国内→海外→国内“メジャー3連戦”の是非
ノースカロライナ州のパインハーストNo.2で開催されている今季の海外メジャー第2戦「全米オープン」。出場した4人の日本勢は米ツアーを主戦場とする松山英樹、そして日本地区最終予選を通過した46歳の谷口徹が決勝ラウンドに進んだ。一方で矢野東、宮里聖志はワースト1、2の155位、156位で予選落ち。世界の高い壁を再び味わう結果となった。
無惨な結果に終わった2人は、言い訳などしない。しかし今年は大会開幕前から、いや、予選が行われる以前から、そのスケジュールが強く懸念されていた。
日本男子ツアーは前週「日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯」が行われ、次週には「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」が開催される。どちらも日本タイトルを争う国内メジャー戦。つまり、日本ツアーを主戦場とする選手にとっては「全米オープン」に出場すると、“メジャー”3連戦を強いられることになっていた。
今週月曜日に米国入りした谷口は「日本の時間は言わんといてくれ。考えたら眠くなってしまう」と時差ボケを忘れようと必死だった。日本の試合会場では打ち込みに練習時間の多く費やさず、感覚を重視する宮里聖志は開幕前日、「ハーフで止めておこうと思ったのに、1ラウンド回ってしまった…」。その後もショートゲームを数時間にわたる確認作業に精を出した。
また、キム・ヒョンソン(韓国)は、4月の日本ツアー国内開幕戦から3戦連続出場、その後韓国で3戦連続出場。さらに米国で「ザ・メモリアルトーナメント」参戦を経て、この“メジャー3連戦”に臨んでいる。日韓米をまたいで10連戦。その間に1日36ホールの「全米オープン予選」を通過したことも忘れてはならない。前週の「日本プロ--」では2日目についに背筋痛を訴えて棄権した。
晴れの海外メジャー、そして国内のメジャートーナメント。今年の試合日程は、世界で結果を残したいと思うプロにとっては、決して望ましいとはいえない。
「日本は日本。海外での試合は別物」と、各ツアーをパラレルに割り切って考えるのであれば、それもいいだろう。しかし、現在の国内男子ツアーにそういった動きはない。今季から複数年シードを持つ選手に対し、5試合の出場義務を負わせた。松山英樹、石川遼の集客力、海外で輝かしい成績を挙げた選手の人気に頼った規定変更であることは明らか。海を渡る“接点”をもとにした環境づくりを継続し、ツアー再興の糸口としている。
「全米オープン」を挟んだ前後の2大会には仮にも“国内メジャー”の冠が付いている。良いコンディションでプレーさせるのは、選手はもとより、ファンのためでもある。日程は、トーナメントを評価する上での重要な価値のはずだ。(ノースカロライナ州パインハースト/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw