キム・ドフン、心強い相棒とともに初勝利なるか
多くの韓国人選手が国内ツアーで活躍を見せている昨今。有力選手として、かねてから名前が挙がっていながらも、なかなか1勝に届かない選手はまだ多い。その中でも特に注目度が高いのがキム・ドフン。2010年の日本参戦以降、今季ここまでの試合も含めトップ10入りは17度。しかしどうも頂点に届かない。
がっしりとした肩幅から繰り出される飛距離が魅力のロングヒッター。今季の平均飛距離は298.85ヤードと全選手中5位につけている。静岡県の太平洋クラブ御殿場コースで開催中の「三井住友VISA太平洋マスターズ」3日目は「68」をマークして通算10アンダー、単独首位の石川遼に1打差の2位タイに迫った。
ところが、その技術の高さをアプローチ、パターといったショートゲームにこそあると称えるのは山根彰キャディだ。
山根さんはかつて谷口徹ら名選手のバッグを担ぎ、昨年はベ・サンムンとのコンビで年間3勝。今季前半戦はサンムンとともに「マスターズ」のほか米ツアーでも戦った。帰国後、夏場の「関西オープン」から新たにタッグを組んでアシストしている。昨年の日本ツアー賞金王よりも3つ若いドフンを「まだまだ、(スケールは)一回りサンムンのほうが大きいですよ。ボールのコントロールが抜群だった」と言う。その一方で、「ドフンは彼に負けないくらい強いボールを打てる」とも評した。
今年、大学を卒業したばかりのドフンも日々、日本語が上達中。この日のラウンド後も「優勝も大事ですが、スコアより自分のプレーリズムを良くして回ることが重要。結果は後から付いてくるはず」と謙虚に言った。「“あと”からついてくる」を「“うしろ”からついてくる」と口にしたのはご愛嬌。平常心で最終日を迎えることを強調した。
心強い相棒も、この新鋭選手に少なからず魅力を感じている様子だ。山根さんは言う。「風や残り距離を伝えるだけじゃなくて、どんなときでも『どんなショットを打つだろうか』って想像をします。ただ、彼ら(トッププロ)は僕が考えられないようなこと(選択)をしたりする。今日は最後のホール、18番のセカンドは6番アイアンだった。僕は5番だと思った。だけど、それでグリーンをオーバーでしょう(結局3オン2パットのパー)。こっちも勉強になります」
石川の背中を同じ最終組で追う最終日。悲願の1勝は果たして届くか。「日本人にも、そういう選手はたくさんいるでしょう?でも彼も、ひとつ勝てば・・・」。2勝、3勝と一気に?その先の言葉は、飲み込んだ。(静岡県御殿場市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw