ルールトラブル 閉ざされたドアの裏に隠されたもの/マスターズレビュー
Golf World(2013年4月22日号)texted by Geoff Shackelford
水曜日には年に一度恒例となっているペインの会見が行われ、普段から愛想の良いオーガスタナショナル代表は、今年から初の女性メンバーが加わった点について「素晴らしいこと」と興奮した様子でコメントした。しかし質問の内容が、以前からUSGAとR&Aの見解が発表されるまでは正式なコメントを発表しないと明言していたアンカーリング禁止の提案について及ぶと、次の様に返答した。
「我々は大会を開催するゴルフクラブであって、そのような問題に対する影響が出るような発言はするべきではないと思っている」。そこに柔和な表情はなく、鋭く変わった眼光が集まったライター達に向けられた。ペインは手元にあるノートに目をやり、慎重に言葉を選びつつ、故意的に曖昧に聞こえるよう答えた。「ルール機構側が公に発表している見解について決断を下していないという事実を考えるべき。この時点では意見を言うよりも、お互いの見解が一致すれば良いと願うと言うに留めるべきだ」。
ペインが曖昧な態度を取った理由は、後にオーガスタナショナルが自己の見解を差し控えているという件に詳しいルールオフィシャル関係者により、土壇場でUSGAとR&Aの政治的関与によるものと明らかになった。ゴルフの発展に寄与すると主張するペインは、数選手が参戦を取り止めることになったアPGA・オブ・アメリカ、或いはPGAツアーでの過去ケースが失敗だったという点に事あるごとに影響を受けているとも伝えられている。ペインはルール規則を尊重しているとは言え、R&Aとの連携により締結したアジアパシフィックアマチュアと良好な関係を築いていることも、見解の一致という議論を持ち出す要因なのだろう。こうした問題も、アンカーリング禁止を円満に解決する道を阻害している一因になってしまっている。
トーナメント史上最年少の14歳で出場したグァン・ティンランの快挙が、大会2日目にヨーロッパツアーオフィシャルのジョン・パラマーに傷つけられたとしても、極端に時間を使い、そして4度の注意を受けたにも関わらずプレーのスピードを上げるのを拒否したティンランに1打のペナルティを科したことに異論は起こらなかった。しかし予選通過をかけて必死にプレーしている弱冠14歳の少年に対する処罰ということで、ソーシャルメディア上ではルール委員会が政治的な側面でスロープレーに対する罰則を規定したと問題視された。
パラマーは14ものゴルフ団体を代表するルールオフィシャルで、中立的な立場のオーガスタナショナルの競技委員でもある。しかしオーガスタナショナルではコースの景観を損ねるという理由から、コース内を自由に歩けるオフィシャル(審判員)の存在を認めていない。コース内に入るのを許可されているのは、選手、キャディ、そしてテレビ関係者のみとなっている。このように最小人数だけで遣り繰りしようとする手法が、技量の高い審判員であってもルールに関する不運に遭う原因と密かに言われている。そして2013年のマスターズでウッズの近くにルールを確認する審判員がいなかったことで、それが現実のものとなった。
コース内を歩くオフィシャルの存在を禁じているメジャー大会はマスターズだけだ。R&A主催の全英オープンでは1990年から、USGA主催の全米オープンでは1991年から、そしてPGA・オブ・アメリカ主催の全米プロゴルフ選手権では1996年から最終ラウンドのラスト5グル―プからコース内の審判員を認めている。
PGAのデイヴィッド・プライスは、ウィスリングストレイツで開催された2010年の「全米プロゴルフ世界選手権」でダスティン・ジョンソンが経験した不運を防ぐことが出来なかったとして、不名誉を与えられた審判として知られている。ジョンソンは同大会最終日にバンカーにクラブを接地させたとしてペナルティを科されたが、プライスこそジョンソンが助言を求めるべき対象だったからだ。