R.グーセン:自分のなかで何かが崩れた日
タイガー・ウッズと互角に戦えることを期待できたとすれば、それはレティーフ・グーセンだった。3日間、60台で回った唯一のプレイヤーとしてマスターズ・ディフェンディングチャンピオンと並ぶ11アンダーで日曜日を最終組で迎えたのだ。
グーセンはいま、世界でもっともホットなプレイヤーであるといってもいいだろう。去年6月の全米オープンを制して以来、世界の3つの異なるツアーで合計6勝をあげているのだから。そしてグーセンは世界で最もクールなプレイヤーである。少なくともプレーぶりはそう見える。
3ラウンド目が終わった時点で、落ち着き払ったこの南アフリカのプレイヤーを評してビジェイ・シンが「レティーフは何も悩まずにプレーしていますよ。心拍数が100を超えることは滅多にないのでは」と言っていた。
しかし、4月14日の最終ラウンドでは何かがはずれてしまっただった。グーセンは1番、4番、そして8番とボギーにしてウッズから5打差に後退。そこまでにスリーパットが3回。
自身、自分の中で何かが崩れたのがわかっていた。グーセンは言った。
「きょうは本当にアイアンがダメで、まったくバーディのチャンスをつくることができませんでした。全部、引っかけていました。体をインサイドに残せないのでみんな左へ引っぱってしまうのです。1番ではティショットを引っかけてしまいました。3番か4番でもそうでしたし、毎ホール、そんな調子だったのです」
それでもグーセンのティショットは11回もフェアウエイを捉えていた。前日までの3日間よりも多い。グリーンを捉える率も18の13。72ホールトータルでも同じ数字になるが72.2%という割合である。違いはパッティングで、日曜日は34パット。2日目と3日目が27、そして初日が26パットだった。
「つねに10メートルのパットでした。あのグリーンでその長さのパットを入れるのは容易じゃない」
グーセンはそれでも15番、16番でなんとかバーディをものにし、フィル・ミケルソンをおさえて2位の座におさまったが、6番ホールでウッズがチップインのバーディを決めて13アンダーにした時点で、追いつくチャンスは誰にもなくなったとグーセンは言う。
「あれ以降、誰ひとりとして彼にプレッシャーをかけることができなくなりました。
彼としてはあとは流していけばよかった。攻めなくてもよかったわけです。すべてのホールでただ安全な位置に打っていったというわけです」
「アイアンを少し立て直す必要があります。これから7週間はヨーロッパツアー行って、全米オープンの前週のウェストチェスター(ビュイック・クラシック)に戻って来るつもりです」
世界のゴルフシーンで頂点に躍り出てきたグーセンの大きな支えとなったのはメンタルコーチであるヨス・ファンスティファウト(Jos Vanstiphout)とのトレーニングだが、ファンスティファウトは教え子が優勝を逃したことをありのままに受け取っている。
「誰かが死んだわけではありません。彼は素晴らしかった。神様ではないのですからダメな日もある。ただそれだけのことです。彼は人間なんですから」 (GW)