ニクラスを追い掛けるウッズにとって、今週は最高の舞台
Helen Ross, PGATOUR.COM
タイガー・ウッズとジャック・ニクラスの名声が並ぶことは、ほぼ確実であろう。
ウッズはこれまで、ゴルフ界で最も手の届かない栄誉の一つとされてきたジャック・ニクラスの「メジャー大会優勝18回」を執拗に追いかけてきた。現在のウッズはニクラスの記録にあと4勝と迫り、「ゴールデン・ベア」ことニクラスが、1986年の「マスターズ」で最後の優勝を飾った年齢よりも10歳若い。ウッズを含めこの記録は誰の手にも届かない記録とされてきた。
キャリア平均のスコア「69.93」を記録しているウッズは、今週も「ザ・メモリアルトーナメント」のタイトルを守ることになるかもしれないミュアフィールドビレッジで、ニクラスに対して自身の腕前を証明することが出来ることを嬉しく思っている。ウッズの全米ツアー優勝79回のうち、ここはニクラスが設計したコースの中で5勝(それ以上かもしれない)を記録したコースのうちの1つだ。
「私にとってニクラスの設計したコースはとてもプレーしやすいし、このコースでプレーする術も分かっている。ティグラウンドは十分な広さだし、グリーンは非常にシビアだ。もしグリーンの出来が悪かった時は、ショートゲームの腕が試されるね。このポイントを分かっているから、きっと上手くラウンドできると思うよ」と、ウッズは語った。
「ゴールデン・ベア」ことニクラスが設計したコースと、ウッズのプレーに親和性があるのは、彼らがビジョンを共有しているからだろう。ニクラスが戦略的に配置したバンカーや、起伏のあるグリーンや様々な難関の数々は、プレーの決断に関わるオプションをちりばめて設計しているように、ウッズは自分の感情をコントロールし、コース全体の特性を踏まえてプレーする術を体得している。
「ニクラスは非常に規律的にプレーしていたし、かつ、とても積極的に仕掛けていたね。すべて適切なタイミングだったしね」と、ウッズは振り返った。「そして彼の設計したコースは、まさにそういったプレーが出来る。積極的にプレーしなければいけないが、しかし規律的に、ボールを然るべきところにコントロールしなければいけない」。
ニクラスも、このコースはプレーヤーの眼力が問われると言っている。そして彼はミュアフィールドビレッジが“ウッズのためのコース”と言われることに喜びを感じている。しかし、コースが自分のゲーム運びに合うと期待することは、あまりに高望みすぎやしないだろうか?ウッズやニクラスのような偉大な選手であれば、自分自身の好みとは関係なく優勝争いに適応できるものだろう。
「ウッズはここで、とてもいいプレーをしているように見えるね」と、ニクラスは語った。「彼はいくつかのコースで自分のゲーム運びを心得ているようだね。ペプルビーチ、セント・アンドリュース、オーガスタ。ベイヒルでもいいプレーをしている。それぞれのコースで最適なゲーム運びができるから、数々の大会を制しているのだろうね」。
「彼のスタイルは、私の現役時代ととても似ている。私は、自分の理想のゲーム運びができると思えるお気に入りのコースでよくプレーしたものだ。こうすることで、4つのメジャー大会に備えることはもちろんのこと、自分のプレーに自信を持つことができるのだ」。
フェデックスカップランキングでダントツ1位のウッズは、今年、自信が欠けていることはないように見受けられるが。
世界ナンバー1の彼は今季、7大会に出場してそのうち4大会で優勝している。興味深い事実として、それら4勝のうちの2勝は、彼が通算8勝(ベイヒル)した大会と7勝(トーリーパインズ)を挙げたコースでの優勝だ。しかし直近で優勝したのは、2001年以来優勝から数々の困難に直面して10年以上も優勝から遠ざかっていたTPCソーグラスだった。
ミュアフィールドビレッジでのウッズの成功について、ロリー・マキロイ(北アイルランド)は、今週もウッズが優勝するのではと予想する多くの人々と同じく、哲学的なコメントを語った。
「僕が思うに、彼がどこでもうまくプレーできる理由は簡単だ」と、北アイルランド人の若きホープのマキロイが正直に言った時、周囲には笑いが起きた。「もはやほとんどのコースは、タイガー・ウッズのためにレイアウトされていると言ってもいいんじゃないかな。彼は今年のザ・プレーヤーズ選手権でも優勝したけど、大会前誰もが、あのコースは彼には不向きだと言っていたコースだったよね」。
「彼はコースを選ばずどこでも良いプレーをする。同じコースだけで優勝するような存在ではないし、どこでも優勝できるのが彼だ」。
多くの関係者が、今季のウッズの好調はコンディションを理由に挙げる中、デービス・ラブ3世は今年のウッズについて、「彼の友人でシカゴ・ブルズのスターだったマイケル・ジョーダン氏が全ての試合でベストプレーをしてきたと思われているが決してそうではないように、ウッズにだって予想外のことも起こりうる」と、言った。大切なことは至って単純なこと。圧倒的な才能に感謝することだ。
「ジョーダンは、すべてのゲームの終わりにジャンプシュートを決めたように思われているが、実際は全て成功させていた訳ではない。それは沢山のシュートをしたからで、多くのシュートがファンの期待を高めたというだけのことだ。同じように、人々が盛り上がる予想を、十分に信頼し過ぎてはいけない。ウッズはここ3週間優勝していないが、ウッズに何か起こっているのかもしれないよ? オッズでは4週振りに優勝するだろうと言われているどね」と、ラブは持論を語った。
世界のブックメーカーが予測する、タイガーの優勝オッズは、シーズン序盤と比較するとかなり倍率が高まってきている。気心の知れたショーン・フォーリーの指導の元、ウッズのスイングは慎重に積み上げられ、今シーズンは更に良化している。ウッズは自身のモーションをつかんでいるので、コースを外した時ですら、もはやフォーリーにその理由を聞く必要などない、とまで言われている。
「そのことはとても大きい。毎日コンディションが最高なことはない。上手くいくためにはショットとショットの間、毎日の間、課題等を解決し、自分のスイングの“傾向”が何であるかを知るようにすることだ。少し時間がかかったけど、いよいよもう少しだと感じているよ。今年やってきたことは、正確さを一段と求めることであり、自分のゲーム運びの中で新たな要素を作って、自分の強みにすることができるようになってきたと思う」と、ウッズは語った。