バーディ合戦を目論むトーナメントは是か非か
岐阜県のTOSHIN Golf Club Central Courseで開催された国内男子ツアー「TOSHIN GOLF TOURNAMENT IN Central」は、4日間アンダーパーをマークし続けた藤本佳則が通算24アンダーまでスコアを伸ばしてツアー2勝目を飾った。72ホールの最多アンダーパー記録(26アンダー:1995年三菱ギャラントーナメント=B.ジョーブ、96年日本シリーズ日立カップ:尾崎将司)、最少ストローク記録(260:95年中日クラウンズ=尾崎将司)の更新はならなかったものの、バーディ合戦の様相が続いた。
大会主催者はかねてから「エキサイティングなプレーをギャラリーに提供したい」と、連日ビッグスコアが出るコースセッティングを希望した。石田信文社長は開幕前「優勝スコアは通算30アンダー!」と選手に公言していたとか。丘陵コースは両サイドが崖になっているホールも多く、ひとたび間違えれば大叩きにつながりかねないリスクもあるが、そこはやはりトッププロが力を見せつけた。
総距離は7008ヤードだが、実際は打ち下ろしのホールが多く、その分を差し引くと約6000ヤード台後半といったところ(だからホール間のインターバルには急な上り坂がたくさん!)。4日間で最も易しかった500ヤードの9番(パー5)は、第2打でショートアイアンやウェッジを握る選手も多くいて、平均スコアは4.445と低かった。
ところで、“通算アンダーパー”の数字は、もともとの「パー設定」によって左右されるところも大きい。つまり18ホールが、パー72か、71か、70かというセッティングが大きく関わっている。JGTOの小山俊一トーナメントディレクターによれば、これは「主催者サイドと競技委員の両者で決められる」とのこと。つまり、“通算アンダーパー”の記録は、運営側のちょっとしたさじ加減で動くものだ。
米国PGAツアーでも、優勝スコアが通算20アンダーを越えるトーナメントはざらにあり、昨季シーズンはフィル・ミケルソンが28アンダーで制した「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」を含め7試合(フェデックスカッププレーオフ4試合を含む)。小山ディレクターは「スコアは容易だが、戦いとしては決して容易ではないはず。日本では“難しいコースが、良いコース”と受け取られがちなところもあるんじゃないでしょうか」とも話した。なにせ選手たちにとって平等な条件で行われていることには変わりない。
一方で懸念されたのは、このトーナメントが、翌週に国内メジャーの「日本オープンゴルフ選手権競技」を控えた試合であったということ。ある選手は「パター合戦のようで、我慢が続く来週とは戦い方が全く違うものになる」と2大会を戦う上での精神的なギャップを心配していた。
男子ツアーは現在、9月の「ANAオープン」から最終戦の「日本シリーズJTカップ」までは12試合の連戦中。選手たちは長いシーズンを戦う上で、どこかで休養が必要な選手もいる。今週は米ツアー参戦中の松山英樹を含め、前週までの賞金ランク10位までのうち、5人が欠場した。
米国や欧州、はたまた国内女子ツアーでもメジャーの前週には似たセッティングをコースに施して、トッププレーヤーになんとか(言い方は悪いが)“調整の機会”として、プレーしてもらおうと目論む大会も多い。そういった点で、今大会は色合いの違う独自性を強く発揮していると言えそうだ。
とはいえ、試合数が減少傾向にある男子ツアー。連戦であろうが、多くの選手はなんとかして稼ぐために、トーナメントを選ばず、とにかく出続けなければならない。メジャーとは対極にある激しいバーディ合戦が、その前週に繰り広げられるのも、ツアーの苦しい現状を表しているのかも。(岐阜県加茂郡富加町/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw