出場権喪失危機から1億円獲得 桂川有人は“日本勢初”欧州2勝「通らないといけない道」
◇欧州男子◇ジェネシス選手権 最終日(25日)◇ウージョンヒルズCC(韓国)◇7367yd(パー71)
2024年に静岡・太平洋クラブ御殿場コースで行われた日欧共催試合を制した桂川有人は、同年夏から欧州ツアーに本格参戦した。2年目の25年は自身の初戦から4試合連続で決勝ラウンドに進めず、年間ポイントランク(レース・トゥ・ドバイ)は初年度の84位から91位に後退。今季も1週間前まで106位に低迷し、年間出場権確保となるトップ100圏外にいた。
韓国での「ジェネシス選手権」で成績が振るわなければ、残り2試合のプレーオフシリーズに進めず、その時点でシーズン終了となるはずだった。その窮地で、昨年4位に入った大会との相性の良さも武器に3日目に「63」をマークして急浮上。単独首位から出た最終日は、優勝とシード争いの「ダブルの緊張」とも付き合いながら逃げ切った。
低迷が続いた時期も桂川は海の向こうで実直にレベルアップを図っていた。昨年から、世界転戦に同行する欧州ツアーのトレーナーに師事して肉体改造。試合会場に設置される大型車両の中で毎週、汗を流す。スイングコーチの目澤秀憲氏によると、ドライバーショットのヘッドスピードは2年前よりも3m/s近く上がり、53m/sに到達する勢い。7月「スコットランドオープン」では同伴競技者をティショットで置き去りにする身長167cmの姿に、PGAツアー所属のサヒス・ティーガラらは驚きを隠せない様子だった。
学生時代にフィリピンで腕を磨き、外国人との付き合いには慣れている。戦える飛距離を手に入れ、この秋には新たな出会いもあった。アイルランドでスペイン人コーチのアレハンドロ・ララサバル氏からパッティングのアドバイスを授かり、韓国の直前の3試合はすべて4日間を戦っていた。
望んだ成績がたとえ出なくても、各国のゴルフ場と向き合う姿勢は実直そのもの。「自分の調子と実力、スタイル…全部を考えて、その都度コースに合った攻め方で戦わないといけないんですよね。スコアの出方も感覚と(実際の数字が)一致しないことが多くて。『このコースは(周りの選手も良いスコアが)出ないだろう』と思うところで出たり、『このコースは出るよな』と思うところで意外と出なかったり。おもしろいんですよ。いろんなパターンがある」。自身の感覚と実力者たちの技とをすり合わせる日常が楽しい。
ただそれも、すべては「やっぱり自分の夢、一番上を目指す目標がある」から。「そこから逆算して考えると、ここは通らなといけない道だという感じです。まあ、お金の心配はありますけどね(笑)」。悩みがどれほど深くとも、限界を知る前に日本に帰るわけにはいかなかった。
来季の職場確保に必死になっていたところで、優勝賞金606万547ユーロ(約1億667万円)を獲得した。欧州ツアーでの日本人優勝者はこれまで7人。欧米ツアーを兼ねたメジャー、WGC(世界選手権シリーズ)で通算3勝を挙げた松山英樹を除くと、桂川は初めて複数回優勝を手にした選手となった。(編集部・桂川洋一)
<日本勢の欧州ツアー優勝者>
青木功 1983年「欧州オープン」
松山英樹 ※2016年「WGC HSBCチャンピオンズ」、17年「WGC ブリヂストン招待」、21年「マスターズ」
久常涼 23年「フランスオープン」
星野陸也 24年「カタールマスターズ」
中島啓太 24年「ヒーローインディアンオープン」
桂川有人 24年「ISPS HANDA」、26年「ジェネシス選手権」
金子駆大 26年「オーストリア アルペンオープン」
※WGCは世界選手権シリーズ、マスターズはメジャー。いずれも欧米ツアーなどを兼ねた試合