波乱に始まり波乱で終わるマスターズ
By Mike McAllister, PGATOUR.COM
ジョージア州オーガスタ? 第77回マスターズですでに起こっているこれまでの不思議ないきさつを踏まえると、オーガスタナショナルの日曜日はまた新たなドラマが生みだされ、私たちは驚かされるのだろうか?
最終ラウンドのバック9でドラマが起きない方が驚きだろう。マスターズは感動の波乱劇で知られている。4月第2日曜の最終日、そびえ立つ松、咲き誇るハナミズキ、そして30種類のツツジに囲まれた中、それは起こるのだ。
この3日間、14歳のグァン・ティンランがスロープレーによるペナルティを受けながらも歴史的な快進撃を見せたり、フィル・ミケルソンが4度の優勝を予感させたり、といった話題が盛り上がった。最終日を控えた今、賜杯を手にするのは誰になるのか。さらなるドラマが期待されている。
最終18ホールに向けて、首位タイでスタートするのは、ブラント・スネデカーとアンヘル・カブレラの2人。リーダーボードのすぐ後につけているのは、アダム・スコット、マーク・レイシュマン、ジェイソン・デイのオーストラリア3人衆だ。
スネデカーとカブレラにアドバンテージがあることは言うまでもないことだ。二人が最終組でプレーをすることは、現地CBS局で数回紹介されたが、マスターズの歴史上、ここ22度の大会中19度で、最終組から覇者が生まれている。
とはいえ一方で、その傾向はここ2年間には当てはまっておらず、スネデカーとカブレラは、優勝ジャケットの為にクローゼットを空ける準備をするのは、時期尚早とも言える。
フェデックスカップ・チャンピオンのスネデカーにとって、首位をキープするのはメジャー3大会でこれが2度目。1度目は昨年の全英オープンだ。この時は、第2ラウンドを終えて首位だったが最終的には3位タイに終わった。
メジャー優勝という快挙を視野に収めるスネデカー。早口なテネシー出身の彼は、自分がキャリアにおける重要なステップに立たされているとわかっている。
「この時にために人生を懸けてきた」とスネデカーは語る。
一方、カブレラにとってはおなじみの境地だ。4年前は、第3ラウンドを終え首位タイにつけると、プレーオフの2度目のエキストラホールで優勝した。カブレラにとって唯一の全米ツアー優勝は、2007年の全米オープンである。
アルゼンチン人で初めてメジャー大会を制したカブレラは、メジャー大会で勝利を重ねることを目指していることは疑いようもない。2009年とは異なり、迫り来るライバルに影響を受けることは無いだろう。「2009年、私は不安で緊張していた」と、スネデカーと同じ3アンダー「69」で終えた土曜日に彼は通訳を介して伝えた。「しかし今はとても落ち着いている。明日どうするべきかはわかっている」と語った。
スネデカーとカブレラは最終日、オーストラリア勢の追撃を受けるだろう。
これまでオーストラリア人はマスターズで優勝したことがない(これもCBSで紹介されただろうが)。2年前の大会では、スコットとデイがわずか2打で及ばず。シャール・シュワルツェルが両オーストラリア人をかわして優勝した。スコットとデイは当時、最終日に同組でプレーした。今回、デイが3日目の18番ホールでボギーを叩いていなければ、再びペアを組むはずだった。
一方で、これまでメジャー大会の出場経験はわずか8度、25位以内にランクインしたこともない別のオーストラリア人、リーシュマンが浮上した。
レイシュマンは、3日目をイープンバーの「72」でデイと並び、首位まで2打差とすると、その夜、アメリカ人の妻オードリーと息子ハーヴェイ君と一緒に、チキン・クレセント・ロールを一緒に食べに行く予定を立てたという。「好物のひとつなんだ」とレイシュマンは言う。
スコットの夕食は言わずもがなだが(そこまで典型的でなければオーストラリア人が日ごろ食べるベジマイト・サンドイッチだろうか)、ともあれ最終日はオーストラリア人初のマスターズ優勝へと挑む。
スコットは、メジャー大会でタイトル獲得まであと少しのところにいる。2011年のマスターズでは善戦し(2位タイ)、昨季の全英オープンではわずかに及ばなかった(2位に終わった)。全英オープンでは、最終日に4打差のリードを奪っていたものの、4連続ボギーを叩き、タイトル獲得のチャンスをふいにしてしまった。
経験から学んだスコットは今、首位までは1打差の位置にいる。オーストラリア人初の優勝は目前だ。それに、たとえスコットが達成できなくとも、レイシュマンとデイも控えている。「この状況をオーストラリア人は誇りに思うだろうね。スポーツ好きなオージーだから、スポーツ大国として新たな歴史に名を刻むことを待ち望んでいるはずだ」とスコットは語り、「勝ち残ったオーストラリア時のひとりとして、明日狙うものはただ一つ(優勝)だ。間違いないよ」と意気込みを語った。
もちろん、優勝を狙うのは首位タイの二人とオーストラリア勢だけではない。他にも多くの選手が、勢いに乗ったり、幸運を期待したりしながら、脇からタイトル獲得を待ち望む。
マット・クーチャー、ティム・クラーク、タイガー・ウッズの3選手は、プレーヤーズ・チャンピオンシップで優勝を経験しているが、8位内につけている。クーチャーとクラークはメジャー大会で優勝した経験はない。一方、何度となく優勝をしているウッズは、議論をかもした15番ホールで2罰打を科されたが、なおも優勝をあきらめていない。これにより、タイガーは首位から4打差で後を追う。
「優勝するには最高のショットをするしかない」と、タイガーは意気込む。
タイガーは、こうした優勝争いの状況には慣れているだろうが、おそらく優勝には手が届かないとみられる。というのも、1991年以来、マスターズ優勝者は最終ラウンドで4位タイ以内からは生まれていないからだ。タイガーは現在7位タイ。歴史によると、タイガーは優勝には及ばない。
しかし、大会期間中は予想外のことが起こり続けている。この歴史も幕を閉じるかもしれない。