日本人最多メジャー50戦目 松山英樹はオークモント初アンダーも「信じていいのか…」
◇メジャー第3戦◇全米オープン 最終日(15日)◇オークモントCC(ペンシルベニア州)◇7372yd(パー70)
最終18番、松山英樹のプレーは完ぺきだった。フェアウェイのど真ん中を捉えたティショットから、残り193ydのアイアンも右サイドのピンにかぶせていくような軌道を描く。70㎝ほどに絡めるベタピンバーディで締めくくり、前回2016年大会では予選落ちを喫したオークモントCCで、通算6ラウンド目にして初アンダーパーとなる「68」をマークした。
雨が降ってソフトになったグリーンコンディションは前日にも当てはまる部分。だからこそ、3日目「77」からの改善に「(変わったのは)自分の状態だと思う。きょうは良かった」と言える。それでも、喜びはどこまでも控えめ。1月「ザ・セントリー」優勝で始まったシーズンは、その開幕戦を最後にトップ10入りがない。フェアウェイキープ率71.42%(10/14)、パーオン率77.78%(14/18)はともに4日間で最高の数字だったが、つかみかけた手応えがしぼんでいく日々の繰り返しが口ぶりをいっそう慎重にさせる。
振り遅れるシーンもあった3日目は、ラウンド中に右ひじの角度を気にするようなしぐさも見せていた。この日は明らかに“枠”に収まる確率が上がったものの、「毎日(微調整で)変えてるんで、それがたまたま当たったって感じ。これを信じていいのか、いけないのかっていうのは、まだ分からない。またあしたから練習して、それが本当かどうかを確かめながらやっていけたら」と表情を緩めることはなかった。
試行錯誤はグリーン上でも。朝イチのパッティンググリーンから、試合のように入念にラインを読んで打つ練習を繰り返していた。「いいストロークをしても入らないっていうところで、ラインとスピードのイメージの出し方が悪いとか、読みの問題もありますし…課題はいろいろありますね」と話し、ストロークの再現性を高める以外の部分に対して意識がにじむ。最終日は3つのバーディを奪ったが、カップをそれたり蹴られたりと悔しそうに天を仰ぐ場面も散見された。
13年連続13回目の全米オープンは通算12オーバーで終了。これが4大メジャー全体では出場50試合目となり、並んでいた尾崎将司をかわして日本人単独最多の節目を刻んだ。そのうち予選落ちはわずか6試合で通過率88%と驚異的な安定感を発揮しようとも、本人が目指すのはあくまで世界の頂点を争う戦い。シーズンを通して見ても、優勝争いに加わり、そのプレッシャーの中で使える“引き出し”とそうでないものを選別していくことが自らを高めるプロセスとして理想形だ。
午前8時14分と早朝のスタートで、ホールアウトは正午を過ぎた頃。最終組のティオフまで2時間ほどあるタイミングで、次週「トラベラーズ選手権」(コネチカット州TPCリバーハイランズ)に向けた移動のためコースを離れた。今季メジャーは7月「全英オープン」を残すのみ。やはり前回2019年は予選落ちと跳ね返された北アイルランド・ロイヤルポートラッシュが相手になる。(ペンシルベニア州オークモント/亀山泰宏)