「タンパベイ選手権」 最終日レビュー
18番ホールへの上り坂は、今までで最高の道のりだったろう。ケビン・ストリールマンにとって、それはPGAツアー初優勝への道だった。
ストリールマンが、今までにダメにした車は3台。小さな大会に出場するため、全米中を自分で運転して回った。走行距離は40万マイル(約64万キロ)を超える。平日はクラブを磨き、週末はキャディを務めたという。
キャリア最大の賞金は2009年のコダック・チャレンジでのボーナス、100万ドル(約9600万円)。最後に優勝したのは、5年前のウィスパー・ロックのクラブチャンピオンシップだ。
この「タンパベイ選手権」でPGAツアー初優勝を遂げたストリールマンは、これが同ツアー153度目の参戦だった。優勝の結果、フェデックスカップの順位を6位に押し上げた。
この難しいコッパーヘッド・コースにおいて、特にバックナインでの戦いぶりは、何度も経験があるかのようだった。
ストリールマンは、「この結果をずっと夢に見てきた。この場所で頂点を極められたのは、これまでの努力の成果だ。夜遅くまで頑張ったし、早朝から時間を費やした。まさに夢が叶ったんだ」と語る。
最終日のストリールマンは、最難関ホールの13番ホール(パー3)で、5アイアンからのティショットをピンそば6フィートにつけると、このホールをバーディとし、リードを奪った。「人生最高のショットだろうね。イメージ通りのショットが決まったんだ」と、ストリールマンは振り返る。
16番ホールでは、4本立ち並ぶ木々をターゲットに冷静かつ精密にティショットを決めた。木の2本目と3本目の間を狙いすました。17番ホール(パー3)では、20フィートのパットを沈めバーディを奪うと、4アンダー「67」で首位に立った。
ストリールマンは37ホールで連続ノーボギー。最終ホールまでの11ホールに、ミスショットはなかった。「またこんな風に出来るといいね。本当に楽しいゴルフだった」と、ストリールマンは言った。
最終組がスタートする3時間前にティオフしたブー・ウィークリーは、今大会ベストの「63」で回り、残りの組の結果を待った。彼はストリールマンが17番ホールでバーディを奪い、18番ホールのティショットをフェアウェイに落とすまで、自身の優勝に望みを抱いていたという。
しかし、勝利はストリールマンにもたらされた。10アンダーの「274」で終えたストリールマンは、自身2度目となる「マスターズ」への切符も手に入れた。
キャメロン・トリンゲイルは、「66」で回って単独3位だった。一方、ジャスティン・レナードは、16番ホールでバンカーにつかまってボギーとすると、終盤のミスから「71」をマーク。昨年の覇者ルーク・ドナルド(スコア「69」)とグレッグ・チャルマース(オーストラリア・スコア「70」)と共に4位タイで終えた。
テキサス大学出身の19歳ルーキー、ジョーダン・スピースも、大躍進を遂げた。17番ホールでは、50フィートのチップインバーディを奪い、最終ホールでも7フィートのパーパットを決め、スコア「70」で7位タイの成績を収めた。
これでPGAツアーメンバーとして、今季残りのスケジュールを戦う十分な賞金を獲得した。制限なしのスポンサー免除も受けられるようになるという。
17番ホールでチップインバーディを奪うまでは、PGAツアーメンバー資格に195ドル足りていなかったそうだ。それは、昨年の賞金ランキング150位として計算されている。
「あの時はヤバかった」スピースは、はにかみながら振り返ると、「でも17番ホールでギャラリーが興奮してくれて嬉しかった。今までで最高のショットが打てたよ。最高に熱狂した歓声だったね。ゾクゾクしたよ。でもホント、ツアーメンバーの資格に200ドル足りていなかったら、自分で200ドル払えないかって聞いてたと思う」と語った。
ここ3試合の出場で獲得した賞金は521,893ドル。大半は先週2位を収めた「プエルトリコオープン」とこの大会で稼ぎだした。
34歳のストリールマンが優勝を収め、アメリカ人選手によるPGAツアー優勝はこれで14大会連続となった。昨秋シーアイランドでのトミー・ゲイニー以来、続いているという。
ストリールマンにとっては、ようやく優勝できたことが全てだ。「ただひたすら夢を追いかけ続けることだよ。何が起こるかなんて誰にもわからないからね」とストリーマンは語った。