最年長勝利を逃した中嶋常幸「まだ、やれる」
中嶋常幸の偉業達成はお預けとなった。茨城県の大洗ゴルフ倶楽部で開催された国内男子ツアー「ダイヤモンドカップゴルフ」最終日。ツアー最年長優勝を狙った58歳はともに首位タイから最終組でスタートした松山英樹に敗れた。
「75」とスコアを落とし、通算5アンダーの6位タイ。敗戦のキーポイントに挙げたのは、この日3つ目のバーディで単独トップに立った直後のミスだった。折り返しの9番パー4。左からの上空の風も利用したカットボールで攻めたティショット。しかし「1ヤードも戻ってこなかった。(回転の)“かけ損ない”」と、ボールはそのまま左の林へと突っ込み、セカンドはフェアウェイに出すだけ。サードでも乗らず、1メートルのボギーパットも外す痛恨のダブルボギーで、早々に首位の座を譲った。
「14番からはエンジンの壊れた船。流されてばかり」。難関ホールが続く終盤は、鹿島灘から吹き付ける風の前に完敗。上がり4ホールで3ボギーを叩いて終戦となった。
2006年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」以来となるツアー通算49勝目、そして尾崎将司が持つ最年長優勝記録(55歳7か月29日、2002年全日空オープン)の更新はならなかった。しかし胸の内の大半が悔しさで埋まる一方で、手応えも確かにあった。「レギュラーツアーで最終日最終組を回れる。まだやれる。やるよ。オレはレギュラーツアーの選手。ジャンボに言っておいて」。夢の続きはまた今度。多くのファンにそんな期待を抱かせる。
だが中嶋が一方で強調したのが、シニア世代の一員としての“責務”だった。「こういうゴルフをしちゃうとね・・・シニアツアーには行きたくないなあ」と苦笑いした後、「でもね、ちゃんと行かないと」と言った。「レギュラー(のキャリアを)を終えた選手たちが『シニアの試合が無くなっちゃった』と、なってはいけないから」―。
レギュラーツアーは次週、試合のないオープンウィーク。しかし中嶋は7日開幕の「~シニアを元気に~KYORAKU MORE SURPRISE CUP 2013」に参戦する予定だ。
見据えるのは、目の前一打や次の試合だけではない。数年先、もっと先。後輩たちの将来の戦いの舞台もその目には映る。中嶋常幸もまた、やはり偉大だった。(茨城県大洗町/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw