“奇人”から“超人”へ デシャンボーの2020年ぶっ飛び事件簿
コロナ禍の2020年、ゴルフ界で活躍した選手といえば、PGAツアーで初の年間王者に輝き、11月に延期された「マスターズ」を制したダスティン・ジョンソンが筆頭に挙がる。一方で最も話題を振りまいた選手なら、ブライソン・デシャンボーをイメージするファンも多いのでは?
ワンレングスアイアン、ボールを塩水に浮かべて重心位置を測るなど、独自の理論に傾倒する自称「ゴルフ科学者」が肉体改造によって圧倒的な飛距離を手に入れ、トップ選手の仲間入りを果たした一年を振り返ってみた。
コロナ太りじゃない! 衝撃の変身
3カ月のツアー中断を挟んだ6月「チャールズ・シュワブチャレンジ」に体重を約9㎏増やして登場。中断前の時点で321.3ydと1位を走っていたドライビングディスタンスは、4日間で340.4ydとスケールアップ。ダニエル・バーガーの復活優勝もかすむインパクトを残した。
428ydドライブ…からのボギー
6月末「トラベラーズ選手権」2日目、467ydのパー4となる10番でティショットの飛距離が428ydを記録した。延々とカート道を転がった結果だったが、その後10月の練習では1Wショットのキャリー400yd超えを果たしてドヤ顔。ちなみにこのホールはボギーだった。
プレー中にもプライバシー?
肉体改造後の初Vは7月「ロケットモーゲージ・クラシック」。ポロシャツに刻まれたおびただしい数の方程式が注目された3日目には、バンカーでミスした後も撮影を続けるカメラマンに「仕事なのはわかるけど、少しプライバシーを尊重してほしい」と詰め寄る一幕もあった。
“らしさ”全開のセカンドオピニオン要求
これまでもサイドサドルパッティングや方位磁石の使用で全米ゴルフ協会(USGA)とバトルを繰り広げてきたが、7月「ザ・メモリアルトーナメント」ではOBの裁定を巡って競技委員に「セカンドオピニオン」を要求。パー5で「10」をたたき、予選落ちとなった。
アリかナシか 白熱の蟻塚論争
8月「WGCフェデックス セントジュード招待」でラフにボールを曲げた後、「近くにアリの巣がある。ファイアーアンツ(ヒアリ)だ」。無罰で救済を受けられないか粘るも、認められなかった。同週ブルックス・ケプカがラフにある自らのボールを見て「アリの巣だ」と指さし、すかさず皮肉った。
自慢の1Wが折れちゃった
翌週「全米プロ」の初日前半7番で目いっぱい振った1Wのシャフトが根元近くで曲がり、真っ二つに。スタッフが大急ぎでロッカールームにあるスペアを持って戻り、次に使用予定だった9番までに修理を完了してひと安心。メジャーで自身初のトップ5に入った。
ツアー新記録の平均322.1yd
2019-20年シーズンのドライビングディスタンス322.1ydは堂々の1位。シーズンの平均飛距離320yd超は2003年のハンク・キーニー(321.4yd)以来となり、詳細なデータが残る1980年以降ではツアー史上最高の数字をたたき出した。
メジャー圧勝で“力こそ正義”証明
新シーズン初戦となった9月「全米オープン」でメジャー初V。深いラフにつかまるリスクもお構いなしのパワーゴルフで2位に6打差をつけた。8打差3位ルイ・ウーストハイゼン(南アフリカ)の「彼だけの小さなゴルフ場でプレーしているようだ」という端的なコメントも秀逸だった。
めまいに紛失球 完敗のオーガスタ
練習場でボール初速200マイルを計測したシャフト48インチの1W投入こそ見送ったものの、「すべてのパー5で2オン可能。パー72ではなく“パー67”」と自信満々で臨んだ11月「マスターズ」。めまいなど原因不明の体調不良に苦しみ、ラフに打ち込んだ2日目の3番では痛恨のロストボールでトリプルボギー。34位に終わった。