エリートは下部ツアーで自分を受け入れた 藤本佳則の「感慨深い」復活2勝
◇国内男子◇フォーティネットプレーヤーズカップ 最終日(25日)◇成田ヒルズCC(千葉)◇7105yd(パー71)◇晴れ(観衆1650人)
コースのある成田市にはこの日、最大で風速9.5m/sの風が吹き荒れた。向きも前日までと異なる南南西から。池が絡む終盤のホールが突如として難しくなるコンディションで、藤本佳則のゴルフは最後まで揺らがなかった。
スイングの好感触を探す日々が続き、前日3日目を単独首位で終えても「不思議で仕方がない」と首をかしげるばかりだった。「“これ”やったらハマるんちゃうか」と思えたのは、その後の居残り練習でのこと。試行錯誤を繰り返し、ダウンスイングを「シャフト1本か、1本半くらい(の幅を)」インサイド側に下ろすという修正ポイントに行き着いた。
「選手からすると、結構大きな変更。半分は賭けだった」という大胆な変化は実を結ぶ。カラーから5mを沈めた出だし1番からの4連続バーディを“貯金”にして、その後も安定したショットでパーオンを続けた。8番(パー3)で6mを流し込んで5つ目。後続選手が迫ったバックナインは15番で3mのパーパットをしぶとく沈めた。17番(パー3)では池に囲まれたグリーン目がけて3Iを握り、旋回する風を読んでエッジに止めて安ど。ボギーなしの「66」、通算15アンダーで2位に4打差をつけて逃げ切った。
学生時代からエリート街道を走り、プロ1年目、2年目にそれぞれ1勝を挙げながら、その後、勝利から遠かった。5月の「関西オープン」で12年216日ぶりの復活優勝。さらに5カ月後にまた白星をつかんだ。「感慨深いですよね…。3勝するのに12年以上かかって、そこからすぐに4勝目ができた」と、浮き沈みの激しいキャリアを眺める。
コロナ禍で統合された2020―21年シーズンを賞金ゼロで終え、翌22年から下部ツアーに身を置いた。レギュラーツアーとは違う一般営業並みのコースセッティング。練習場では打つ球数が制限され、セルフプレーで回った試合もある。「ハーフターンで1時間くらい休憩時間があったりする。それだけ休んで(後半の出だしで)一発目からフルショットをするのはケガのリスクもある。僕はあの休憩が一番きつかった」。中堅世代に差し掛かってから味わった下積みが楽であるはずがない。
「正直、デビューしてからレギュラーに何年もいて、下のツアーでやることを受け入れていなかった自分がいた」のが本音だった。「でも出てみたら、ACN(下部)の選手もうまい。『自分はここにいる選手なんだ』と認めるのに数年かかった。認めることができないと、先に進めなかったと今だから思う」。厳しい環境で養われたのは「考える力」だという。「ひとりでプレーしたことで、それが昔よりもついた。自分にとってはプラスだった。落ち着いて状況判断ができる自分がいる感じはします」と成長に少しだけ胸を張る。
表彰式後の大雨で、急ぎ足で引き返したクラブハウスで「ハッピーバースデー・トゥ・ユー」の声が響いた。この日で37歳。後輩プロが持ち込んだバースデーケーキの火を喜びいっぱいに吹き消す。「誕生日よりも勝てたことの方がうれしい」。いつもの笑顔に照れが浮かんだ。(千葉県栄町/桂川洋一)