「ツアー選手権」8年連続進出の偉業 イーストレイクは一年の頑張りが報われる場所
松山英樹選手が最終戦「ツアー選手権」に8年連続で進出する快挙を達成しました。これは本当にすごい記録です。真っ先にそのすごさをお伝えしたいところですが、プレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」もプレーオフ6ホール目までもつれる激闘でした。まずは、そちらから振り返ります。
最終日は2サム最終組を回ったパトリック・カントレーとブライソン・デシャンボーの一騎打ち。4日間を通してパッティングのタッチが抜群だったカントレー。正規ラウンドの上がり3ホールは、外せばデシャンボーの勝利が決まりかねないクラッチパットの連続でした。
2019年「シュライナーズホスピタルforチルドレンオープン」ではグリーン上で神がかり的なプレーを見せたケビン・ナに惜敗。スコア貢献度を示す「ストロークゲインド・パッティング」は驚異の「+14.263」、正規72ホールで決めたパットの総距離も記録が残る2003年以降でツアーレコードとなる約170.1mという相手の戦いぶりに「創造主のように見えた」と振り返ったほどでした。今回のカントレーも同スタッツは「+14.577」と約163.83mですから、遜色ないレベルです。
対するデシャンボーはドライビングディスタンスだけでなく、ティショットのスコア貢献度を示す「ストロークゲインド・オフ・ザ・ティ」で今大会1位。目の前であれだけ飛距離を稼いだ上にフェアウェイに置かれたら、カントレーには相当なプレッシャーがかかっていたはずです。特にプレーオフはオナーのデシャンボーのショットを見てから打たなければいけない状況にもかかわらず、一打の集中力とポーカーフェイスに秘めた勝利への執念はすさまじいものがありました。
ほんのわずかなタッチの差で外れたデシャンボーのパットが決まっていれば…というシーンもありましたが、あれだけのショットを打ち続ければ相手が自滅してくれたりするもの。やはり、カントレーの粘りが見事だったことに尽きます。
そして、松山選手です。8年連続のファイナル。継続中の選手としてはダスティン・ジョンソン(13年連続※)、パトリック・リード(8年連続)と3人しかいません。この3人に続くのがジャスティン・トーマスで6年連続。さらにジョン・ラーム(スペイン)、ザンダー・シャウフェレ、トニー・フィナウが5年連続となっています。
フェデックスカップとプレーオフシリーズが設立された2007年から振り返ってみても、ハンター・メイハンが07年から、マット・クーチャーが10年から8年連続で最終戦に進んだ例があるだけ。松山選手は“歴代2位”に並んだことになります。
最高峰の舞台でトップ30に入り続けることが、どれほど大変か。日々の練習とトレーニング、大きなケガをしない強い体、歩みを止めないモチベーション…どれかひとつでも欠けたら結果を残すことができないシビアな世界です。
僕も当時キャディとして「ツアー選手権」には特別な思いがありました。切符を確保できた安堵、選手にここまで連れてきてもらったという感謝、一年間の頑張りが報われた充実感。イーストレイクGCの駐車場に着くなり、そういった感情が自然とあふれ出すのです。
30人だけが挑むことを許される、1500万ドル(約16億4000万円)のビッグボーナスをかけた最終戦。そこで戦い続ける日本人選手がいる誇りをかみしめながら、シーズンを締めくくる72ホールを見守りましょう。(解説・進藤大典)
※ジョンソンは13-14年シーズンに8月以降の試合を欠場したが、ポイントランク30位に入っていたため最終戦進出記録は継続中。