<佐渡充高の選手名鑑 91>ダニエル・サマーヘイズ
■ Summer(夏)に強いサマーヘイズ
その名の通り、夏にめっぽう強いのはダニエル・サマーヘイズ(29)だ。彼の名が、初めてゴルフ界を賑わせたのはちょうど12年前、2001年の晩夏8月だった。2000年から地元ユタ州のアマチュア大会で2連覇。そしてタイガー・ウッズが、1996年から奇跡の3連覇を遂げた最高峰のアマチュア大会「全米アマ」で順当に勝ち上がり、当時17歳の高校生サマーヘイズが『史上最年少優勝か!?』と話題を振りまいた。この大会で優勝はできなかったが、輝くティーン時代を送ったのだ。
ユタ州のブリンガム・ヤング大学ビジネス学科に進学し、在学中の2007年、盛夏の7月に行われたウェブドットコムツアーで、アマチュアとして初優勝を果たした。この試合はジャック・ニクラスの出身大学、オハイオ州立大学が所有するコースで初めて開催された。ニクラスは名誉ホストとして、全米学生のトップクラスの選手数人を招待したのだが、指名したひとりがサマーヘイズで、ニクラスの期待に応える快挙を成し遂げたのだった。
プロとして活躍できる手ごたえを得て、同年、大学を中退しプロに転向。下部ツアーを経験しPGAツアーに昇格した。今季も7月になるやいなや、3試合連続でトップ10に入る好調ぶりを見せると、7月の「サンダーソンファームズ選手権」では、ベテランのウッディ・オースティンに優勝はさらわれるものの2位で終え、夏男サマーヘイズの確かな成長をみた。
■ ファミリーマターはゴルフとモルモン伝道
サマーヘイズと言えば、米国ではゴルフファミリーとしても有名だ。ダニエルの叔父ブルースは、チャンピオンズツアーで3勝を飾っている。彼の娘(ダニエルの従妹)キャリー・ロバーツはLPGAで活躍し、引退。現在はブリンガム・ヤング大学ゴルフ部のヘッドコーチに就任した。ダニエルの4歳上の兄ボイドは、2004年からPGAツアーを3シーズンプレーした。現在はカナダツアーのメンバーで奮闘中だ。
一族はモルモン教徒で叔父も兄も、熱心に布教活動を行っていた。ダニエルも2003年から2年ほど、伝道活動のため、南米チリのサンチャゴなどに滞在した。その経験からスペイン語やポルトガル語に親しみ、南米のプロゴルファーとも親交ができた。ブリンガム・ヤング大学出身と言えば、レジェンドのジョニー・ミラーや、「マスターズ」優勝のマイク・ウィア、マイク・リードら名選手の先輩たちがいる。サマーヘイズは恵まれたバックグラウンドを生かしどこまで成長するか楽しみな存在だ。
■ 元PGAツアー勝者に学ぶ
サマーヘイズが、今季トップ10に4回入るという好調の理由の一つは、元PGAツアー勝者でインストラクターに転身したニュージーランド出身のグラント・ウェイト(49)のサポートの効果が大きい。2年前の「テキサスオープン」で83-74の大叩きで予選落ちを喫したサマーヘイズ。彼はそれまでコーチについた経験がなく、多少の不調に陥っても、何とか自力で復調してきた。しかし、その時はかつてない危機的な予感が漂い、スイングのメカニズムから学び、立て直そうと決心したのだった。そこで選んだのが、先輩ウィアやブライアン・ゲイらが助言を受けているウェイトだった。ジョセフ・メイヨというインストラクターとともに、指導方法と理論を構築。ウェイト自身のツアー経験も付加するトータルサポートだ。
あとは縁起を担ぐだけ?なのか、最近、彼には勝負服ができた。オレンジ色のシャツにグレーのパンツというコーディネート。5月の試合は何度も効果を発揮し、特にコロニアルでキャリアベストの9つのバーディをマークした。盛夏の中で行われるシーズン終盤の、プレーオフシリーズがいよいよスタートする。夏男サマーヘイズの本領発揮となるのだろうか。