2013年 BMW選手権

<佐渡充高の選手名鑑 93>アダム・スコット

2013/09/05 12:50
プレーオフシリーズ「ザ・バークレイズ」で優勝を飾ったA.スコットが、年間王者の称号獲得に大きく前進!

■ 年間王者へ猛チャージ!

マスターズ・チャンピオンのアダム・スコット(33)がプレーオフシリーズ(全4戦)の初戦「ザ・バークレイズ」で優勝を飾った。ポイントランクは2位へ急浮上し、次戦の「BMW選手権」の成績次第では、タイガー・ウッズを抜きトップに浮上の可能性がでてきた。そうなればマスターズ同様“豪州選手史上初”の年間王者の称号獲得に大きく前進する。

■ 心も技もバックアップする豪州の家族

「ザ・バークレイズ」での優勝直後、「僕の新しい家族、オリビアに捧げたい」と笑顔で語った。オリビアとは彼の妹夫妻に誕生した長女のことで、伯父になった喜びを表現したのだった。というのも妹ケーシーの夫ブラッド・マローンはレッスンプロで信頼できる技術的サポーターだ。2010年、不振に喘いでいたスコットは、帰郷の際にマローンにコーチになってほしいと依頼した。彼らが最初にとりかかったのはパッティングで、マローンの提案で長尺パターへ挑戦することになったのだ。翌2011年2月の「WGC アクセンチュアマッチプレー選手権」から実戦使用を開始。4月の「マスターズ」では“111”パットというパッティングの好調が効いて2位でフィニッシュした。以降、メジャーでも何度も優勝争いに加わり、ついに今季4月の「マスターズ」で優勝へと繋げた。

父フィル、母パムの支えも大きい。父は元プロゴルファーで、スコットにとって初めてのコーチ。豪州ツアー初参加の際や、「全米アマ選手権」などアマチュア時代の主要試合はキャディも担っていた。グレッグ・ノーマンのコーチだった豪州のチャーリー・アープとの出会い、そしてゴルフ教育の優れた高校への進学など、父はプロになるための徹底した基礎作りにも奔走してくれた。家族は今も豪州に住んでいるが、離れていても最強のサポーターなのである。スコット一家にオリビアちゃんが加わり、スコット叔父さんのモチベーションはさらに強まること間違いなしだ。

■ グローバル・スポーツマン

スコットは豪州の南部、南極海に面するアデレードで生まれた。のちに父が、豪州北東部クイーンズランド州にあるゴルフ場の支配人就任で一家は転居した。11歳からは同州南部のブリスベンにある高校へ進学。大学は米国ラスベガスのネバダ大学へ留学した。プロ転向後、一時期はロンドンのチェルシー地区に居を構えたが、2005年からスイス南西部のヴァリス州クラン・モンタナを拠点にしている。同地はスキーのW杯でも知られる、アルプスの絶景が広がる仏語圏のエレガントなリゾート地。欧州マスターズの開催コース、クランシュルシエレGCも近く、親しいセルヒオ・ガルシアやモリナリ兄もスコットの影響で同地に引っ越してきた。試合の合間、数週間単位でスイスに戻り充電、豪州の夏季11月からは、ゴールドコーストの自宅でサーフィンを楽しむというライフスタイルで過ごしている。スコットの感性や感覚はこのようにして磨かれてきたのだ。

■ スコットがモテるわけ

スコットはハンサム、エレガント、インテリジェンス、穏やかでフレンドリーなMr.ナイスガイだ。彼はその雰囲気で、女性だけでなく、選手仲間からも親しみをこめ“スコティ”と呼ばれ、ツアーナンバー1のモテ男である。その理由はルックスだけでなく、彼の中身も大きな要因だと思う。世界各地で多くの人に会い、さまざまなカルチャー体験をし、それらが個性を育んでいると思う。もう一つは好奇心が旺盛なこと。彼と初めての食事はフロリダでの“しゃぶしゃぶ”だった。僕は自分の箸で料理をつつくこともある鍋料理は、欧米人との食事では避けるようにしていた。しかし、当時22歳だった彼は、気にするどころか、日本の食文化に好奇心を示し猛烈に堪能。小学生の時に授業で教わったという日本の童謡を歌いながら、10人前をペロリと平らげた。名古屋の試合で来日した時には、「昨晩はパチンコをプレーしてきた」と言っていたし、NYでは深夜でも地下鉄で移動し、愛用のカメラで写真撮影も楽しむなどイメージとのギャップに驚くことばかり。彼には旨みたっぷりのブイヨンのごとく、ありとあらゆるエッセンスが盛り込まれている。

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