ノーザントラストオープン 最終日レビュー
格式あるPGAツアーでプレーすることを夢見ていたジョン・メリックは、ついに今日、長い歴史をもつリビエラCCの歴史の一部となった。
最終日のプレーは冴え渡り、初勝利をつかんだのだ。
メリックは2つのクラッチショット(重要なパット)を決め、重圧のかかるプレーオフで連続パーを収めた。そしてプレーオフ2ホール目。相手のチャーリー・ベルジャンが5フィートのパーパットを外したとき、ノーザントラストオープンの優勝が決まった。
メリックは2アンダーの「69」で最終日を終え、フェデックスカップポイント500を獲得、ランキングは4位に浮上した。米国ツアーでのキャリア初勝利を由緒あるこのトーナメントで飾った選手は9人しかいない。ロングビーチで生まれ育ったメリックは、幼少期からこの大会に参加しており、コースからほど近いUCLAに通っていた。彼には“最高の場所”での勝利となった。
「言葉にならないです…」勝負がついた10番ホールのグリーン上で、メリックは涙ながらに語った。「この大会を見て育った僕にとって、このトーナメントに出場する機会が得られただけで十分なのに」。
一方のベルジャンにとっては、厳しい終わり方となった。昨年、ディズニー(チルドレンズ ミラクル ネットワーク ホスピタル クラシック)で勝ったときのような不安感に襲われた。18番で18フィートのバーディをねじ込んで、昨年のフィル・ミケルソン、キーガン・ブラッドリーと同じように、4アンダー「67」でプレーオフに持ち込んだにも関わらず。
彼はプレーオフ最初の舞台となった18番で、難しい6フィートのパットを決めなければならなかった。315ヤードと距離の短いパー4の10番では、ベルジャンは第1打を左サイド奥に打ち込んでしまい、チップショットもグリーンには届かず、第3打もピンに寄らず、パーパットは左にそれ、ボギーとしてしまった。ベルジャンは10番ホールに苦手意識があったのかもしれない。最終日のラウンドでも、同じく10番でボギーを叩いてしまっていた。
メリックにとってのターニング・ポイントは、17番(パー5)だったかもしれない。第2打をバンカーへ入れてしまったものの、そこから脱出してパーで切り抜けた。
さらにプレーオフでも素晴らしいリカバリーを見せた。最初の18番フェアウェイから、アプローチがグリーンをオーバーしてしまったが、第3打をしっかり寄せてパー。2ホール目は危険な10番ホール。レイアップして右を攻めた。ウェッジでグリーンを捉え、18フィートの位置へつけた。数インチ長かったら、バンカーへ落ちていたかもしれない。
メリックは11アンダーの通算「273」として、来月行われる「WGC キャデラック選手権」の出場権も初めて手にした。
フレデリック・ヤコブソンは、18番で4フィートのパーパットを外してしまい、あと一歩のところでプレーオフ進出を断たれてしまった。最終日は「69」で同じく「70」で回ったチャール・シュワルツェル、「73」のビル・ハースと並んで3位タイ。勝機は十分にあったと思われるだけに悔しさが残る。
単独トップ、2位以下に3打差をつけてハースが挑んだ最終日。スタートした時には、誰もが想像していなかったドラマが待っていた。最後は6人の選手が1打差にひしめく大混戦となったが、それはまるで冷たい雨のなか6人で争われた2001年のプレーオフを思い起こさせた。
明るい日差しが差し込む午後のカリフォルニアに、ほんの一瞬だけ、影が見えた。
ハンター・メイハンは、14番で30フィートのバーディを決め首位タイに並んだが、終盤4つもスコアを落としてしまった。特に17番(パー5)で30フィートから3パットでボギーとしてしまったのが痛かった。最終日は「69」でホールアウトした。ヤコブセンは17番で8フィートのバーディパット外し、単独首位からトップタイへと順位を落とした。そして最終ホールで4フィートのパーパットを外し、プレーオフ進出を逃した。アンダーパーの「69」で最終日を終えたが、肝心の最終ホールについて尋ねられると、いらだちを隠せない様子だった。
「あの最終ホールについて“だけ”語れというのかい? ダメだったのはあれだけだろ? 他に何を話せと言うんだい?」と言い放った後、最後にこうつぶやいた。「最後のパターがダメだったね…」。
最終日のシュワルツェルは、最も精彩を欠いていた選手と言えるだろう。マスターズ優勝経験のある彼は、16番(パー3)で10フィートのバーディパットを外した。続く17番でも6フィートのバーディパットを外した。そのホールで3パットするまでは首位に立っていたのだが、結局この日は「70」で3位タイ。しかし世界を転戦するタフな日程にもめげず、7週連続トップ5入りは立派だ。
最終日を首位で迎えたハースは、中盤の7ホールで5つものボギーを叩いてしまい、早々と優勝争いから脱落した。終盤の連続バーディで、何とか3位タイで終えることができたのは不幸中の幸いか。「ポジティブに捉えるよ。(トーナメントリーダーとして最終日を迎える経験は)それほど多くはできないだろうからね。特に歴史あるトーナメントの最終日を3打差リードで迎えることができたのは素敵な経験となったが、最後は無駄になってしまったね」と、ハースは振り返った。
ハースは、ミケルソンやマイク・ウィア、コーリー・ペイビンやベン・ホーガンら名だたるプレーヤーが成し遂げたリビエラCCでの連続優勝に手をかけていた。3番ホールで30フィートのバーディパットを決めたとき、いよいよ偉業の達成は目前かと思われた。
しかし皮肉なことにハースの不調が、独走態勢かと思われた優勝争いを面白いものに変えた。前半の終わりに連続ボギーを叩いたハース。後半9ホールに入る際、3打あった貯金はわずか1打に縮まっていた。10番ホールはハ―スにとって思い出の地だ。昨年、45フィートのバーディパットを沈め、プレーオフを制した場所である。
メリックは距離の短いパー4のコースをレイアップし、ウェッジショットはバンカーまであと少しのところできわどく止まった。彼は15フィートのバーディパットを決め、ハースと並んだ。メイハンは手前のバンカーから奥のバンカーへと行ったが、8フィートのパットを決めてパー。その後しばらくの間は首位タイをキープした。
対照的にハースは、ラフ斜面からピン目がけて果敢に攻めたピッチングが、バンカーへ。このホールをボギーとして、初めて首位の座を明け渡した。この後、彼が首位に返り咲くことは二度となかった。彼のショットは徐々にラフの方向へ引き寄せられるように不安定となり、リーダーズボードから消えてしまった。
その結果、トーナメントリーダーだったハースは、最後の1時間、重圧を感じながら一打を放つことはなかった。パットの調子は決して悪くはなかったはずなのに。
メリックは13番のボギーで首位から陥落したが、続く14番では25フィートのパーパットを決め、大崩れすることなく踏みとどまった。それはヤコブセンが、30フィートのパーパットを決めた直後のことだった。
ベルジャンが最終ラウンドで記録した唯一のボギーは、“あの10番”だけだった。プレーオフの10番ホールに来るまで、彼は誰もが認める完璧な一日を過ごしていたのだった。