<佐渡充高の選手名鑑 101>ハリス・イングリッシュ
■ 昨季2勝のハリス・イングリッシュに注目!
2014年もさらなる活躍が期待されるのは、191センチと長身のハリス・イングリッシュ(23)だ。2013年6月の「フェデックス セントジュード クラシック」でフィル・ミケルソン、スコット・スターリングスの追撃をかわし、逆転で初優勝を飾った。5カ月後の11月にも、メキシコで開催された「OHLクラシック at マヤコバ」で2勝目と、一気に頭角を現した。同試合優勝は飛行機の移動でドライバーが破損し、ビリー・ホーシェルが予備に持っていたものを借り、パターも大学時代の懐かしいパターに変えてプレーした。このトラブルで新しい道具を使わざるを得なくなったが、逆にフレッシュな気持ちで挑めたとプラスにとらえたことが功を奏したようだった。
■ 憧れはフレディ
イングリッシュは、ジョージア州南部にあるトーマスビルという小さな町の出身で、サザンボーイらしく朗らかで口調もゆったり、黙々と忍耐と努力を重ね、目標を成し遂げるタイプの選手だ。少年時代は自宅から車で約20分のところにある、街唯一のゴルフ場で練習を重ねてきた。休みの日は母の送迎で夜明けから日没までプレー三昧でメキメキ上達し、多くの仲間や競争相手もでき、いつしかプロになることを夢見るようになっていった。10歳の頃はタイガー・ウッズが全盛期で、彼の影響を大きく受け育った。憧れの選手はフレディの愛称で人気のフレッド・カプルスだ。「マスターズ」優勝、「ザ・プレジデンツカップ」米国キャプテンを務めて勝利へと導いた。自己主張を抑えた控えめな性格だが、ひとたびプレーすると別人のごとくアグレッシブなところが自分に重なると感じてきたからだ。
■ 89年デュオのイングリッシュとヘンリー
イングリッシュは、今田竜二やバッバ・ワトソンら多くの選手を輩出してきた強豪校ジョージア大学に進学。同じジョージア出身で、10歳の頃からの仲間でもある同じ年齢のラッセル・ヘンリーと1年の頃から主力選手として活躍。強力コンビはチームの平均スコアを飛躍的に向上させたほど。2人はアマチュアの大学時代に、ウェブドットコムツアーで優勝を飾り注目を浴びた。イングリッシュよりも1年遅れでPGAツアーに参戦したヘンリーが、昨季の「ソニーオープン」でツアー初出場にして初優勝という快挙を達成し、初優勝に関しては先を越されてしまった。そのヘンリーの活躍に刺激されたのか、「セントジュード-」で初優勝を飾り、ヘンリーに追いついたと思ったら、2013-14年シーズンに入った「OHL-」で2勝目を挙げてヘンリーに差を付けた。2人は本当に刺激し合う良きライバルと言っていい。
■ 「頼れる大先輩 S.ストリッカーとD.ラブIII」
活躍の突破口はキャディだった。2011年の「全英オープン」でスティーブ・ストリッカーと練習ラウンドをした時、彼の専属キャディ、ジミー・ジョンソン(55)の仕事ぶりに感銘を受けた。ストリッカーは試合限定のスケジュールで転戦することにしたので、空いた週にぜひキャディに!と懇願し実現した。ジョンソンは穏やかな性格で、18年のキャディ歴と、17年の選手歴という2つの豊富で稀なキャリアを持つ逸材だった。南アフリカ出身でアーニー・エルスの成長をアマチュア時代からよく知るなど、育成の知恵袋でもあり、イングリッシュが求める理想のキャディだった。ジョンソンもイングリッシュの才能を評価し、ストリッカーの配慮も得て、昨年3月にコンビを結成。すると初戦からいきなりトップ10に入る(7位)コンビネーションを見せた。
技術のブラッシュアップは、「全米オープン」覇者のルーカス・グローバー、カイル・スタンリーらを育てたコーチのマイク・テーラーに3年前から指導を受けはじめた。じっくり指導を受けるため、テーラーの練習施設があるシーアイランドに引っ越したほどだ。同地は今では15人以上の選手たちが住む一大拠点。ボス格はデービス・ラブIIIで、釣りやパドルボードを一緒に楽しむそうだが、なかなか先輩たちに勝てないとか。イングリッシュは、優しく、手ごわい先輩たちに可愛がられ、日々たくましく成長しているところだ。