2014年 全米プロゴルフ選手権

このスポーツマンシップはすごい!勝者マキロイが感激した理由

2014/08/12 09:19
最終組に2打目を打たせるため、18番グリーン脇に移動するミケルソンとファウラー。優勝争いの中で見られた珍しい光景だった

海外男子メジャー「全米プロゴルフ選手権」を制したロリー・マキロイは、闇夜に包まれた最終18番グリーンで、1組前を回り、僅差の優勝争いを演じたフィル・ミケルソンリッキー・ファウラーに何度も感謝の言葉を贈った。彼らが最終ホールで示した、スポーツマンシップに対してだ。

豪雨による中断が響き、最終組のマキロイがスタートしたのは午後4時19分。バックナインに入った頃には夕闇が忍び寄り、刻々とその濃さを増していく。終盤は1打を争うミスの許されない展開となっただけに、進行が遅れ、日没サスペンデッドを覚悟した大会関係者も少なくなかった。

薄暮の中、17番のバーディで後続との差を2ストロークに広げたマキロイは、最終18番(パー5)のティグラウンドに上がった。1組前のファウラーとミケルソンはまだティショットを打つ前だった。マキロイの脳裏には「18番ティで待っていたら、どんどん暗くなってしまう」との不安がよぎったという。プロゴルファーとはいえ、調子は日替わりなもの。もしサスペンデッドになって翌月曜日の再開となれば、たった1ホールでも流れが変わるかもしれない。

ところが、ここでマキロイは、ティショットを打ち終えたファウラーから思わぬ言葉を聞く。「合図をしたら(ティショットを)打ってくれ」。進行を早めるため、自分たちが2打目を打つ前にマキロイにティショットを打たせるというのだ。

「(サスペンデッドの)ホーンが鳴ったときに、ティショットさえ打っておけばホールアウトが許されるからね。だから打たせたんだよ」とファウラーはそのシーンを振り返った。

結果的に1打差の2位だったミケルソンと2打差の3位タイに終わったファウラーは、18番ホールで最終組にさらなる配慮も示していた。ファウラーはイーグルパット、ミケルソンは3打目のアプローチを残しながら、わざわざプレーを止めてグリーンを空け、視界のあるうちにマキロイに2打目を打たせていたのだ。そんな気遣いもあり、マキロイは午後9時前に18番をパーでホールアウトして完走。日曜日のうちにカップを掲げることができた。

「彼らの品位や人格をよく表していた行動だった。2人のすばらしいスポーツマンシップに感謝したくて、優勝スピーチで何回も(感謝の言葉を)繰り返したんだ」。

夕闇の中、大詰めを迎えた緊迫の優勝争いと並行して、心温まるサイドストーリーが展開されていた。(ケンタッキー州ルイビル/塚田達也)

■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール

1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。

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