2019年 マスターズ

ウッズの名場面を演出 オーガスタ16番の緊張感

2019/04/09 11:45
左サイドに池が構える16番。ウッズは池の奥、左サイドからチップインを決めた

4月のメジャー初戦「マスターズ」がいよいよ11日(木)に開幕します。すべてのゴルファーが憧れる会場のジョージア州オーガスタナショナルGCで、今年も熱戦が期待されます。1934年に開場した当地はボビー・ジョーンズとアリスター・マッケンジーの設計で始まり、年々進化を続けています。11番、12番、13番の“アーメンコーナー”はとくに有名ですが、他にも攻略が難しいホールばかり。大会直前のこのコーナーでは3ホール以外にポイントになるホールを5つピックアップして解説します。

■オーガスタナショナルGC 16番パー3(170yd)

手前に池が構える最後のパー3。ホールインワンもよく出るが…

オーガスタでの上がり3ホール。最終日に優勝争いをしていたら、プレーヤーはどんな心理状態でいるでしょうか。ミスはできない。とはいえ、攻め気を失っても行けない。メンタルテストも最終局面に入ります。

さて、ひとつ問題です。グリーンの左手前に大きな池があるこのパー3で、バーディを獲るのにもっとも難しいピンポジションはどこでしょうか。私の考えでは、この池からもっとも遠いサイドに当たる右サイドの奥に切られたときです。

グリーンは右奥と左手前で段に分かれており、全体傾斜が池に向かって下っています。8番前後のミドルアイアンではありますが、一番長い番手を持ち、なおかつ狭いエリアに止まる、正しいスピン量のティショットが必要です。横幅は4yd、タテ幅も5ydほどの狭いエリアに打つ技術を求められるのです。グリーン右奥からのアプローチで寄せるのは、本当に難しい。

アーメンコーナーの12番(パー3)と同様に、風が読みにくいのもこのホールの特徴。右手前のピンは距離が短くなりますが、同じようなショットを打ちたいところです。

青印は予想ピンプレース。ウッズは左奥から左真ん中のカップに向けて決めた

最終日恒例の池に近い左サイドのカップには、傾斜を利用して寄せることができます。歴代最多のこれまで20人がホールインワンを達成したこのパー3は“派手な印象”がありますが、マスターズ史に残るショットが2005年大会のタイガー・ウッズのチップインバーディでしょう。

最終日に優勝争いをしているときに、まずあのティショットが池の奥、グリーン左まで行ってしまったことは、彼らにとって想定外だったはず。アドレナリンが出たのか、風の読み違いか…。いずれにしても大きなミスでした。ところが、それで終わらないのがタイガー。通常、パターでもカップから左に8mくらいに打ち出すような大きなスライスラインを読み切って、カップインさせてしまいました。

Five days until Masters Week.
Verne Lundquist and Lanny Wadkins suspend belief on No. 16 and deliver the signature moment in @TigerWoods’ march towards a fourth Green Jacket in the 2005. pic.twitter.com/euw2j0JmE8

— The Masters (@TheMasters) 2019年4月3日

傾斜を利用して、どのラインを選び、ウェッジでどのくらいスピンを入れて、どこまで突っ込んでいくか(ピンに近いところまで打つか)。スピンをかけすぎて、仮にアプローチがショートしたら、下りのパットが残って最悪のシチュエーションになります。イマジネーションと技術がピッタリ合った至高の一打。それを優勝を争うシーンでやってのけたわけです。

現地に行くまでは、一見簡単そうで、“傾斜に打っておけば寄るだろう”なんて想像していましたが、大間違いでした。(解説・進藤大典)

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