米国男子ツアー

【WORLD】前進 タイガーの“復活優勝”/シェブロン・ワールドチャレンジ

2011/12/27 12:02

Golf World(2011年12月19日号)texted by Ron Sirak

タイガーは自身がホストを務めるチャリティ大会で約2年ぶりの優勝を果たした。復活への道をゆっくりと、ゆっくりと歩んでいる。(写真は2011年の全米プロゴルフ選手権)

2年もの間、未勝利に終わったタイガー・ウッズは、この期間について「過程」という言葉を繰り返し使っている。特に、2010年8月からコーチをショーン・フォーリーに代え、スイングの改善に取り組んで以降は尚更だ。

そして今年12月4日に残した「シェブロン・ワールド・チャレンジ」優勝という結果も、ウッズに言わせれば完全復活への「過程」だという。同大会はウッズ自身がホストとなっている大会で、参加選手も18人、しかも出場するだけでそれなりの金額を手に出来る以上、全選手が血眼に優勝を目指すというわけではない。しかしウッズは、まだまだ勝てる能力があるということを結果で示した。そして、2008年6月15日に「全米オープン」を制して以降達成していないメジャータイトル獲得も、現実として考えられる状態に戻りつつある。

プライベート問題が明るみになった2009年11月27日以降、ウッズは怪我や不安定な精神状態、スイングのメカニズムの崩壊、そしてパターへの信頼もなくなる等、踏んだり蹴ったりの時期を過ごしてきた。ここまで落ちぶれたウッズについて楽観的になれている要因は、シャーウッドCCでの最終日、17、18番ホールで連続バーディを決め、ザック・ジョンソンに1打差で勝利し、故障していた左膝の状態に改善がみられ、改造に取り組んできた新しいスイングが一応様になっていたからだ。ティショットの飛距離もここ数年に比べ伸びていたが、連続バーディを記録した最終2ホールで披露した見事なアイアンショットも、彼の復活が期待出来る要因の1つと言える。

しかしながら、まだスイングが完成されたわけではなく、ところどころミスショットやミスパットがみられる等、まだまだ完全復活という結論を出すには、証明しなければならないことも少なくはない。たとえば木曜日の16番ではドライバーでテンプラ気味のショットを打ち、金曜日の15番と翌土曜日の16番では池ポチャ。そして6フィート以内の距離からのパットも8本外す等、完全復活には程遠い。

次にウッズが出場するのは、来年1月26日から29日にアブダビで開催される欧州ツアー「アブダビHSBCゴルフ選手権」で、アメリカ本土に至っては2月9日から12日に開催される「AT&Tペブルビーチ・ナショナルプロアマトーナメント」が一番近い大会ということになる。シャーウッドでの最終日、メディアルームにシャンパンをふるまう直前、ウッズの言葉からは、はっきりとした苛立ちが見て取れた。

スイングが非常に強かった南カリフォルニアの風の影響を受け、69でラウンドし通算10アンダーでフィニッシュしたウッズは「来年は自分にとって良いシーズンになると思うね」。「良いシーズンを送ることができれば、カムバック・オブ・ザ・イヤーの候補になるかもしれない。だから興奮してるよ」と復活を疑問視するメディアに釘を刺した。

勝てないことへの質問にはうんざりしていたのだろうか?「そうだね。確かにそうかもしれない。特に君達マスコミとの戦いからそう感じたこともあったさ」と切り返すと、「最初は半年勝てない時期が続いて、1年、1年半、それで2年も経ってしまった。優勝は気分が良いけれど、そのためだけにプレーしているわけではないし、マスコミの為にプレーしているわけでもない。僕はただ勝ちたいんだ」と、復帰への強い意欲を語った。

ウッズの現状を知る基準としては、彼の周辺にいる人物の声に耳を傾けてみるべきかもしれない。例えば、69を記録した木曜日にペアを組んだスティーブ・ストリッカーは、「パターも以前より安定していたし、ショットもドライバーも改善されていた。自信を取り戻しているような印象を受けたし、昔のタイガーに戻ってきたんじゃないかな。僕らもかつてのタイガーに戻ったことが嬉しくてね。やっぱり彼には大会に出場して、プレーしてもらいたいから」と、太鼓判を押している。

また、同大会に出場したマット・クーチャーもウッズのスイングの変化に気付いた1人。ウッズが3位でフィニッシュした「エミレーツ・オーストラリアン・オープン」の練習ラウンドから変化に気付いていたというクーチャーは、「飛距離を取り戻しつつあるようだった。これまでは飛距離も正確性も失っていた感じだった。彼を見ていても苦しんでいる様子が伝わってきていたからね。この1、2年でここまで飛距離が落ちたのかと思って、驚いたくらいだったから」と語った。

最終日16番まで1打差でリードしていたジョンソンの反応は、次のようなものだった。「(ウッズの復活は)予想していたよ。来年はコンディションが万全なら、素晴らしいシーズンを送れると思うね。僕がこれまでプレーした選手の中でも、彼はベストな存在。どうやって勝つか、勝つためには何をすれば良いかを熟知した人間だからね」。

ジョンソンが言うように、ウッズ完全復活の鍵はコンディションかもしれない。ウッズはスイング改造できる技術があることを何度か証明した。そして、ミスパットにより本来なら6打差くらいで勝てていたところだったが、それでも勝負どころで2連続バーディを決めた。それは、かつてのタイガーのようだった。

ウッズは、全米プロゴルフ選手権の2週間後までは、練習ラウンドで練習の球数を制限されていたことを告白した上で、「自分が思うプレーをするためには、コンディションが凄く重要になってくる。健康でかつての強さや爆発力を取り戻すには練習するのが良い。全てはそこから始まるんだ。ようやくまともな練習が出来るようになったんだ」と話した。
そしてウッズは、ひと時の過程ではなく現在について話した。「最もプレッシャーがかかった場面、つまりラスト2ホールでは、今週を通して最高のショットを3本打てた。それが何よりも嬉しかったんだ」。

ウッズの復活は、ゴルフ界にとっても朗報。タイガーが完全復活したかを判断するには時期尚早だろうが、その答えを明らかにするのも、来シーズンの楽しみの1つとなるに違いない。

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