【WORLD】伝統との決別 オーガスタナショナルに初の女性会員が誕生
Golf World(2012年8月27日号)GW bunker texted by Bill Fields
元米国国務長官コンドリーザ・ライス女史、投資家のダーラ・ムーア女史の両名が、オーガスタナショナルGC史上初となる女性メンバーに選出された。長きに渡った論争に終止符が打たれたのだ。
罵りに近い言葉とともに10年前から始まった女性メンバーに関する議論も、終わってみれば寛大なハート、そして偉業として称えられる形で幕を閉じた。「コンドリーザ・ライス元長官、そしてダーラ・ムーア氏をオーガスタナショナルGCのメンバーとして迎えることができ、嬉しく思います」とは、オーガスタナショナル、そしてマスターズ会長のビリー・ペイン氏が、8月20日に行われた、クラブ史上80年で初となる女性メンバー就任会見で発した言葉だ。
57歳のライス氏は、ジョージ・W・ブッシュ政権下で黒人女性として史上初となる国務長官に就任。2009年には彼女の地元でありアラバマ州バーミンガムにあるショール・クリークのメンバーとなった。同コースの創設者である故ホール・トンプソン氏も、同じくオーガスタナショナルのメンバーだった。ショール・クリークは1990年に「全米プロゴルフ選手権」を開催して以降、マイノリティメンバー不足に陥り、その後20年経ってプロの大会を再び開催するようになり、ライス氏はここ2年、同コースが舞台となっているリージョンズ・トラディションの名誉チェアパーソンとなっている。
金融界の大物として知られるムーア氏(58歳)は、サウスカロライナ州レイク・シティー出身で、投資会社レインウォーターのパートナーを務めている。夫はレインウォーター創始者のリチャード・レインウォーター氏で、1998年にはフォーチュン誌が選ぶ、ビジネス界で最もパワフルな権力を持つ女性50人に選ばれた。出身のサウスカロライナ大のビジネススクールは、1998年にムーア氏が2500万ドル(約19億4300万円)もの多額な寄付をしたことでダーラ・ムーア・ビジネス学校と名称が改められたほどだ。
何年もマスターズを見てきたファンの多くも、オーガスタナショナルは、女性メンバーの選出に慎重姿勢をみせていると思いこんでいた部分はあっただろう。将来的な希望として、大会が開催される4月、ビッグオークの下でグリーンジャケットを着た女性メンバーが現れ、歴史が変わったと思う瞬間が訪れる、と。今回、そうしたクラブの伝統を打ち破り、ライス氏とムーア氏をメンバーとして迎え入れ、今秋にグリーンジャケットを進呈する。2002年、当時全米女性団体会長だったマーサ・バーク氏が女性メンバーを受け入れるよう強く求めていた保守的な組織が、ようやく開けた組織に変わったということなのだろう。
当時、ペイン会長の前任者だったフーティー・ジョンソン氏は、オーガスタナショナルはプライベートコースであることを強調し、規約変更を強要されるものではないと主張。バーク氏の要望を断固拒否する構えをみせた。しかし、バーク氏の強い訴えかけは2003年のマスターズ開催時期にも行われ、03、04年は大会スポンサーが減少したことを受け、テレビ中継もコマーシャル無しで放送された。
オーガスタナショナルでは男性のみがメンバーになれるという議論は、それ以降徐々に収まりつつあったが、今年春にバージニア・ロメッティ氏がIBMのCEOに就任したことで風向きが再び変わる。IBMは、マスターズのメインスポンサーだったからだ。これまでの統計上、スポンサー会社のCEOはクラブメンバーとして迎え入れられてきた。ロメッティ氏はコースに招待されたものの、着ていたジャケットの色はグリーンではなく、ピンクだった。
ここで疑問視されるのは、ロメッティ氏が、前任者に代わってメンバーとして受け入れられたかどうか。大会前の記者会見で同席したペイン氏は、記者の前で「ゴルフ界が成長していないことを危惧している」と発言。更にマスターズの技術面、出場選手の世代、そして国際的イニシアチブについて言及した後、話題は更に広範囲に渡った。
4月4日の会見でペイン氏は、「我々は更に良い組織となれるはず。既に基礎が出来ている組織として、更に良い形を作れるはずです。話題となっている問題はありますが、自分達が発展していく為、そしてモチベーションを上げる為の精鋭グループを結集できたと思っています。自分達の力を集めれば、子供たちの世代、そして他の世代にゴルフの魅力を伝え、競技人口を増やす可能性を広げられるでしょう」と語った。