ライン読みが割れたのは1回だけ 笠りつ子とキャディの父が紡ぐ距離感
◇国内女子◇Vポイント×SMBC レディスゴルフトーナメント 最終日(22日)◇紫CC すみれC(千葉)◇6731yd(パー72)◇晴れ(観衆3746人)
笠りつ子が表彰式に出席している間、キャディを務めた父・清也さんは早々にクラブハウスへ引き揚げてきた。「全部じゃないけど、きょうは意外と聞かれましたね~」。傾斜も相まってかなりスピードが出ていたシビアなグリーン。娘からライン読みの相談を受ける場面が多かったそうだ。
その中で2人の意見が割れたのは1ホール。「17番だけですね」。単独首位で迎えていた終盤の難所で、奥からパターで寄せた後のパーパットだった。フックに見えるという娘に対し、スライスと読んでいた父はさっと身を引いた。「フックに見えるところをスライスと言っても、(打つのが)ちょっと難しいかなと思った。『カップ外さずに真っすぐでええ』っていう話はしました」。ボールは1.5m先のカップ右側に外れた。「(私の)ラインミスです」。選手本人も認める痛恨の一打を最終18番(パー5)のバーディで跳ね返した5年ぶりの優勝は、絶妙な距離感で接する親子2人でつかみ取った。
優勝から遠ざかり、過去2シーズンはシードを逃した。続々と台頭する若手によって押し出されるベテラン。分かりやすい構図を否定はせず、その上で父は娘の力を誰より冷静に見ている。「ショットは、負けることはあんまりないですよ。ランキングとか見ても、パーオン率はいいですよね。パターだけ上がれば、もっといいところに行くと思う。一番難しいところですけどね、パターが」。昨季もショットメーカーの指標となるパーオン率は部門別ランキング10位(72.6757%)の高水準だった。高速グリーンでの我慢大会なら…という期待はかすかにあった。
この5年間を振り返り、「あんまり大変だったことって…ないと思いますね。キャディしていて、暑かったくらいですか」と笑う。年明け早々の合宿に始まり、シーズン中のトレーニングも怠らない娘だから、ゴルフについてほとんど口を挟む必要もないのだと話す。「ゴルフをやりたいならやってもいいし、やめてもいいし、結婚もしたいならしてもいいし…。本人にお任せですね。彼女の人生ですから、彼女が自分で考えていくでしょう」
優勝後のインタビューでは、笠本人が“第二の人生”について考えるようになってきたことを明かしている。「この舞台でずっと戦い続けるのか。今週の練習ラウンドの時に37歳だと思っていたら、38歳だったんですよ、私。今度の誕生日で39歳ってなったら、ビックリして。もうすぐ40歳になるでしょ?同年代でみんなは結婚して子どもがいる。女性の“リミット”もあると思う」と複雑な胸中が見え隠れした。悩み抜いた末に納得して出した答えなら、父はきっと背中を押してくれる。(千葉県野田市/亀山泰宏)