2012年 全米オープン

佐渡充高が簡単解説!初めてのPGAツアー【番外編】

2012/06/13 10:00
1998年全米オープン最終日/左:ペイン・スチュアート、右:リー・ジャンセン(Craig Jones/Getty Images)

■ 舞台は14年ぶり、オリンピッククラブ

「全米オープン」がオリンピッククラブで開催されるのは、1998年以来14年ぶりとなる。この年、リー・ジャンセン、ペイン・スチュアートの優勝争いに注目が集まった。優勝まであと一歩と迫ったスチュアートは、14番(パー4)で素晴らしいティショットを放ったが、ボールはフェアウェイのディボットを埋めた砂の上に乗せてしまうアンラッキーに見舞われた。そこから打ったショットはグリーンをオーバーして、そのホールをボギーとしてしまい、それが致命傷となって敗戦を喫したというドラマがある。この悲しいスチュアートの敗戦劇は後々まで語られることになる。(しかし、翌年のパインハースト・リゾートゴルフコースNo.2で開催された同大会で優勝を飾り、怪我の功名とも言うべき結果を残している)。

■ 「全米オープン」が求めるものとは?

コースはスーッとまっすぐに伸びた杉の木に囲まれ、杉の香りが漂うコースだ。朝は霧がかかりウェットな感じだが、晴れてくるとカラっとした空気に変わる。ホール左右には木々が密集しているので、ボールを打ち込んでしまうとなかなか落ちてこないこともある。過去には、中嶋常幸も18番でティショットを右に曲げ、結局落ちてこなかったのでロストボールとなったこともあった(だから「あの辺の木を揺すると、ボールが落ちてくる」という冗談まである)。ホールは狭く、グリーンも小さい。さらに「全米オープン」というメジャーセッティングが施されると、尚一層フェアウェイは狭くラフが深くなり、究極の正確性が求められるコースである。同じくメジャー大会の「マスターズ」が開催されるオーガスタナショナルはコースが広く、ラフがない。(ちなみにオーガスタは通常フェアウェイとされているところを“ファーストカット”、サイドのやや刈られているところを“セカンドカット”と呼ぶのだが、そういったことからもコースの概念が異なるのだ。)そのかわりグリーンのアンジュレーションが厳しく難しい。一方「全米オープン」が開催されるコースはフェアウェイが狭いので、ティショットの落としどころが非常に難しいのも特徴だ。

その「全米オープン」が求めるものと言えば、飛距離、パワー、ボールコントロール、ウッド、ロングアイアン、ミドルアイアン、ショートアイアンなど万能なテクニック、そしてエンデュアランス(endurance=我慢)だ。ここまでのプレーを振り返ると、ルーク・ドナルドリー・ウェストウッド(ともにイングランド)、ロリー・マキロイ(北アイルランド)らの世界ランク上位陣に加え、フィル・ミケルソンのこれまでのメジャーでの強さなど、勝者予測不能なフィールドにも注目だ。

2012年 全米オープン