それぞれの思いが交錯する40代たちのシャフト選び
今季は5試合に出場し、棄権1試合を除いた4試合ですべて予選落ち。苦しいシーズン序盤戦を送っている43歳の細川和彦が、メジャーの舞台で別人のようなプレーを見せた。「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」に6バーディ、1ボギーの「67」を記録。5アンダー首位タイスタートを切り、「今日はショットのリズムがすごく良かった」と充実の汗を光らせた。
好転のきっかけになったのは、ドライバーからアイアンまで挿しているカーボンシャフトの硬さを1フレックス下げたことにある。「今週から軟らかいシャフトに替えた。そういう時期かなあ、と思って。ラクに振れるようになったし、もう若い時とはスイングのリズムも違う。それに合わせてシャフトも選ばないといけない」。ハードスペックからの移行は、「亨さんもシャフトを替えていた」という鈴木亨の影響もあった。
今年で48歳を迎えた鈴木に聞けば、シャフト性能に助けを求めるようになったのは昨年ごろから。鈴木は言う。「体がうまく動いてくれたのは45歳くらいまでかな。自分の中でミリ単位で、段々と変わっていくのを感じた」。昨年オフにはカーボンシャフトを差したアイアンもテスト。調整がつかずスチールに戻したが、重量はS400かS200に落とした。「体が動かなければ、シャフトに仕事をしてもらうしかない」との境地ではあるが、前週開催の下部ツアーでは若手たちを相手に優勝。体とシャフトの変化をスムーズに馴染ませながら、まだまだ健在ぶりをアピールしている。
その一方で、2週前の「日本プロ」で7年ぶりの優勝を飾った45歳の手嶋多一は、「ここ10年、シャフトを替えることはあるけれど、硬さや長さは替えていない」という。理由はこうだ。「易しさは求めたい気持ちもあるけれど、それに甘えて自分が振れなくなる恐怖感がある。俺はまだ振れるんだ、と。なるべくなら、そこは守りたいんです」。同年代の藤田寛之もまた、「シャフトのスペックを落とすつもりはないですね」と、手嶋と似た境地にいるのかもしれない。
肉体の衰えとの戦いを強いられながらも、レギュラーツアーの第一線でプレーする40代たち。シャフトに助けを求めなければならない状況や、まだまだ自分の肉体を信じたいというプライド。14本のクラブから、それぞれの思いが透けて見えるようだ。(茨城県笠間市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。