国内男子ツアー

アジア対日本の対抗戦 ダイナスティカップこぼれ話

2003/03/26 09:00

男に惚れられてしまう男―。先日、中国での青木功がそうだった。

アジア対日本チーム対抗戦、ダイナスティカップ。キャプテンを務めた青木には、メンバーから、たくさんのラブコールが寄せられた。特に、30歳代の選手らの声が多かった。

彼らには、年が離れ、しかも今では米シニアツアーを拠点に世界を飛び回っている青木とはそうそう接点もなく、頭ではその凄さが分かっていても、どこか遠い存在だった。

それがあの1週間、寝食をともにし、まるで学生の合宿のように喜びも悔しさも分かちあったことで、見えてきたものが多かったのだ。

「とにかく、勉強になった」と絶賛したのが、鈴木亨だ。練習ラウンドのときから積極的に青木に相談を持ちかけて指導を仰いでいた鈴木は、何か掴んだものがあるようすで、「内容は内緒だけど、青木さんのおかげで、すごく自信が持てたことがあった」と大喜びだった。中でも、鈴木をもっとも感動させたのは「青木さんの外見のかっこよさ」という。60歳の今もなお、影で想像を絶する努力を続けて、若々しい肉体を保ちつづけている凄さ。「やっぱりいくつになっても、スポーツ選手は青木さんみたいにかっこよくなくちゃ!」と、惚れ惚れと見直したという。

桑原克典が「惚れた」のは、「青木さんの、豪快さの中にある繊細さ」だ。

「最終日、最終ホールで青木さんは僕に“もうひとつ取れ”とこともなげに言ってハッパをかけたけれど、試合が終わったあと青木さんが僕のところへ来てこう言ったんです。

『桑原、あのとき実は俺は迷ったんだ。あんなことを言って、おまえをかえって混乱させはしないか、と。結果的に勝てたから良かったが、無神経な言い方だったなら謝る』って。感動しましたね。豪快に見えて、ほんとうは実に繊細な人。それがわからない人には、時には煙たがられる存在かもしれないけれど、青木さんの素顔を知ったら、みんな絶対にファンになっちゃうと思います」。

ゲーム終了後も青木は、そんな繊細な一面を垣間見せた。
メンバーみんなでプールに飛び込んだフェアウェルパーティ。
ひとしきり騒いだあと、全員プールサイドに上がってからしばらくして、青木は再びひとりで水に飛び込んでいった。

桑原が、(いったい何をしているのか)と注意深く見ていると、青木はプールに浮かんでいたビール瓶をおもむろに掴み取り、プールから上がってきた。そして、「誰かがケガをしたら大変だ」と誰ともなしにつぶやいて、それをゴミ箱に捨てたのだ。

「あれほどの人が当たり前のことを当たり前のようにしたことに、またまたすっげえ感動してしまいました」と桑原。

「そんな青木さんを間近で見られただけでも、貴重な1週間でしたね」

大会は隔年開催。2年後の大会ではまたどんなメンバーが、どんなドラマを作ってくれるだろうか、楽しみである。

※日本ゴルフツアー機構が発刊しているメールマガジン(プレーヤーズラウンジ)より転載しています。