアラビア政府系ファンドPIF(パブリックインベスティメントファンド)がこのほど、今年限りで出資を中止すると発表した。LIVには報道以外のビジネス面でも少々携わった経験があるので、私見を話したい。
2022年はLIVの1年目、日本の某媒体で試合の放映権を獲得すべく会場に向かった。放映権は無事に獲得でき、その年の残りの6試合を放送できた。その際、LIVのさまざまな関係者と話をしたが、いくつかの不安や疑問を抱いた記憶がある。
最初に疑問を抱いた相手はメディア担当の責任者だった。その人に「日本の正式な放送権者として、ノーマン氏に短くて良いのでインタビューしたい」とリクエストすると快くOKしてくれて「次の試合の練習日にインタビューを設定するので、詳細は後ほど連絡します」と言われた。ところが、その後はナシのつぶて。仕方なく次の会場に向かい、担当者を探して詳細を尋ねると「何の話でしたっけ?」ととぼけられた。そんなやり取りを何度か繰り返し、結局インタビューできなかった。ノーマン氏が多忙なら仕方ないが、その場しのぎのいい加減な返事をする部署の責任者に強い憤りを感じたことを覚えている。そんな対応はLIVのイメージに悪影響しか与えなかっただろう。
次に疑問を抱いた相手は商品ライセンスの担当者。放映権とともにLIVの商品販売権が取れないか打診し、最初はスムーズに話が進んだものの、契約の流れや商品選定など具体的な段階になると突然連絡が途切れた。何度連絡を取ろうとしてもダメ。結局、その担当者はLIVを去っていた。これではLIVの売上が上がるはずもない。
運営面の責任者とも話す機会があった。まだ始まって数試合という段階だったのに「すでに約3億ドル(当時約400億円)使っているので、回収に取り組まないといけない」と危機感を示していた。PIFの資金は数兆円規模と言われていたにもかかわらずだ。その責任者もしばらくしてLIVを去った。責任の所在はいったいどこにあったのだろう。その年限りで放映は終了し、筆者もLIVとのビジネスから離れた。
一連のやりとりから感じたのは、資金が潤沢に用意されていたが故に、現場に危機感が全くなかったことだ。PIFがどんなに巨額の投資をしても、ビッグネームを獲得して大々的にイベントを行っても、現場の担当者に「少々無駄があっても我々は余裕だ」「多少損をしても影響はない」というような“殿様商売”的感覚が蔓延していれば、具体的な資金回収は程遠くなる。
現在はLIVに関わる全員が危機感を共有しているかもしれない。当時も一生懸命、誠実に業務に取り組んでいた担当者はいた。そんな人々が一丸となって苦境に立ち向かえば、今後、別の資金提供者が名乗りを挙げるのではないか、LIVは存続できるのではないか。久しぶりに戻ったドラールでそう思った。(JJ田邉カメラマン)