「悔しくて泣きそう」岩田寛、プレーオフに1打届かず3位
あと一歩、あと一歩だった。中国のシェシャンインターナショナルGCで行われた「WGC HSBCチャンピオンズ」最終日。日本人5人目の米ツアー制覇、史上初の世界選手権優勝を狙った岩田寛は3バーディ、3ボギーの「72」で回り通算10アンダーで、プレーオフにあと1ストロークが届かず3位タイに終わった。
4日間、72ホール目のバーディパット。3.5mのラインを伝ったボールはカップの脇を無情にすり抜けた。「入るイメージはメチャクチャあったけれど…イメージが強すぎた」。大きくため息をつき、最終18番グリーンを降りた岩田は涙を必死にこらえていた。
グレーム・マクドウェル(北アイルランド)とマーティン・カイマー(ドイツ)。2人の「全米オープン」覇者とプレーしたWGCの最終日最終組。前半アウトは4m前後のチャンスをことごとく外して2ボギーとしながら、11番で最初のバーディを決めて再浮上のきっかけをつかんだ。
13番からの2連続バーディの直後、15番でティショットを右に曲げてアンプレヤブルとしながら、ラフから4打目のアプローチをピンそば1.5mにつけてナイスボギー。16番のプレー中には通算10アンダーの首位に自身を含む5人が並ぶ大混戦となった。ティショットを右ラフに打ち込んだ17番(パー3)は4mのパーパットを残しながら「これを外したら最後もボギーにしてしまいそうだった。集中力が切れてしまう」と、意地を見せてねじ込んだ。
イーグルフィニッシュを決めたバッバ・ワトソン、ティム・クラーク(南アフリカ)の背中を1打差で追って迎えた最終ホール。左ラフからのセカンドショット、サードショットは「思い通り」に進めた。それだけに277ストローク目への悔しさが募るばかり。「今は、悔しくて泣きそうです」。溢れんばかりの思いを必死に包み隠した。
米ツアー出場はキャリアでわずか4試合目。直近は今年7月「全英オープン」で、「人生で一番悔しい思い」を味わった。上がり2ホール、連続ダブルボギーで予選落ち。ただ「あれがあったから優勝できたと思う」という。未勝利の時間が長かったが、9月「フジサンケイクラシック」でのツアー初勝利は、着実なステップを踏んだからこそ。そしてもちろん、今回の惜敗も計り知れない糧になる。
12月には米ツアー下部ウェブドットコムツアーの最終予選会に挑戦。「いまは何も考えられない。反省しか浮かんでこない」としたが、夢見る米ツアーまでの距離は、遥かなるものではないと実感できる。「このくらいの位置でのプレーを、何回も、何回も経験していきたいなと思います」。笑みなく見上げた視線の先に、近くなった“世界”がきっとある。(中国・上海/桂川洋一)