佐渡充高が簡単解説!初めてのPGAツアー【第二十一回】
■ 「ヒュマナチャレンジ クリントンファウンデーション」の歴史
今季3試合目の今大会は1960年パームスプリングス・ゴルフ・クラシックとして始まり今年で52年目を迎える。開幕からの2試合はハワイでの開催で、この大会が米国本土での初戦になる。昨年までは20世紀の米国を代表するコメディアンのボブ・ホープの名がツアーの名に冠されていた。が、ホープが03年に100歳でこの世を去ってから大会名の変更が検討され始め、今年から新しい名称になった。名称変更を機に規模もやや縮小され、これまで最初で唯一の5日間90ホールによる試合だったのを72ホールに、4コース使用していたのを3コースにした。試合形式は変わらず、初日から3日目まではプロとアマが一緒にプレーするプロアマ形式、最終日はプロのみの真剣勝負となる。
■ 大統領、俳優、歌手 あらゆるセレブ参加のゴルフカーニバル
今大会はゴルフがしたくてウズウズしている多くの著名人が、全米から全米屈指の避寒リゾート地パームスプリングスにやってくる。しかも憧れのPGAツアー選手との同じ組でのプレーにワクワクしながら…。歌手のグレン・キャンベル、アンディー・ウィリアムス、俳優のジョー・ペッシ、ロック歌手のアリス・クーパー、ロジャー・クレメンス、ランディ・ジョンソンら大リーガーたちもオフシーズンなので現役時代からこぞって参加。フォード、ブッシュ、クリントンの元大統領が同組でプレーするなど毎回カーニバルのような盛り上がりをみせる。大統領トリオの組は警備が厳重だったものの、著名人を間近にできるだけでなく言葉を交わしたり、握手、サインのチャンスもあるので多くのギャラリーが駆けつける。ジャスティン・ティンバーレイクら人気アイドルが参加するようになってからは若い女性ギャラリーも急増した。今大会はいつものトーナメントの勝負を楽しめるだけでなく、一か所でツアーのトッププロ、そしてあらゆるセレブたちに会える、一度で二度も三度も楽しいイベントなのだ。
■ ゴルフのユートピア パームスプリングス
会場はカリフォルニア州パームスプリングス、ラキンタにあるPGAウェストパーマーコースとニクラスコース、ラキンタCCの3コース。ロサンゼルスから車で東へ2時間半ほど走ると到着する。砂漠地帯で1年のうち晴れの日が330日もあり、真冬でも日中の平均気温は18度前後と寒くない。昔から映画の撮影がこの地で多く行われたのは悪天候の影響が少ないからである。ゴルフ場の数は年々増え続け、すでに160コースを超え、地元の人々は「宅地面積よりゴルフ場の面積の方が広い」とジョークを飛ばすほどだ。プライベイトコースの殆どは住居との合体型で、自家用カート所有者はそのカートでクラブハウスへ向かう。気候もライフスタイルもゴルフ三昧という夢が叶う、ゴルファーにとってのユートピアである。
■ アメージングな優勝スコア
雨が少なく空気も乾燥しているためコースは硬めでランが出やすい。樹木も少なく広大さを実感する。アマが一緒なのでコース設定はラフも短くグリーンのスピードも速くしない。
やさしい設定であるため、毎年驚異的なスコアが出る。01年はジョー・デュラントが36アンダーで優勝し90ホール大会の最多アンダーパーを樹立。18ホール平均6アンダーとい驚異的な数字だった。99年にはデビッド・デュバルがPGAツアー史上3人目の「59」をマークし大逆転優勝を飾った。今年は72ホールになったものの、例年通りバーディ合戦になることは必至。選手たちの超アグレッシブなプレー、スーパーショットが楽しみだ。
■ 究極のバーディ合戦
優勝候補はバーディ奪取率の高い選手だ。最注目は、今大会が今季の初戦となるフィル・ミケルソンだ。彼はこの試合との相性も抜群で2勝の実績を誇るだけでなく、攻撃的なプレーと言えばミケルソンの真骨頂。彼のアグレッシブなプレー、ゲームプランが楽しみだ。昨年の優勝者ジョナサン・ベガス、そのベガスにプレーオフで敗れたゲーリー・ウッドランド、同じくプレーオフで敗れ2連覇を逸したビル・ハースも面白い存在だ。飛ばし屋のダスティン・ジョンソンも今季初登場。若手の中ではミケルソンよりアグレッシブと評されるリッキー・ファウラー、全米アマ最年少優勝記録をもつダニー・リー、新人のバド・コーリーも挙げておきたい。今季はコリアン・セブン(韓国籍の7選手:べ・サンムン、カン・スンフン、ノ・スンヨル、チェ・キョンジュ、Y.E.ヤン、チャーリー・ウィ、ジョン・ハ)、韓国系の選手4人(アンソニー・キム、ケビン・ナ、ダニー・リー)とコリアンパワーが一気に拡大。彼らの活躍も楽しみだ。