<松村道央の最終日の朝のどっきり体験と、今も残るメールの謎>
「中日クラウンズ」で大接戦を制して、松山英樹の2週連続優勝を阻止した松村道央。その日の朝、ちょっぴりどっきり体験をした。師匠からメールが来た。「おはよう(笑顔と太陽の絵文字)。全英で待ってるぞ!」。
大会は「全英オープン」の日本予選の対象試合であり、すでに有資格の谷口徹から、弟子に愛情一杯の激励メール。「普段から厳しいんですけど、でもこういう言葉はとても刺激になる。気が引きしまった」と、感謝した。
谷口は予選落ちをしてコースを去っていたにもかかわらず、こうして気にかけてくれる。感激して、つい言った。「谷口さんからメールをいただきました」。それを聞いた“兄弟子”の武藤俊憲。首をかしげて「俺にはそういうのはなかったなあ」。・・・冷や汗をかいた。
確かに、最終日は松村が首位と2打差の2位。武藤は7打差の11位からのスタートで、松村のほうがよりチャンスが大きかったとはいえ、この和合では、何が起きるか分からないと言われ、武藤にも十分にチャンスはあった。
「それなのに、武藤さんにはなかったんだ」と、分かって松村はひそかに動揺した。「言っちゃまずかったかな・・・?」。もちろん、武藤はそんなことで焼き餅をやくような心の狭い兄弟子ではないけど、気分を悪くさせたかもしれない。気まずい思いで出ていったのだった。
その武藤を一番弟子に、次第に勢力を伸ばしていった“谷口軍団”。今年は、恒例のオフの宮崎合宿に参加したのは、武藤と松村と、岩田寛と清田太一郎と、女子プロが何人か。
毎日、トーナメント方式のラウンド合宿で、しのぎを削るが「チームの結束は固くない」。松村曰く、「特別にルールがあるわけでもないし、みんな自由だし、決まり事といえば、師匠がごちそうしてくれることくらい」。もちろん、まもなく生涯獲得賞金は15億円を突破しようかという谷口には、日々の食費代など、へでもないだろうが、さすがに毎日では気が引ける。
「たまには、僕らが出します」と松村も申し出るのだが、師匠は鼻で笑って「お前におごってもらうようになったら俺も終わりだ」。そんな言葉の裏に、トッププロとしての矜持とともに、自分たち弟子への愛情を感じたりもする。
2010年に、初優勝から一気にツアー2勝を挙げながら、そのまま足踏みを続けていた松村。お前はそこで立ち止まっている器じゃないだろうという師匠のゲキに応えて、みごとツアー3勝目を飾り、谷口の師匠としてのマネジメント力が、改めてクローズアップされた結果にもなった。
だが、それにしても・・・。「なんであの日、谷口さんは武藤にはメールをしなかったんだろう??」。深い謎が残るV3でもあった。