2019年 マスターズ

フロム・センダイ(後編) 僕らは“松山英樹2世”じゃない

2018/12/26 19:00

体も車もデカい

パッティング、チッピング用の広大なグリーン。東北福祉大ゴルフ部の強みのひとつだ

すでにPGAツアーのトッププロであり、体もデカい。緊張の連続のまま対面した先輩の人柄は「テレビで観ていた時は静かな方なのかなと思っていたんですけど、実際に会ってみるとすごくしゃべりかけてくれる。後輩の面倒見がいいんです」と抱いていたイメージと少し違った。「松山さんは気づいたら大学に帰っている。僕が入学してすぐにゴルフ部のトレーニングルームにいたら、来られた時がありました。『やたらデカい車(レクサス)が止まったなあ』と思ったら…(笑)。みんな(在校生は)そんなにデカいのに乗ってないんですよ」

一度は志した10代でのプロ転向の道は閉ざされたが、いまはそれを悲観していない。「プロ転向? 卒業してからですね。まだやるべきことがある」と言った。「いつも試合をこなしていると『時間がないなあ』と思うんです。プロになったら、集中して練習する時間がなかなか取れない。例えば(ツアーを転戦すると)自分の拠点ではない練習場やトレーニング場所に行かなくてはいけないから、しんどいなあと思います。自分のベースになるものをあと2年で作っておきたいと思うんです」。厳しい世界に飛び込んだ時に崩れることのない強固な下地を作るべき場所がいま、金谷にとっては仙台だ。

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「もうライバルだ」

金谷拓実は現在、東北福祉大の2年生。高校を卒業して初めて一人暮らしを始めた

日本人アマチュアとして松山以来のメジャー出場を果たす。「マスターズ」はもちろん夢舞台。小学校1年生の春、タイガー・ウッズが最終日16番(パー3)で見せた奇跡のチップインバーディが頭に残っている。「リアルタイムでテレビで観ていたと思います。(ナイキの)CMじゃないですよ」と笑う。「あと印象に残っているのはシャール・シュワルツェル(南アフリカ)が最後の4連続バーディで勝ったとき(2011年)。結構渋いんですけど…」。その年、一緒に表彰式に出ていたのは松山なのだが。

正直言って、最近は周辺がなんだか騒がしい。ただそれも、クールに受け止められている。「高校2年の時に日本アマを獲ったり、日本オープンでローアマになったりして、今まで以上に多くの人が見てくれたり、いろんな取材を受けることが増えて、ゴルフがすごく窮屈になった感じがありました。今はその状況に似ているけど、前(の経験)で慣れているなという感じです」。外野の期待が高まるのは分かっていても、オーガスタも、「全英オープン」が行われるロイヤルポートラッシュでのプレーも長く見れば通過点。「そこ(メジャー)で何かが変わると思うけれど、(キャリアが)右肩上がりでいるときの間にあるマスターズだといいなと思う」

ただひとつ、苦笑いしてしまう周囲の反応がある。巷で踊る「松山2世」という表現だ。

「2世ではないと思うんです、誰でも。松山さんがスゴイのはもちろん知っている。でも、僕は(松山と)そんなに世代が離れていないから『早くライバルになりたいな』って思う。“2世”だと、こう…そばにくっついて、後ろを歩いていくみたいじゃないですか。“いっこ下”のところを、くっついていくだけ…。“イチロー2世”も、イチロー選手の横には立てないじゃないですか。2世(のイメージ)ってそういうのがあるかなって」

受け取り方によっては鼻持ちならない発言のようでもあるが、伝え聞いた松山は「オレは何とも思わないですよ」とうなずき、続けた。「アジアアマを勝った時点で、(金谷は)もうライバルだと思っている」

松山、金谷は1月10日(木)開幕の米ツアー「ソニーオープンinハワイ」(ワイアラエCC)で2019年の初戦を迎える。(編集部・桂川洋一)

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■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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