2013年 マスターズ

ルールトラブル 閉ざされたドアの裏に隠されたもの/マスターズレビュー

2013/05/07 12:01

Golf World(2013年4月22日号)texted by Geoff Shackelford

マスターズでは競技委員がロープ内に立ち入ってプレーを見ることを禁じている。理由は「景観を崩さないため」(Dom Furore/USGD)

マスターズで問題となった15番ホールでの第3打、ショットがピンに当たって跳ねかえり池にボールが落ちた時、ウッズが意見を求められる審判員はそこにいなかった。仮にドロップの方法が3通りあったとしたら、審判員がいれば選択肢について助言しつつ、ボールを打った場所から“可能な限り近い場所”でドロップするよう指示出来た可能性もあった(ボールを打った場所でドロップすることでホールに近い位置にボールが転がり、ドロップのやり直しを指示されていた可能性もあったはずだ)。

3日目を終えたウッズは「実際は何も考えていなかった」とコメント。前日の問題について最初に話をしたのは朝8時。そして、オーガスタナショナルのリドリーとの協議を行った問題のドロップに対する質問に答えた時だった。「起こったことについては言いたいこともあるし、どうすれば良いか適切な判断をしようと思っていた。少し下がって打たないといけないとしか考えていなかったね。だから、少し下がって打とうと思った。しかし、僕が明らかに正しい位置でドロップしなかったのは明白だ」。

ウッズが17番ホールをプレーしていた際、テレビ中継を見ていた視聴者から不適切な位置でドロップしたのではないかという意見が寄せられ、リドリーの耳に伝わった。その時ウッズは18番ホールでプレーしていた。オーガスタナショナルの委員であるジム・レインハート、PGAツアーのマーク・ラッセル、そしてリドリーによる協議の結果、ウッズは適切な過程を踏んでドロップしたと判断。ペナルティの対象ではないと判定された。リドリーによれば、マスターズ審判員からの指摘、そしてインターネットでも、結論を下す前ウッズに何の助言も忠告もしなかった点、そしてそのままスコアカードを受け入れたという点に驚きを隠せないという意見が多数寄せられ、映像の見直しをするよう強く言われたという。

「基本中の基本」と語るのは元USGAエグゼプティブディレクターのデイヴィッド・フェイで、スコアカードを承認する前に、選手に助言と忠告、そして映像でプレーを確認するのが先決と指摘している。

クラブの怒りを買うことを恐れる審判は非公式という条件ながらも、最近はテレビの目があることで選手達は救われていると話す。それリドリーがウッズのスコアカードを容認したことは言い分けの通らないミスになるという。

かくしてウッズはスコアカードにサインし提出。当日の会見でもボールを打った位置から2ヤード下がってドロップしたことを認めた。同金曜日の午後10時から放送したCBSの番組でジム・ナンツは、ウッズのドロップを問題視すると話し、続く午後11時35分の番組でも問題のシーンのハイライトを放送。リドリーはクラブに戻り映像を見直した結果、翌朝ウッズに不適切な位置でのドロップを理由に2打のペナルティを科すと伝えた。以前フロリダ州タンパを拠点とした弁護士、そして元USGA代表が作った規則33-7、つまり委員会が例外的な事例に限り、個々に競技失格の罰を免除出来る規則が適用されたとして論争が起こった。

そしてウッズ自身は3日目のラウンド終了後に「これはハリントン・ルールだと思う」と主張。実際には規則33-7/4.5に該当するもので、2年前に映像を元に指摘されたプレーに対し、選手自身が違反ということに気付いていなかった問題で適用された。ウッズ自身は同規則が適用されて失格処分にならないと主張を続けており、それが波紋を呼んでいる。米国内の審判員はリドリーが危険な前例を作ったと指摘。そして当初の誤審を規則で誤魔化したというネガティブな印象を与えたとも。

ダブリンを拠点とする規則の専門家バリー・ローズも、「ゴルフと競技規則に関心のある人間の頭から、今回の偏った規則が忘れ去られるには一定の時間が必要になるだろう」と警鐘を鳴らす。

コース上を歩き回れる審判員がいれば、今回のような問題を防げるかと問われたリドリーは、既に来年のことを考えているかのように、「今回の件は、今後どういう対応が取れるのか、他に取るべき選択肢は無かったのかの参考にしたい」と返答した。

結果ウッズは最終日に首位タイでプレーオフに進出したスコットとカブレラと4打差でフィニッシュ。ペナルティが結果に影響を及ぼさなかったものの、ローズは、既に過敏で、鋭い指摘を受けているルール機構に対する前後関係を踏まえれば、問題となったのは必至で、「今回の問題で一番残念だった点は、ゴルフのルールが複雑極まりないと認識され、問題を治めた手法により人々のゴルフへの関心が薄まってしまうということ」と指摘した。

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