故郷〈先週の一枚〉フォトグラファー今井暖
◇国内女子◇北海道meijiカップ 最終日(9日)◇札幌国際CC島松コース(北海道)◇6709yd(パー72)◇晴れ(観衆4634人)
先月末、4年に一度開催されるFIFAワールドカップが幕を閉じた。大切な睡眠時間やコツコツためてきた貯金を削らせてまで人を熱狂させる世界最大級のスポーツイベント。多様化するプロスポーツイベントの中でも注目度、参加する国の数、そして動くお金の額はどれをとっても世界トップクラスだ。なぜここまで熱狂するのか。たくさんの理由があると思うが、その一つは自分が生まれた国や地域に対する「郷土愛」ではないだろうか。
この世に生まれたものにとって故郷は必ず存在する。今もそこに住み続けている人もいれば、遠く離れた地で暮らしている人もいる。国境を越えて自分の新たな場所を築いている人も少なくないはずだ。そんな人たちも時折故郷や祖国に想いを馳せる。自分を育ててくれた大切な場所。世界中の地元愛がとてつもないエネルギーを生み出し、あのビッグイベントたらしめているのだろう。
国内女子ゴルフツアーはおよそ10カ月をかけて日本各地を転戦する。先週は北海道北広島市にあるコースで開催された。連日のニュースが日本中の酷暑を伝えるなか、北海道の日陰とそこを吹き抜ける風が真夏の連戦の疲れを癒してくれる。
トーナメントのクライマックスを迎える日曜日の朝、優勝争いをする最終組と同じくらいのギャラリーがティイングエリアを取り囲む。北広島市出身の小祝さくらと札幌市出身の政田夢乃が姿を現す。彼女たちがスタートホールに登場すると、温かい拍手とたくさんの笑顔がティイングエリアに広がった。「俺が育てた!」とまでは言わないが、多くのギャラリーが地元から羽ばたいて行った選手のプレーに目を細め、拍手を送る。2人もその声援に応えるかのように、ティショットをフェアウェイに運ぶ。応援する側もされる側も、みんなの故郷への想いがこのスタートホールの熱を生み出した。
ここ北海道で地元選手に送られた拍手や声援は、規模は違えどニューヨークで決勝を戦ったスペインやアルゼンチンの選手たちに送られたものと同じ性質のモノだ。4年に一度というスパイスがより熱狂を生んではいるが、毎年地元に戻ってくる「おらが街」の選手を応援することもまた同じくらい楽しいはずだ。そして北海道だけでなく、日本各地で地元選手が故郷の試合に戻ってくるのを待っている人たちがいる。選手たちはその大きな声援と拍手を背に、大切な一打一打を刻んで行くしかない。(フォトグラファー・今井暖)