2019年 マスターズ

遙かなる舞台へ 金谷拓実「不思議でしかない」

2018/10/08 08:30
15番で7mのバーディパットを沈めて単独首位へ。気合いのガッツポーズ

◇アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権 最終日(7日)◇セントーサGCニュータンジョンC(シンガポール)◇6847yd(パー70)

「最後まで何が起きるか分からないから」と金谷拓実(東北福祉大2年)はけっして気持ちを切らさなかった。最終18番を迎えたとき、2位に2打差をつけていた。2打目でグリーンをとらえ、3パットでも優勝という状況だったが、「いままで悔しい経験ばかりしてきたから」と、少しも安心しなかった。2m弱のパーパットを沈めて力強いガッツポーズをした後、ようやく笑った。2011年の松山英樹に続き、7年ぶりに日本人選手がアジアのアマチュアの頂点に立った瞬間だった。

2打差を追ってスタートした。首位から出た同じ最終組のリン・ユーシン(中国)は序盤からチグハグだった。12番までに4つスコアを落とすと、怒りのあまりパターを曲げた。以降はウェッジでパッティングを続けたが、大会連覇の夢は早々にしぼんでいった。

代わって試合をけん引したのは、中島啓太(代々木高3年)だった。金谷の一組前を回り、10番までに4つ伸ばして通算12アンダーとして単独首位。最終組のハーフターン直前に雷雲接近で中断を挟んだ際、「チームジャパン」は一緒のテーブルで休んでいた。1打差で追っていた金谷は「ちょっとやりにくかった」と振り返った。

再開後の14番でバーディを奪って中島をとらえ、15番(パー3)で7mを沈めて連続バーディ。力強いガッツポーズとともについに単独首位に立った。16番(パー5)も2オンに成功して3連続バーディとした。17番(パー3)をボギーとしたが、最終18番できっちり2打差を守り切った。

スタート前、東北福祉大ゴルフ部の阿部靖彦監督に「2位はいらない」と言われていた。来年4月の「マスターズ」と7月の「全英オープン」の出場権が与えられるのは優勝者だけ。メリハリをつけて攻めていけという激励だった。

昨年、プロになるか迷った末に進学を決めた金谷は、入学直後に霞ヶ関CCで松山英樹と一緒にラウンドをする機会を得て「圧倒された」という。そこから懸命に体作りを始めて、入学時の65kgから、いまでは73kgまで体重を増やした。

松山に続き、アマチュアとして「マスターズ」に出場する史上2人目の日本人選手としての資格を得た。「今年のマスターズも、出られると思って見ていなかった。不思議でしかたない。ぜんぜん実感がわかないです」と金谷は言う。わずか一週間で、20歳の人生は劇的に展開した。(シンガポール・セントーサ/今岡涼太)

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