V報告に冷静だった家族 中島啓太が“余韻ゼロ”で見据える世界
◇国内男子◇バンテリン東海クラシック 事前(29日)◇三好CC西コース (愛知)◇7300yd(パー71)
「パナソニックオープン」でアマチュア優勝を達成した中島啓太(日体大3年)は、家族に快挙を報告したときの様子を苦笑交じりに明かす。
「お母さんに電話したら『これから仕事だから後にして』って言われるし、お姉ちゃんからも『(インタビューで)泣きすぎだよ』って言われて…ウチの家族、(結果が)良くても悪くても、いつもそんな感じなんです」。意外なほど冷静だった身近な人たちの反応は、21歳の選手としてのスケール感を物語っているのかもしれない。
ライバルとして切磋琢磨してきた金谷拓実は「僕は(中島が勝ったことを)驚かなかった」と言いつつ、今大会開幕前日の練習ラウンドをともにしたときの立ち振る舞いに目を見張ったという。「もちろんうれしさはあったと思うんですけど、余韻に浸っているようには見えなかった。次(の目標)を見ているような。これまでのアマチュアとは、違う次元にいると思います」と証言した。
11月の「アジアアマ」といった大舞台を見据え、タイトなコースに対してパー3を除く14ホールで1Wを握り続けた胆力。4日間を通じたフェアウェイキープ率が37.5%(21/56)にとどまっても、ラフからフィールド2位タイの23バーディを積み重ねたライのジャッジと技術が際立った前週。
「去年、おととしとかよりも、ゴルフのスケールをもう一つ二つ、大きくしていこうとしている印象を受けた。去年、おととしは低めのフェードを多用して難しいコースを攻め切っていた。マネジメントのベースは変わっていないと思うけど、それに加えて飛距離を伸ばしていきたい意欲を感じた。きっと、その先に見ているものがあるんだと思う」
やはり練習ラウンドを一緒に回った石川遼の推察を伝え聞き、中島もうなずいた。「スコアを出すことだけ考えたら、低いフェードが安全ですし、好きです。でも(見ているのは)今じゃない。もっともっと先を見据えたら、それ(だけ)をやる意味はない」
今週は5年前にプロツアーで初めて予選通過を果たした大会。「5年前はラフに入れたら、グリーンを狙うのが大変だった。きのう今日と回って、ラフに入れてもチャンスがあるな、と。ドライバーで行ってもいいかなと思った」。成長も実感し、1Wを多用するトライが引き続きの基本方針となる。
コースチェックを終え、ナショナルチームのガレス・ジョーンズ・コーチと連絡を取り合った。アウト3番、インの14番、17番といった左ドッグレッグのホールではコースなりのドローボールを打っていくのが定石。「持ち球(フェード)と逆のボールを無理に打って、悪いイメージをつけるのは良くない。スイングが壊れないように、(自分の状態などを踏まえて)もし危険だと思ったらレイアップしたい」とプランをアップデートした。
「自分のやるべきことは、今週もしっかりアジアアマに向けてドライバーを振って挑戦していくこと。自分と向き合えればいい」。21歳の目線は、驚くほどブレない。(愛知県みよし市/亀山泰宏)