2013年 ISPSハンダ W杯ゴルフ

2人で1つ:デイとスコットがオーストラリアにワールドカップをもたらす

2013/11/25 12:12
ダブル優勝のジェイソン・デイはオーストラリアの私設応援団「ファナティクス」の祝福を受けた(Getty Images)

親族を襲った不幸により出場が危ぶまれていたジェイソン・デイが、「ISPSワールドカップ」最終日に見事な優勝を果たし、3年以上のブランクを経て感動的なタイトルを獲得した。

デイは終盤の16番で、2メートルのパーパットを決めて、ボギーを叩いたトーマス・ビヨーン(デンマーク)を逆転した。最終日を「70」、通算10アンダー「274」でホールアウトしたデイは、後半2ボギーで失速し、「71」でフィニッシュしたビヨーンに2打差をつけて勝利した。

デイにとっては5週間ぶりのトーナメント出場。わずか2週間前にフィリピンを直撃した大型台風によって、祖母を含む8人の親族を亡くしたばかりでの大会だった。

30年前にフィリピンからオーストラリアに移住したデイの母親は、愛娘と共にロイヤルメルボルンの最終18番のグリーン外で見守っていた。優勝を決めたデイは2人とハグを交わしてから、スコアカードにサインをしにテントへ向かった。

「この大会は本当に驚くべき出来でした。母や家族の渾身的なサポートに、結果で応えることが出来て本当に幸せです。努力が実を結んだことを実感できたし、メルボルンで優勝できた喜びを感じています」

「先週起きたこと(悲劇)に比べれば、この大会に出て優勝を目指すプレッシャーは、容易なことでした。心からここでプレーしたい、と願って参加しただけに、優勝できて良かったです」

デイが勝者となったが、ビヨーンの健闘がかすむことはない。

「今日のゴルフは間違いなく残念なものだった。それほど良いプレーが出来なかったからね」と、ビヨーン。「しかしジェイソン(デイ)の優勝には敬意を表したい。彼は辛い時期を乗り越え、この大会に出場して優勝をつかんだ。みんなが“良かった”と思える結果だね」と語った。

デイが最後に優勝した大会は、2010年PGAツアーの「HPバイロンネルソン選手権」だった。2011年以降、メジャー大会で4度のトップ5入りがあったものの、彼はことごとく優勝を逃してきた。

最終日に「66」をマークしたアダム・スコットは、首位から3打差の3位でフィニッシュした。スコットは3週連続の優勝を目指したが、初日の12番で「9」を叩くなど「75」を記録してしまい、常に追いかける苦しい展開となってしまった。

個人戦で優勝したデイは、賞金120万ドル(約1.2億円)を獲得し、オーストラリアの国別対抗戦での優勝にも大きく貢献した。デイとスコットの2人は、共に最終日にイーグルを奪うラウンドで、国別対抗戦の優勝賞金60万ドル(約6,000万円)も分け合った。

米国のマット・クーチャーは「71」でフィニッシュし、個人戦では首位から3打差の4位だった。石川遼(最終日は「69」)とタイのキラデク・アフィバーンラト(同「70」)は、いずれも首位から7打差の5位タイに終わった。

スコアに波のあったデイは、ビヨーンがバーディを奪った5番(パー3)では、バンカーに打ち込んでボギーとし、この時点ではまだ首位タイに並ばれていた。

しかし6番では、80ヤードから放ったウェッジショットがグリーンを捕らえ、バウンドしたボールがそのままカップインして見事なイーグル。一方のビヨーンは、ドライバーをラフに打ち込んでボギーとし、一気に3打差のリードがついた。

デイが6番のグリーン上でボールを取り出す時、黄色と緑色のオーストラリアカラーに身を包んだ私設応援団「ファナティクス」からは、大きな歓声が巻き起こった。デイはギャラリーに向かってボールをプレゼントした。続く7番でもビヨーンが3パットのボギーを叩いたため、デイのリードは4打差に広がった。

9番で約4メートルのパーセーブに成功したデイは、4打差で折り返しを迎えた。しかし続く10番でトラブルに見舞われた。ティショットを左ラフに落ち込んだ後、安全策のチップショットではなく、フェアウェイへ戻そうと強振した。しかしボールは再びラフへ入ってしまった。

3打目でフェアウェイに戻したデイは、4打目でようやくグリーンオン。そこから2パットを要してダブルボギーとなってしまった。これで2位のスコット、ビヨーンとの差は2打に縮まった。ビヨーンは11番と13番でバーディを奪い再浮上するかに思えたが、16番で痛恨のボギーを叩いた。

最終日の最初のホールでいきなりイーグルスタートを切ったスコットは、4月の「マスターズ」を制して以来、初めての地元凱旋で、「オーストラリアPGA選手権」と「オーストラリアンマスターズ」を制覇している。来週、ロイヤルシドニーの舞台でオーストラリア国内の「3冠達成」に挑むこととなる。

「今日は信じられない1日だった。ジェイソン(・デイ)のお陰さ。今週の彼はすばらしいプレーだったよ」と、スコットは振り返った。

ワールドカップで開催国が優勝するのは、南アフリカ・ケープタウンで行われた1996年大会で、アーニー・エルスとウェイン・ウェストナーのペアが優勝して以来だった。

通算17アンダーを記録したオーストラリアチームは、2位のクーチャー、ケビン・ストリ―ルマン(個人戦は8位タイ、最終日は「74」)の米国チームに10打差をつけた。通算5アンダーのデンマークと日本が、国別対抗戦の3位タイに入った。

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