【WORLD】伝統との決別 オーガスタナショナルに初の女性会員が誕生
Golf World(2012年8月27日号)GW bunker texted by Bill Fields
記者からはメンバーに関する厳しい質問もあったが、ペイン氏は前任のジョンソン氏がそうであったように、ある質問に対しても「もう1度繰り返すが、メンバーに関しては答えない」と断言。しかし、かつてバーク氏が女性メンバーを認めるよう強く世間に訴えた時と同じだけの勢いが生まれ、今回はアメリカのバラク・オバマ大統領、そして共和党から大統領選挙に出馬するミット・ロムニー氏らも、オーガスタナショナルは女性メンバーを加えるべきと口を揃えていた。
意見はいくつかに分かれ、ジョンソン氏が提唱した男性のみの伝統を守るべきという声を挙げた保守派は、ジョンソン氏がこの問題が熱を帯びた2002~03年に語った以下の内容を反論として主張した。「我々には、自分達のコースを組織する上で、道徳的、そして法的にも、自分達が望む手法を取る権利を持っている」。だが、いかにプライベートクラブであったとしても、オーガスタナショナルは、世界で最も一般に知られているスポーツイベントの恩恵を得る為に、21世紀にはこれまでとは違うスタンダードを作るべきという意見も挙がっていた。
もし1つ、オーガスタナショナルが“男性メンバーオンリー”ということを主張し続けた要因があるとすれば、ショール・クリーク人種差別論争以降、PGAが公にオーガスタの規約を批判したことがなかったという事実にあるかもしれない。マスターズはツアーが運営しているわけではなく、外部の協力も得ている為、女性メンバーの欠如に関し何のクレームも無かったからという見方も出来るだろう。
ショール・クリークの騒動を鎮静化させる為、オーガスタナショナルは、史上初の黒人会員としてロン・タウンセンドを迎えた。タウンセンドは1991年のマスターズに姿をみせたが、それ以後も女性メンバーの受け入れは大きな問題となっていた。
そこで会員となったライス氏だが、ここ数年の彼女とゴルフ界の関わりを見れば、自然なチョイスだったと言える。しかし、ムーア氏に関しては、ライス氏よりも更に遡り、会員候補に挙げられていたのだ。何故なら、彼女はジョンソン氏と長年の友人関係にあり、共にサウスカロライナ出身、そして彼女からの寄付を受けた後、ビジネススクールの命名までジョンソン氏が請け負ったからだ。ムーア氏は、1998年にサウスカロライナの地元メディア、シャーロット・オブザーバーの取材を受け、ジョンソン氏について「彼は進歩主義の男。ただし、私がそう言ったとは秘密ね」と語っている。
オーガスタナショナルを名誉退職したジョンソン氏は、伝統を打ち破ったことを歓迎し、新聞の取材に対し、「これ以上の喜びは無い」、「ダーラ・ムーア氏は私の長年の友人だし、コンドリーザ・ライス女史と共に、私と同じくらいクラブを好きになってくれるだろう」という声明文を発表している。
そんなジョンソン氏の天敵バーク氏は、女性メンバー誕生について、「信じられないことね。10年かかったけれど、私達の主張が勝ったのよ。これで男性諸君も20世紀、いや失礼、21世紀に来られたということ。この業界の女性にとっては金字塔よ」と語った。
ペイン氏の反応は、メンバー選定にかかった期間についてのもので、ライス氏、そしてムーア氏を新メンバーに迎えたことにより、アメリカで最もアイコン的プライベートクラブが大きな転換期を迎えるとしている。「我々は、オーガスタナショナルのメンバー候補となった人物の審査が出来る幸運な立場にいます。どの候補者に対しても、ゆっくりと時間をかけて熟考し、自信を持って迎え入れています。今回コンドリーザとダーラの選考も同様です」。
ともかく、象徴的に考えたとしても、オーガスタナショナルは変わったと言えるだろう。
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