【WORLD】大学卒業とこれから/ミッシェル・ウィ ストーリー
コッカーリルは、かつて2009年のソルハイム・カップで、ウィの情熱を見たことがあるという。ベス・ダニエルがキャプテン推薦でウィを指名すると、3勝無敗1分けで、アメリカ代表が優勝する大きな原動力となった。この時のウィは、感情を表に出し、集中し、熱意を見せ、クレバーにプレーした。「あの時は、無敵のミッシェル・ウィだった。でも、あの姿を多く見かけることはないの」。
長年スイングコーチを務めるデビッド・レッドベターは、彼女がLPGAツアーの階段を駆け上がっていった15~18歳の時に、全身にみなぎるやる気を感じたという。このやる気は、ある意味、スタンフォード大学での日々では、棚上げ状態になっていた。「これからの2年間で、ミッシェルがどれだけ勝利に執着しているのかが見えてくると思います」とレッドベターは言う。「彼女は本当に戦うことが好きだし、勝つことが好きです。100%ポジティブではいられませんが、みなぎるやる気はまだ残っている。それをただ前面に出すだけなんです」。
この冒険には、常に近くに存在する両親も含まれる。カリフォルニア州北部での練習には、必ずカートに乗った両親が付き添い、ウィが参戦するLPGAイベントには必ず同行する。この習慣は、長年にわたり、大きな批判を呼んできたし、大学を卒業したからといって、両親の役割が変わるようには思えない。父のB.J.は穏やかで理性的だが、母のボーは常にそうとは限らない。韓国でアマチュア女王となった経験を持つボーは、娘のプレーを見る時は、感情を剥き出しにする。解説者の中には、ボーはミシェルの大会を追いながら、時には叫び声を上げる姿を見て、ショットのたびに生死が分かれる、と称した人もいる。
この件について、2つの見方が存在する。1つは、ウィの両親は、スタンフォードで娘の自立を認めたという見方だ。だが、両親は大学近くのパロアルトに住み、今年はジュピターで娘と同居する。
「今まで、彼女のゴルフ人生において、両親は大きな役割を担ってきました。2人が姿を消すことはないと思います」とレッドベターは言う。「今現在、望ましいのは、両親がミッシェルに彼女自身の空間を与えていること。15歳や16歳の時とは違って、もうベビーシッターはいらないと気付いたんです」。ウィは、それほど遠くない未来、おそらく3~4年後には、両親が遠征には同行しなくなる日が来ると考えている。まだその日は来ていないが、ミシェルの判断次第だという。
「両親の手が要らなくなる時が、必ず訪れるわ。でも、今はまだ2人のアドバイスや、ゴルフでの指導が必要だと思うの」とミシェルは言う。「2人は私が4歳の頃からプレーを見続けている。だから、他の人には分からないことも見えたりするし…。2人はいつも近い場所にいるわ。それが私たちの関係なの。その関わりが、少しずつ減ってくるとは思うけど、2人のそばにいることは居心地がいいし、重荷には感じないわ。本当に手助けしてくれるの」。
この問題は、最終的には、ウィがロープの中で、どのようにパフォーマンスするか、にかかっている。彼女は明らかに創造力のある人間なのだから、グリーン周りで機械的にプレーするのではなく、コッカーリルはその創造力を試合で生かしてほしいと考えている。ここ数年、ウィはロングパターを使ったり、グリップを頻繁に変えたり、恐れることなくパッティングをいじくり回している。キャリア前半は非常にパターに優れていたと称するレッドベターは、ウィは“機械的になりすぎ”だとも考えている。
ウィの利点を挙げるとすれば、最近、期待に応えようという興味がうかがえるようになった。コーヒー・ハウスで座りながら(ここにはタイガー・ウッズからチェルシー・クリントン、テッド・コッペル、リース・ウィザースプーンまで、スタンフォード卒業生の似顔絵が飾ってある)、急の必要性に迫られた声のトーンでこう話したことだろう。
「いま私は、自分と周りの人々に、素晴らしいことを成し遂げられるんだっていうことを証明しなければならないの。私が過去に成し遂げたことではなくて、今やっていることで注目されるようになりたい」。十分理解できることだが、ミシェルは6月17日のスタンフォード大学の卒業式を、心から誇りに感じている。その後で行うことに対しても、心から誇りに感じることができるか、ということだ。
米国ゴルフダイジェスト社提携
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